Blender ウォッチング

「3Dキャラに微妙な表情をさせてみたい!」を手軽に実現、Blenderの新「ポーズライブラリ」を使ってみる

ドラッグで繊細に調節可能

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

 今回は「Blender 3.0」で新しくなった「ポーズライブラリ」をご紹介してみたいと思います。

 従来もポーズライブラリはありましたが、Blender 3.0では同時に公開された「アセットブラウザー」との連携でUIが一新され、ポーズの適用やポーズ同士のブレンドがしやすくなりました。

ポーズライブラリ使用例

ポーズライブラリのデモファイルの入手

 「ポーズライブラリ」とは、文字通り、ポーズをライブラリとして管理・利用できるシステムです。公式サイトから、このポーズライブラリのデモファイル(「Ellie Pose Library」)が入手できます。

「Ellie Pose Library」(Blender Studio作)

 もしくは、下記のサンプルファイルをご利用ください。こちらは上記のデモファイルの表示の一部をワイヤーフレームに置き換え、最初のシェーダーコンパイル(後述)が起きないようにした物です。

サンプルZIPファイルのダウンロード

第一の罠:警告ダイアログ

 このデモファイルは上級者向けを意識しているのか、初心者には少しとっつきにくい物になっています。ここではそんな「罠」を回避し、機能の紹介を行っていこうと思います。

 早速このデモファイルを開いてみた方もいると思いますが、いきなり、下図のようなダイアログが表示されて驚いた方もいると思います。

Pythonスクリプト自動実行の警告ダイアログ

 このダイアログは、.blendファイル内に、開いた時に自動実行するスクリプトがあった時に表示されます。

 本来は出自が不明な怪しいファイルに対する警告ですが、このファイルは公式の物ですので、[実行可能にする]をクリックしてください。

第二の罠:シェーダーコンパイル

 ファイルが再読み込みされ、早速操作しよう……としたら、今度はBlenderの動作が非常に重く、環境によってはしばらくフリーズしてしまいます。

この画面で止まる

 これはBlenderが「シェーダーコンパイル」という、画面表示用の準備作業を行っているためです。PCでゲームをプレイしている方はご存じかもしれません。

 画面一番下のプログレスバーに、その進捗状況が表示されます。環境によっては数分かかることがありますが、対象ファイルの初回読み込み時のみですので、お茶でも飲んでしばらくお待ちください。

シェーダーコンパイル中のプログレスバー。また、右下のプレビューにも進捗状況によって色が追加される

 もしフリーズしたままでずっと何もできない場合は、上記の「サンプルZIPファイル」の方をダウンロードしてご利用ください。

「ポーズライブラリ」を体験しよう

 無事シェーダーコンパイルが終わったら、早速「ポーズライブラリ」を触ってみましょう。

 左の[3Dビューポート]の左側にはキャラクターが、右側には「ポーズライブラリ」が表示されています。右上には簡単な操作方法が英文で書かれていますのでその通りしましょう。おしまい……だとこの記事の意味がなくなるので解説していきます。

 まず上の方のキャラクターの表情のサムネイルを左クリックしてみましょう。キャラクターがその表情に変わるはずです。

キャラクターの表情のサムネイルをクリック

 次に他のサムネイル上を「左から右に」ゆっくりドラッグしてみてください。現在の表情が徐々にそのサムネイルの表情へ変化していきます。

他のサムネイルを左→右にドラッグすると表情が徐々に変化

 そして今度は体全体が表示されているサムネイルを左クリックしてみましょう。体全体がそのポーズになります。

体全体のポーズ変化

 ここでさっきのキャラクターの表情のサムネイルを再び左クリックしてみると、体がそのポーズのまま、表情だけを変えることができます。

キャラクターの表情のサムネイルをクリックすると、表情のみ変わる

アニメーションを再生してみよう

 このデモファイルにはポーズだけではなく、アニメーションも含まれています。ついでに再生してみましょう。

 [Space]キーでアニメーションが再生し、もう一度押すと止まります。再生中は画面のアニメーションと同時に、画面右下の[ドープシート](白い囲み部分)の中を、青い線が動きます。

アニメーションを再生

 もし、アニメーション速度が遅い場合は、画面右下の小さい[3Dビューポート]のヘッダー右端の図の地球儀のようなアイコンをクリックし、ワイヤーフレーム表示にしてみてください(隠れて見えない場合は、ヘッダーを左に[ホイールドラッグ]してスクロールさせてみてください)。

 「サンプルZIPファイル」をダウンロードして使用された方は、この手順は最初から行われていますので諦めてください。(汗

地球儀のようなアイコンをクリックしてワイヤーフレームに

 最初に戻るには[ドープシート]の下にある[|<]ボタンをクリックします。ちなみにここにある一連のボタンから「再生」や「逆再生」などもできます。

囲み内の[|<]ボタンで最初に戻る

アニメーションを記録してみる

 さっき再生した時、サムネイルからセットしたポーズは消えていましたが、せっかくですので、ポーズを記録し、アニメーションさせてみます(なおスペースの都合により、ここでは簡易的な説明のみにさせていただきます)。

アクションのリンク解除と新規登録

 「アクション」とは、アニメーションを記録したBlender内のデータ形式です。

 このキャラクターにはすでにアニメーションが記録されたアクションがリンクされているため、いったんこれを解除し、新しい「アクション」を追加します。

  1. ドープシート上部の[×]ボタンをクリックします
  2. リンク中のアクションが解除されますので、新たに表れた[新規]ボタンをクリックします
現存のアクションとのリンクを解除([×])し、新規追加([新規])

「キーフレーム」の記録

 次に「キーフレーム」を記録します。「フレーム」とは時間の単位の一つで、その時の状態を記録したフレームを「キーフレーム」と呼びます。最低二つの「キーフレーム」を記録し、その間の位置や回転などを補間することでアニメーションを行います。

キーフレームと補間の概念

 まず、さっき出てきた「アニメーション操作ボタン」の左側にある、[●]ボタンをクリックし、自動的にアニメーションが記録されるようにします。

[●]ボタンをクリックし、自動的にアニメーションを記録するように

 その上に並んでいる数字が「フレーム番号」、青の線と囲みが示すのが「現在のフレーム」です。

 「現在のフレーム」が「1」であることを確認したら、サムネイルから好きなポーズをクリックし、そのポーズに変更してください。下図のように「現在のフレーム」のところに黄色い「〇」が表示されたら成功です。

現在のフレームが1なのを確認し、好きなポーズをクリック。ここでは「Ellie full relaxed」を選んだ
  1. 「フレーム番号」の「100」(または適当な番号)をクリックします
  2. 別のポーズをサムネイルからクリックします
「フレーム番号」の「100」をクリックし、別のポーズのサムネイルをクリック。ここでは「Ellie full cheerful」を選んだ

 上図のように「現在のフレーム」が「100」の位置になり、下に黄色い「〇」が表示されればOKです。必ず先にフレーム番号をクリックしてからサムネイルをクリックしてださい。

 では先ほどの[●]ボタンをクリックして自動キーフレームを解除し、横の[|<]ボタンで最初のフレームに戻しましょう。

[●]ボタンで自動キーフレームを解除後、[|<]ボタンで最初のフレームに戻す

 [Space]キー(もしくは再生ボタン)で再生してみましょう。

 エリーちゃんがポーズを変化させてアニメーションする様子が見られます。

おすまし状態から全身で喜びを表すエリーちゃん

終わりに

 ポーズライブラリの使用と、アニメーションの作成方法をご紹介しました。ほんの触りですが、アニメーションの楽しさを感じていただければ、と思います。

 ではまた。