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Metaが考えるメタバースとは? Facebook Japan代表取締役・味澤将宏氏が単独講演【CEATEC 2022】
日本にもたらす経済効果は約12兆円以上に。展示ブースではVR会議室「Horizon Workrooms」を体験
2022年10月20日 15:59
次世代のソーシャル・エンターテインメント体験とビジネス領域をもたらすものとして、近年大きく注目されているバーチャル上の仮想空間「メタバース」。その構築と実現に向けたテクノロジーの進化を掲げて世界のVR(仮想現実)/AR(拡張現実)業界を牽引しているリーディングカンパニーが米Meta(旧:Facebook)だ。
同社の日本法人であるFacebook Japan(株)は、10月18日より千葉県・幕張メッセにて開催中の最新技術の展示会「CEATEC 2022」において、メタバースをテーマにしたカンファレンス「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」を主催。同会場内の展示ブースでは、代表製品であるVRヘッドセット「Meta Quest 2」を使用したバーチャル会議室アプリ「Horizon Workrooms」の体験コーナーなどを設置し、ゲーム・エンタメ色の強いVR製品が、仕事・ビジネス以上の価値を提案できる可能性を有することを積極的にアピールした。
また、カンファレンス初日のオープニングプレゼンテーションでは、Facebook Japan代表取締役の味澤将宏氏が登壇。「メタバースの構築に向けて」と題した講演を行ない、日本時間10月12日に開催された開発者向け年次カンファレンス「Meta Connect 2022」で発表された内容を踏まえつつ、Metaによるメタバース構築に向けた全体ビジョンとその取り組みを明らかにした。
本稿では、味澤将宏氏による講演内容のレポートを、展示ブースの模様と合わせてお届けする。今年9月に開催された「東京ゲームショウ2022(TGS2022)」に続いて、再び幕張メッセの地でVRヘッドセットの「体験」を積極的に呼び掛けるMeta。「TGS2022」ではVRゲームコンテンツのみに焦点が当てられたが、今回の「CEATEC 2022」では同社が見据える「メタバース」について触れられている点に注目だ。
Metaが考えるメタバースとは「ソーシャルテクノロジーの次なる進化」
「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」は、メタバースに関連するプロダクト・サービスの展示や有識者を招いたカンファレンスを開催するイベント。今年7月にメディア・一部関係者を対象としたクローズドの形で実施されたもので、今回の「CEATEC 2022」では一般の来場者も参加できる形として、さまざまなコンテンツが展開されている。
同イベントの開会に先立って、講演「メタバースの構築に向けて」を行なったMeta日本法人代表の、Facebook Japan代表取締役・味澤将宏氏は、講演の冒頭挨拶で「CEATEC」のオープンな場で、『一般の来場者を含めた多くの方々に「メタバース」の未来を話し合う、そして体験していただける機会を提供できたことを非常にうれしく思う』と語った。
味澤氏が語ったことは「Metaがメタバース構築に向けてどのようなビジョンで、どのような取り組みを行なっているか」について。昨年2021年10月にコーポレートブランドを「Facebook」から「Meta」に変更したことを機に、新たなビジョンとして「メタバースの構築に寄与していくこと」、「メタバースの実現に向けて邁進していくこと」を基本として掲げた。ただこれに関して、コミュニティづくりを応援し、人と人とがより身近になる世界を実現する、という同社のミッションの根幹部分に変わりはないという。
現状、メタバースという言葉にはさまざまな定義があるが、このミッションをベースに、Metaが考えるメタバースとは「ソーシャルテクノロジーの次なる進化」であると考えているという。それはメタバースによって、物理的な距離が離れていても大切な人とつながれる、またコミュニティに参加できるなど、物理的な距離に左右されないあり方とのこと。
Metaが考えるメタバースの特徴として、味澤氏は下記の3点を挙げる。
- 没入感(Immersiveness)
- 実際にその場にいるかのような感覚(Presense)
- 相互運用性(Interoperability)
1つ目の「没入感」とは、現在主流となっているモバイルインターネットの世界では非常に小さな2Dのスクリーン上の世界だったのに対し、メタバースにおいては3Dで臨場感のある世界であることを特徴とする。2つ目の「プレゼンス」とは、まさに物理的な距離が離れていても同じ空間を共有しているという感覚のこと。
そして3つ目の「相互運用性」も非常に大きなメタバースの特徴であると強調する。いまのインターネットというのはアプリケーションに閉じられた世界であるが、メタバースにおいて同社が実現したいのは、例えばアバターであってもアプリケーションを跨いで移動ができる、またデジタルグッズも持っていくことができる、そしてバーチャルとリアルな世界が行き来できる、そういったアプリケーションを跨いだ相互運用可能な世界だという。
Metaにとって日本は最も重要なマーケットの1つ ~2035年までの経済効果は12兆円以上を試算
味澤氏は、Metaが考えるメタバースにおけるソーシャル体験において、現在はゲーム・エンターテインメント・フィットネスの分野が実現されているが、今後は仕事・教育・医療福祉といった生活に密着したものに用途が増えていくだろうと述べた。またメタバースにおけるコマースも飛躍的に伸びていくと考えているという。
また、メタバースにおける経済へのインパクトも非常に大きいものであると強調した。サードパーティのデータを引用する形で、メタバースが2031年までにアジア太平洋地域にもたらす経済効果は1兆ドルを試算。また、2035年までに日本にもたらす経済効果は日本円で約12兆~24兆円であると試算されている新規データを披露した。味澤氏は、メタバースによって新しい大きな経済圏ができる可能性が非常に高いと期待感を露わにした。
そうした中で、メタバース構築におけるMetaの役割とは何かについては、その実現に必要なハードウェア・ソフトウェアと基幹となるテクノロジーを開発し、そしてサポートをしていくことが役割だと語った。
特にハードウェアにおいては、VR市場を牽引しているVRヘッドセット「Meta Quest 2」を提供し、こちらは日本でも好調に売り上げを伸ばしている。またグローバルでもVRコンテンツ販売プラットフォーム「Meta Questストア」におけるゲーム・アプリの売り上げがすでに15億ドルを超えている。
そして味澤氏は「Quest」のビジネスにおいて、日本は最も重要な市場の1つだと強調する。これには2つの意味があるとして、1つはアクティブに使っているユーザーが多いこと、もう1つはゲーム・エンターテインメントの開発者にIPホルダーが多いことだという。「Quest」上でも日本発のさまざまなタイトル・コンテンツがすでに展開されていることをアピールした。
「Meta Quest Pro」はハイエンドラインの最初の機種 ~「Meta Connect 2022」について
日本時間10月12日に開催された開発者会議「Meta Connect 2022」では、同社の新しいプロダクトとサービスの発表が行なわれた。
その中の大きなトピックスとして新型VRヘッドセット「Meta Quest Pro」の発売を発表したことがあった。「Meta Quest Pro」は「Quest 2」の後継機ではなく、ハイエンドラインの最初の機種となる。特徴としてはフルカラーのMR(複合現実)を実現したこと、ヘッドセット内にセンサーを搭載することで表情を読み取ったり、高度なアイトラッキングが可能になるなどがある。早くも実機を試してみたという味澤氏によると、パンケーキレンズを採用したことで「Meta Quest Pro」は薄く付け心地の良いデザインになっているとアピールしていた。
「Horizon」シリーズのアプリはメタバースにおけるソーシャル体験を可能にする
また、Meta提供のソフトウェアについても触れられた。目標として掲げる「ソーシャルテクノロジーの次なる進化」ということで、同社ではメタバースにおけるソーシャル体験を可能にするソフトウェアを「Horizon」シリーズと称して提供している。
今年6月から日本でローンチされた「Horizon Home」によって、VR空間の中でプライベート空間を持つことが可能に。また昨年8月にローンチされた「Horizon Workrooms」はVR空間の中でミーティングを行なうことができるもので、味澤氏自身も海外関係者とのやり取りやメディアとのインタビューに利用しているとのこと。日本未ローンチである注目のメタバースプラットフォーム「Horizon Worlds」は順次新しいマーケットで展開予定だと紹介した。
また先日の「Meta Connect 2022」では、「Horizon Workrooms」の大型アップデートも発表された。特徴としては、アバターの表情がより豊かになって深いコミュニケーションが可能になったこと。そしてブレイクアウトグループを作成できるようになった上、パススルー機能を活用してパーソナルオフィス空間に複数のモニターを表示して生産性を上げる機能が追加されている。
そして「Meta Connect 2022」でのもう1つの大きな発表として、新しい働き方を促進するための他社とのパートナーシップを発表。1つ目がMicrosoftとの連携強化で、「Meta Quest Pro」と「Meta Quest 2」の中で「Windows 365」や「Microsoft Teams」が利用可能になる。また「Horizon Workrooms」から「Teams」のミーティングに直接参加できるようになる。
パートナーシップはほかにもZoomとの連携をアピール。これにより「Zoom」から「Horizon Workrooms」のミーティングに参加可能となる。また、すでに60,000台の「Quest 2」を導入しているAccenture(アクセンチュア)との連携で、今後は企業のVR導入支援を一緒に進めていくことを紹介した。
また味澤氏は、すでに発表している下記の「責任あるメタバースの構築への4原則」を改めて披露した。
- 経済的機会
- プライバシー
- 安全性と公正性
- 公平性と包括性
これらは具体的に、メタバースにおいてもオープンで競争のある経済をつくっていくこと、メタバース利用者がデータをどのように使われているかを透明性をもってアクセスできる、またデータをどのように使ったかをコントロールすることができること、VR空間にセーフゾーンを設けるなど安心安全に使用するための原則をつくること、基幹テクノロジーをオープンにして誰でもアクセスできる形で提供していくことを意味しており、リーディングカンパニーとしての役割を自負するMetaならではの視点といえる。
味澤氏は最後に、上記の4原則を踏まえた上で日本における独自の取り組みを紹介した。次世代のXRクリエイターを日本から育成していくことが重要だとして、教育プログラム「Immersive Learning Academy」を日本で展開。パートナーとして学校法人 角川ドワンゴ学園と連携し、ARやVRに関する教育プログラムを推進していくとした。
また、今回の「METAVERSE EXPO JAPAN」も日本独自の取り組みとなるイベント。産・官・学で、健全かつオープンなメタバースをつくっていくためのディスカッションをするきっかけの場を提供することで、メタバースは1社でつくるものではなく「共創」していくものであることを強くアピールした。
VRヘッドセットをどうビジネスで使う?「Horizon Workrooms」を体験
「CEATEC 2022」会場内のパートナーズパークエリアには「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」の大型ブースが設置されており、その展示ブースの1つとしてMetaも出展している。
Metaブースでは「Meta Quest 2」を使用したバーチャル会議室「Horizon Workrooms」の体験コーナーを目玉としていた。ただ「メタバース=VR」という図式になりがちではあるが、AR(拡張現実)技術も同じくメタバース構築に向けて基盤となるものとして、InstagramのARエフェクトを体験できるコーナーも用意していた。
コロナ禍の影響でオンライン会議が主流になりつつも、まだまだVR空間上でのミーティングには馴染みのない印象が強い。その一方で「Meta Connect 2022」にてMetaとMicrosoftとのパートナーシップが発表されたことで、VRヘッドセットを仕事でどのように使うのかについて関心が高まっているようにも思える。
今回の「Horizon Workrooms」の体験は、座席の移動やルームテーマの変更、ホワイトボードへの書き込みやハンドトラッキングといったほんのさわりの部分であったが、誰かと一緒に作業している感覚を味わえたのが特に印象的だった。連日のテレワークによる対面でのコミュニケーション不足(オキシトシン不足)も解消できるかもしれない。ただ一番気になるところである、VRで生産性が向上するのかの疑問については解消されなかった。
「VRは体験しないとその魅力が伝わらない」という大きな課題に対し、誰でも来れる場でブースを展開することは大きな意味がある。担当者によると、明日明後日にメタバースの構築・普及が完了するとは思っておらず、10年以上のスパンの長いものとして投資と告知を行なっていきたいという。ラップトップにかわる新たな働き方として提示するとした「Meta Quest Pro」を、果たしてどのような体験の場を用意してアピールするのか、ビジネスユーザーにどのようにしてその魅力を理解してもらうのか。今後の展開にも期待したいところだ。
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