Blender ウォッチング
「汚し加工」アドオン「Grungit」を詳細にカスタマイズして作品のリアリティをレベルアップ
半自動で3Dモデルに時を経た重みを追加できるアドオンを徹底活用
2022年6月3日 06:55
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
今回は前回の記事に引き続き、アドオン「Grungit」のシェーダーノードの設定などを解説していきます。
ノードのパラメーターを変更して「汚し」細部をコントロール
前回に解説した通り、「Grungit」の「適用」(Apply)により、オブジェクトのマテリアルには2つの「専用ノード」と、アドオンが作成した、摩耗場所を表した画像を参照する「画像テクスチャノード」が追加されます。さらに[Advanced mode]をチェックして適用すると、パラメーターを増やすことが可能です。
「Grungit」のノードは、最終的に[プリンシプルBSDF]ノードにつながっています。[プリンシプルBSDF]は、「Blender」に標準で搭載されているマテリアル作成の基礎となるノードで、「PBR」(物理ベースレンダリング、多くの3DCGツールで採用されているシェーディングモデル)をもとに複数の階層を1つにまとめて使いやすくしたものです。
[Grungit]ノードのパラメーター
「摩耗」や「ひっかき傷」「亀裂」をコントロールするノードです。
綺麗な部分の材質のコントロール
- [Base Color 1]: 綺麗な部分の材質の色
- [Metallic 1]: 綺麗な部分のメタリックの強度
- [ラフ 1]: 綺麗な部分の粗さ
デフォルトではあまり光沢のない、非金属の材質になっていますが、これらのパラメーターを操作することで他の材質にすることもできます。
スペキュラー(鏡面反射光)成分はリンクされた[プリンシプルBSDF]ノード側で調整できます。
摩耗(Grunge)部分の質感のコントロール
- [Base Color 2]: 摩耗で削れた部分の材質の色
- [Metallic 2]: 摩耗部分のメタリックの強度
- [ラフ 2]: 摩耗部分の粗さ
- [ランダムさ]: 摩耗のランダム模様の形状のコントロール
デフォルトでは金属の質感に設定されていますが、例えば[Metallic 2]を少なくし、[ラフ 2]を増やすことで、コンクリート状の質感にすることも可能です。
摩耗、ひっかき傷、亀裂の各部分の調整
- [Grunge Amount]:「摩耗」の量。下二つも補間し、摩耗部分が広がります。
- [Scratch Amount]: 「ひっかき傷」の量
- [Cracks Amount]: 「亀裂」の量
全体的なコントロール
- [Global Control]: 全体的に摩耗や傷などが占める割合。3Dビューポートのパネル内の[Overall amount]と同じで、適用後もこのパラメーターでコントロールが可能
- [スケール]: 摩耗と亀裂の全体的なスケール。値が小さい方が亀裂が大きくなりますが、摩耗が意図しない場所に現れることがあります。
- [Bump Strength]: 摩耗や傷の凹凸の強さ
Advanced Modeで追加されるパラメーター
- [Secondary Mask]: 全体的な摩耗部分の調整用。明るいと摩耗部分が優勢に、暗いと綺麗な部分が優勢になります。
- [Transition Amount]: 綺麗な部分と摩耗部分の途中の色。下の[Transition Amount]でその割合を決めます
- [Edge Wear Spread]: 摩耗部分が広がる強さ
- [Additional Roughness]: 綺麗な部分と摩耗部分の両方に追加される粗さ
- [Randomness Map Scale]: ランダムパターンのスケール。パターンに変化をつけたい時に使用します。
- [Occlusion]: 増やすと凹んでいる部分が保護されていると見なし、摩耗部分が小さく、綺麗な部分が大きくなります
[Grungit Dirt]ノードのパラメーター
汚れの範囲や強度、パターンをコントロールするノードです。
- [Dirt Base Color]: 汚れの基本カラー
- [Overall Amount]: 全体的な汚れの占める割合
- [コントラスト]: 汚れのコントラスト
- [Dirt Texture Scale]: 汚れのランダムパターンの乗数。1.0未満ではパターンが大きく、1.0以上でパターンが細かくなります
[Advanced mode]で追加されるパラメーター
前回も書きましたが、Advanced modeでは[Grungit Dirt]ノードに多数のパラメーターが追加表示されるため、汚れを細かく調整したい場合はこのオプションによる「適用」が必須になります。
- [Dirt Metallic]、[Dirt Roughness]: 汚れ部分のメタリックと粗さのパラメーター。
- [AO]: 窪み部分の汚れの強さ
- [上]: 上を向く面への汚れの強さ
- [辺数]: 側面の汚れの強さ。ちなみに本来のラベルは「Sides」なのですが、専用の翻訳データがないためこんな訳になっています。
- [Top-down]: 上から下への汚れの範囲と強度
- [Bottom-up]: 下から上への汚れの範囲と強度
- [Dirt Texture]: 汚れのテクスチャの強度
- [Texture Stretching (sides)]: 側面の汚れのテクスチャを縦に伸ばす強度
- [Bump Strength]: 汚れの凹凸の強さ
PBR Bake機能について
「PBR Bake」機能は、「Grungit」を「適用」して設定されたマテリアル(オブジェクト)に、摩耗などの情報をテクスチャ画像として書き出し、上記二つのノードなしで利用可能にします。レンダリングが高速になり、他の「PBR」に対応したアプリケーションで質感が再現できるようになります。
終わりに
少し長くなってしまいましたが、これでこのアドオンが活躍する場面が増えれば幸いです。もしお持ちでない方は買っておいて損はないと思います。いずれまたセールが来ると思われますので、その時まで待つのもいいでしょう。
ではまた。