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最後に愛は勝つ! 第1回AIアートグランプリの最終審査会・授賞式が開催

AIが愛とアートに与えた未来の可能性を感じさせる作品が揃う

第1回「AIアートグランプリ」の最終審査会が行なわれた

 AIアートグランプリ実行委員会は3月12日、AIを活用して作られた画像、漫画、動画、音楽、ゲームといったアート作品のコンテスト第1回「AIアートグランプリ」の最終審査会を開催した。

 AIアートグランプリは作画AIや作曲AIなど、人間の芸術的想像力を高めるAIの進歩を受け、来るべき時代に人間とAIが共生し、人間がより自らの能力を拡張するためにAIを活用したアート作品を広く募集し、厳正な審査の上表彰するというイベントだ。

 1月15日より応募受付を開始し、1月31日に締め切られた。この期間に応募された作品の総数は279件で、最終審査作品として5作品が残った。

 AIアートグランプリ審査員長の河口洋一郎氏は会に先立ち、「一部の評論家は『シンギュラリティが2030年を待たず、2023年に来るかもしれない』と言っている方が増えています。そのくらい驚異的な変化なのでAIアートグランプリの動きが、日本全体のクリエイトの世界に大きな刺激を与えるかもしれない」と今回のグランプリへの思いを語った。

 そして最終審査では5分ずつのプレゼンテーションが行なわれた。各作品の概要は以下の通り。

  • 『Artificial Insanity』TRICYCLE FILM
    「Mid Journey」で拡大した複数枚の画像を使い独特な表現を生み出したアニメーション
  • 『渚の妖精ぎばさちゃん対キモノアゲハ』koizoom1
    許諾済みコスプレ写真等オリジナル素材を追加学習させたカスタムモデルを63個作り、そこから生成した『写真』を用いて作った漫画
  • 『Desperado by 妻音源とりちゃん[AI]』松尾P
    亡き妻の声やビジュアルをAIで再現したミュージッククリップ
  • 『そんな話を彁は喰った。』機能美p
    AI2%、残り98%の作業が人力で制作された、AIの作る恐怖をメタ的に描いた映像作品
  • 『夢遊音速(ドリームマッハ)』朱雀
    多様なジャンルのハイクオリティな画像が出力できるAIの強みを活かしたSFマンガ

[お詫びと訂正] 初出では、『渚の妖精ぎばさちゃん対キモノアゲハ』の概要が誤っておりました。お詫びして訂正いたします。

 最終審査の結果、グランプリには『Desperado by 妻音源とりちゃん[AI]』が選ばれ、明らかに異質な機能美p氏の『そんな話を彁は喰った。』は急遽設けられた審査員特別賞に選ばれた。

グランプリに選ばれたのは松尾P氏の『Desperado by 妻音源とりちゃん[AI]』
松尾P氏はAIで亡き妻の歌声を再現した作品でグランプリに選ばれた

 受賞理由について審査員の樋口真嗣氏は、「AIという新しい便利な道具が登場し、その使い方を広く募集しました。多くの人が自分の楽さを追求する使い方を提案しましたが、1人だけが独自のアプローチで終わりのないモノを持ってきました。この前代未聞の挑戦がニュースになり、どのような波紋を世の中に起こしていくか興味深いです。そういった波に負けず愛を貫いてもらいたいと思います。」と述べた。

 受賞した松尾P氏は「終わりのない挑戦と言われましたけれど、これまで9年ちょっとこういう活動をやっていて、どう早くやっても1週間、下手すると半年や1年かけても終わらないことがありました。AIを駆使することで曲さえあれば、自分でギターを弾けば妻が一緒に歌ってくれる。そういうことができるようになったのが去年夏から登場した生成系AIです。今後は。妻とやっていた交換日記を学習してもらって、妻との会話が将来的にできるといいなと考えていて、それはそう遠くない未来だと思っています。自分自身も大規模言語モデルに食わせて、僕が死んだあとも物語が作っていければ面白いなと思っています。」と話した。

 最後に審査員長の河口氏は「AIアートの方向性が混沌としているが、未来の可能性があると感じました。個人としてはすぐに第2回をやりたいという気持ちです」と興奮気味に語り、会を締めくくった。

審査員と受賞者の写真
第一回AIアートグランプリ AI Art GrandPrix