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Windowsの生成AI「Copilot」は日常生活をどう変える? 「ChatGPT」との違いは?
日本マイクロソフトがコンシューマー向けメディアブリーフィングを開催
2023年11月22日 14:33
2023年11月21日、日本マイクロソフト(株)が、「コンシューマー向けCopilotおよびCopilot in Windows メディアブリーフィング」と題した記者説明会を行なった。これまでの日本マイクロソフトのAIに関する説明会は、企業向けの製品を対象にしたもので、一般のコンシューマー向けの説明会は、今回が初めてとなる。
パソコン上でやること全てにAIが貢献していく
説明会ではまず、日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 コンシューマー事業本部長兼アジアゲームマーケティングリードの竹内洋平氏が、『コロナが明けて、色々なパートナー様やお客様とお話しする機会が増えたが、皆さん一様にパソコンの必要性が上がってきたと言っていただいている。これは、コロナ期間中、会社や学校に行けないときに家庭でパソコンと接する時間が増え、それが今でもしっかり根付いている証拠だと思っています。本日紹介するAI機能によって、その役割がさらに増してくると確信しております。』と挨拶した。
続いて、竹内氏はマイクロソフトのAIへの取り組みについて説明を行った。その要旨は以下の通りだ。
色々なイベントでCEOのサティアがコメントしているように、まさに今AIの黄金時代が到来していると思っています。私はマイクロソフトに18年いるが、本当にこの1、2カ月のテクノロジーの進化のスピードは非常に速い。今後、この進化が我々の把握している仕事を再定義しようとしており、私たちも社内で「Copilot」を使い始めているが、日々それを実感しています。「ChatGPT」という名前が出てきてからまだ1年しか経っていないというところに本当に驚きを感じます。
OpenAIとのパートナーシップや「Bing Chat」、我々マイクロソフト製品に「Copilot」を採用するということを発表させていただき、開発者の皆さんのワークフローの中にAIのエクスペリエンスを導入することも発表させていただいた。そして、先日行われた「Microsoft Ignite 2023」で、私たちはCopilotカンパニーであると宣言しました。これは皆さんがパソコン上でやること全てに「Copilot」が貢献していくという意思表示です。
それに伴い、「Bing Chat」と「Bing Chat Enterprise」の名称を「Copilot」に変更、製品に搭載される生成AIを「Copilot in 製品名」、サービスやソリューションなどに取り入れている生成AIのことを「Copilot for 製品名」にします。例えば、Windowsなら「Copilot in Windows」、「Microsoft 365」なら「Copilot for Microsoft 365」とすることを発表しました。今、プレビュー提供している「Copilot」と「Copilot in Windows」は、12月1日に正式リリースを開始する予定です。
「Copilot」は検索を超えた検索
続いて、マイクロソフト ディベロップメント株式会社 WebXT 開発統括部 プロダクト マネージャーの篠塚祐紀子氏が、「Copilot」の特徴について解説した。その要旨は以下の通りだ。
「Copilot」は、12月1日にGA、General Availabilityになるので、是非使ってみてください。「Copilot」と従来の検索と何が違うかというと、4つの特徴が挙げられます。
1つ目が「わかりやすい要約」です。従来の検索ではキーワードベースで入力すると、ブルーリンクで色々情報が出てきて、自分の欲しい内容を1つ1つクリックして内容を読む必要がありましたが、「Copilot」では1つの内容にまとめられ、内容が要約されて表示されます。その内容が合っているか、間違っているかということはソースリンクをクリックすることで、ソースに飛べます。
2つ目は「チャット形式」です。今までは探す言葉、目的が明確なものについてはキーワードベースで簡単に探せましたが、目的が不明瞭なものは探しにくかった。「Copilot」なら、誰かに質問するように、例えば『冬休みに子どもを連れていける雪遊びスポットはどこですか?』のようにチャット形式で検索できます。
3つ目は、従来と大きく違うポイントですが、「画像作成」ができる。自分が表現したい内容を言葉にして、そのまま「Copilot」に入れることで、画像が出てくる。もちろん、出てきた画像が少し違うと思ったら、そのままその要望を入れることで、自分の求めた画像が出てきます。
4つ目は「創作作業」です。何か新たに作り出さないといけないという時に、従来の検索なら、例えば「メール テンプレート 挨拶文」などで検索し、でてきたテンプレートを自分でカスタマイズする必要がありましたが、「Copilot」を使えば、自分にパーソナライズされたドラフトが瞬時に生成されます。
だから、「Copilot」は従来の検索の進化形というより、検索を超えた検索だと思っていただくのが良いと思います。OpenAIとマイクロソフトはパートナーシップ関係にあり、主にOpenAIの3つの技術で提携を行なっています。1つ目は、GPTシリーズの最新版である「GPT-4」。これはテキストを理解・生成するAIです。2つ目は「Codex」。これはプログラムコードを理解・生成するAIです。3つ目が、テキスト入力から画像を生成する「DALL-E」。これは最新の「DALL-E3」が利用されています。
「Copilot」と「ChatGPT」は何が違うのかとよく質問されますが、実は全然違うものです。「Copilot」は、URLを集めてインデックスして、信頼性の高い情報、そしてフレッシュな内容を出してくる「Bing」の検索アルゴリズムとOpenAIの言語モデル「GPT-4」を統合したもので、マイクロソフトの独自技術です。そして、マイクロソフトの責任あるAIの原則に則って、開発・提供しているので、安心して利用できます。
「Copilot」はWindowsのどこからでも利用可能
「Copilot」は、今まで「Bing Chat」と呼ばれていたものと同じく、Bing.comや「Bing」モバイルアプリから利用できるだけでなく、Windowsでは、Edgeサイドバー、「Copilot in Windows」、Windowsの検索ボックスから利用できる。Edgeサイドバーでは、「Edge」の一番右上に「Copilot」のアイコンがあり、「Copilot in Windows」では検索の右のところに、またタスクバーの検索ボックスからもそのまま利用可能。
また、「Edge」以外のWebブラウザーでは、「Google Chrome」はすでに「Copilot」の利用が可能。「Safari」にも今後対応する予定となっている。
「Copilot」の3つの活用デモ
続いて、篠塚氏は、「Copilot」の活用デモを行なった。最初に、プライベートで活用するデモが行なわれた。その流れは次の通りだ。
例えば、マラソン好きの同好会があって、『この前のマラソン大会は楽しかった。今後、海外のマラソンに挑戦したいので何かあればお誘いください』というメールが来たとします。今度ホノルルマラソンに参加するならそれはいつだろうと、「Copilot in Windows」のペインに、『今度のホノルルマラソンに参加するんだけど、いつ開催だったっけ?』と入力すると、最新情報の2023年のホノルルマラソンがいつかということを出してくれる。続けて、『ホノルルマラソンを完走するにはどうしたらいい?』と入力すると、完走するにはどういうペースで走ればいいかというサジェスチョンを受けとることができます。
さらに、自分の電源プラグの写真をドラッグ&ドロップして、この電源プラグがアメリカで使えるかを聞いてみます。これはいわゆるマルチモーダル検索というもので、画像を認識して使えるかどうかを答えてくれます。もちろん、こうした「Copilot」の利用はBing.comでも可能であり、例えばホノルルマラソンで1日使うから、残りの3日は観光したいのでそのスケジュールをとりまとめて表形式でまとめて欲しいと入力すれば、表形式で結果が出てきてExcelなどへのエクスポートも可能です。
次に、仕事や壁打ちに活用するデモが行なわれた。その流れは以下の通りだ。
まず、『副職してみたいけど何が自分にあっているかわからない。どうしたらいい?』とざっくばらんな質問を「Copilot」にしてみます。アイデアを膨らませたいので、より創造的な回答が出てくるモードにチェンジしたところ、『副業をはじめたいと言うことは素晴らしい。副業にはこういう選び方がある。例えば、割ける時間から選んだり、得意なことから選んだり、稼ぎたい金額から選ぶという方法がある』と答えてくれました。
例えば、ビールの醸造をやりたいとか、クラフトビールを作ってみたいと入力すれば、そのために必要なことを教えてくれます。そして、ビールのラベルのデザイン案を作って、デザイナーに提出したいのなら、「Copilot」に内容を伝えることで、デザイン案を作ってもらえる。例えば、故郷の新潟の田舎の風景をビールのラベルにしたいと伝えれば、いくつかのデザイン案が表示されます。
最後に、語学学習に活用するデモが行なわれた。その流れは以下の通りだ。
「Edge」ブラウザーで、英語のWebサイトを開き、その内容を日本語で要約させることももちろんできます。また、PDFを「Edge」で開いて、この記事から『「TOEIC」730点レベルの単語を抽出して単語帳を作って』と入力すれば、単語帳を作ってくれて例文も出てくる。趣味で語学学習をしようとすると、どこから始めればいいかわからないことがありますが、「Copilot」を活用すれば気軽に始めることができます。
篠塚氏は、『お仕事でもプライベートでも色々活用できるので、是非「Copilot」を活用していただければと思います』と解説を締めくくった。
Windowsに統合された「Copilot」「Windows in Copilot」の利用方法
続いて、日本マイクロソフト株式会社 モダンワークビジネス本部 GTMマネージャー 春日井良隆氏が、「Copilot in Windows」について解説を行った。その要旨は以下の通りだ。
「Windows in Copilot」は、Windows 11の22H2と23H2で提供が始まっているほか、Windows 10でも、「Copilot」のプレビュー版が提供されることが発表されました。WindowsというOSの中に、「Copilot」が入ることで可能になることの1つとして、OSの設定との連携が挙げられます。例えば、「壁紙を変えたい」と「Copilot」に入力すると、自動的に個人設定の背景を変更する画面になり、選ぶだけで壁紙が変わります。また、音声でもプロンプトを入力できます。従来は、文字入力と画像入力、音声入力の3つの入力方法をサポートしていましたが、最近のアップデートで、ペンが使えるデバイスなら、ペンによる手書きで書き込むことでも「Copilot」に問いかけることができるようになりました。例えば、複雑な数式なども手書きで入力できます。
また、自然言語だからこそ実現できるメリットとして、『コンパネを開いて』のような省略した言い方でもしっかり認識してくれることもポイントです。アプリケーションとの連動も特徴の1つで、『気分が落ち着く音楽をかけて』のように「Copilot」に入力すれば、「Spotify」アプリを開いてくれ、そこから音楽を再生できます。さらに、トラブルシューティングとも連動しており、例えば音楽が再生されないという問題があったら、それを伝えることで、オーディオに関するトラブルシューティングを開いて、問題を解決してくれます。
このように「Copilot in Windows」は、WindowsというOSの中で使えるAIアシストなので、是非とも使っていただきたい。
標準アプリにもAI機能が多数搭載
また、Windows 11 23H2では、標準アプリもAI機能が多数搭載され強化されている。春日井氏は、「フォト」「ペイント」「Snipping Tool」「Clipchamp」の4つのアプリを例に挙げ、デモを行なった。その要旨は以下の通りだ。
「フォト」では、AIによって被写体と背景を自動的に識別し、背景だけをぼかせるようになりました。「ペイント」では、自動で背景から画像を切り抜くことができるようになっただけでなく、レイヤー機能も搭載されたため、切り抜いた画像の下に背景色や背景の絵を重ねることも可能です。
また、画面キャプチャツール「Snipping Tool」には、画像に写っている文字をテキストとして識別する機能が追加されています(いわゆるOCR的な機能)。さらに、動画編集ツール「Clipchamp」もAIで強化され、素材から動画をAIが作ってくれるようになりました。タイトルを決めて写真などの素材を選んで、動画の雰囲気を選び、音楽を選ぶだけで指定した長さの動画が生成され、そのままYouTubeなどにアップロードすることも可能です。生成された動画のタイムラインを自分でさらに編集することもできるので、自分のセンスも活かすことができます。
従来こうしたAI機能は、単体のプロ向けツールに搭載されていることが多かったが、Windows 11なら、こうした便利なAI機能も標準アプリに搭載されているのだ。