Blender ウォッチング

「汚し加工」アドオン「Grungit」を詳細にカスタマイズして作品のリアリティをレベルアップ

半自動で3Dモデルに時を経た重みを追加できるアドオンを徹底活用

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

「Grungit」による作例(パイプは「GeoPipe」アドオンを使用

 今回は前回の記事に引き続き、アドオン「Grungit」のシェーダーノードの設定などを解説していきます。

ノードのパラメーターを変更して「汚し」細部をコントロール

 前回に解説した通り、「Grungit」の「適用」(Apply)により、オブジェクトのマテリアルには2つの「専用ノード」と、アドオンが作成した、摩耗場所を表した画像を参照する「画像テクスチャノード」が追加されます。さらに[Advanced mode]をチェックして適用すると、パラメーターを増やすことが可能です。

 「Grungit」のノードは、最終的に[プリンシプルBSDF]ノードにつながっています。[プリンシプルBSDF]は、「Blender」に標準で搭載されているマテリアル作成の基礎となるノードで、「PBR」(物理ベースレンダリング、多くの3DCGツールで採用されているシェーディングモデル)をもとに複数の階層を1つにまとめて使いやすくしたものです。

「Advanced mode」で「適用」した時の追加ノード

[Grungit]ノードのパラメーター

 「摩耗」や「ひっかき傷」「亀裂」をコントロールするノードです。

[Grungit]ノード。名前の後ろにアドオンのバージョン番号が併記されている

綺麗な部分の材質のコントロール

  • [Base Color 1]: 綺麗な部分の材質の色
  • [Metallic 1]: 綺麗な部分のメタリックの強度
  • [ラフ 1]: 綺麗な部分の粗さ

 デフォルトではあまり光沢のない、非金属の材質になっていますが、これらのパラメーターを操作することで他の材質にすることもできます。

 スペキュラー(鏡面反射光)成分はリンクされた[プリンシプルBSDF]ノード側で調整できます。

摩耗(Grunge)部分の質感のコントロール

  • [Base Color 2]: 摩耗で削れた部分の材質の色
  • [Metallic 2]: 摩耗部分のメタリックの強度
  • [ラフ 2]: 摩耗部分の粗さ
  • [ランダムさ]: 摩耗のランダム模様の形状のコントロール

 デフォルトでは金属の質感に設定されていますが、例えば[Metallic 2]を少なくし、[ラフ 2]を増やすことで、コンクリート状の質感にすることも可能です。

綺麗な部分と摩耗部分

摩耗、ひっかき傷、亀裂の各部分の調整

  • [Grunge Amount]:「摩耗」の量。下二つも補間し、摩耗部分が広がります。
  • [Scratch Amount]: 「ひっかき傷」の量
  • [Cracks Amount]: 「亀裂」の量
ひっかき傷と亀裂

全体的なコントロール

  • [Global Control]: 全体的に摩耗や傷などが占める割合。3Dビューポートのパネル内の[Overall amount]と同じで、適用後もこのパラメーターでコントロールが可能
  • [スケール]: 摩耗と亀裂の全体的なスケール。値が小さい方が亀裂が大きくなりますが、摩耗が意図しない場所に現れることがあります。
  • [Bump Strength]: 摩耗や傷の凹凸の強さ
[スケール]値による違い

Advanced Modeで追加されるパラメーター

  • [Secondary Mask]: 全体的な摩耗部分の調整用。明るいと摩耗部分が優勢に、暗いと綺麗な部分が優勢になります。
  • [Transition Amount]: 綺麗な部分と摩耗部分の途中の色。下の[Transition Amount]でその割合を決めます
  • [Edge Wear Spread]: 摩耗部分が広がる強さ
  • [Additional Roughness]: 綺麗な部分と摩耗部分の両方に追加される粗さ
  • [Randomness Map Scale]: ランダムパターンのスケール。パターンに変化をつけたい時に使用します。
  • [Occlusion]: 増やすと凹んでいる部分が保護されていると見なし、摩耗部分が小さく、綺麗な部分が大きくなります
[Occlusion]値による挙動の違い

[Grungit Dirt]ノードのパラメーター

 汚れの範囲や強度、パターンをコントロールするノードです。

[Grungit Dirt]ノード
  • [Dirt Base Color]: 汚れの基本カラー
  • [Overall Amount]: 全体的な汚れの占める割合
  • [コントラスト]: 汚れのコントラスト
  • [Dirt Texture Scale]: 汚れのランダムパターンの乗数。1.0未満ではパターンが大きく、1.0以上でパターンが細かくなります
[Dirt Texture Scale]値による挙動の違い

[Advanced mode]で追加されるパラメーター

 前回も書きましたが、Advanced modeでは[Grungit Dirt]ノードに多数のパラメーターが追加表示されるため、汚れを細かく調整したい場合はこのオプションによる「適用」が必須になります。

  • [Dirt Metallic]、[Dirt Roughness]: 汚れ部分のメタリックと粗さのパラメーター。
  • [AO]: 窪み部分の汚れの強さ
  • [上]: 上を向く面への汚れの強さ
  • [辺数]: 側面の汚れの強さ。ちなみに本来のラベルは「Sides」なのですが、専用の翻訳データがないためこんな訳になっています。
  • [Top-down]: 上から下への汚れの範囲と強度
  • [Bottom-up]: 下から上への汚れの範囲と強度
  • [Dirt Texture]: 汚れのテクスチャの強度
  • [Texture Stretching (sides)]: 側面の汚れのテクスチャを縦に伸ばす強度
  • [Bump Strength]: 汚れの凹凸の強さ
各パラメーターが影響する部分
クリアコートについて
車の塗装などの表現に使用される「クリアコート」パラメーターが両ノードにありますが、「適用」時に「クリアコート」オプションを使用していない場合、デフォルトでは各ノード間でこのパラメーターのソケットがリンクがされていないため、無効になります。もしこの状態で利用可能にするには、再度「クリアコート」オプションをONにして「適用」しなおすか、自分で[Grungit]、[Grungit Dirt]、[プリンシプルBSDF]各ノードの「クリアコート」ソケットをつないでください。
[Grungit][Grungit Dirt][プリンシプルBSDF]各ノードの「クリアコート」ソケットをつないだ図。必要であれば「クリアコート法線」もつなぐこと

PBR Bake機能について

 「PBR Bake」機能は、「Grungit」を「適用」して設定されたマテリアル(オブジェクト)に、摩耗などの情報をテクスチャ画像として書き出し、上記二つのノードなしで利用可能にします。レンダリングが高速になり、他の「PBR」に対応したアプリケーションで質感が再現できるようになります。

使い方

 すでに「適用」済みのマテリアル(オブジェクト)を選択後、[3Dビューポート]の[サイドバー]の[Grungit]タブから[PBR Bake]パネルの[channels]に書き出すチャンネルを設定後、[PBR Bake]をクリックします。実験的機能のためファイルの保存を促すメッセージがでますので、キャンセルしてファイルを保存するか、[OK]をクリックします。

[サイドバー]の[Grungit]タブから[PBR Bake]パネルの[channels]に書き出すチャンネルを設定後、[PBR Bake]をクリック

 しばらくすると、出力された画像テクスチャと、そのノードが「ノードツリー」に追加され、[プリンシプルBSDF]ノードにリンクされます。

出力後のシェーダーノードツリー(ノードツリーは見やすいよう整理済み)。ベイク後は左側のノードは不要に

終わりに

 少し長くなってしまいましたが、これでこのアドオンが活躍する場面が増えれば幸いです。もしお持ちでない方は買っておいて損はないと思います。いずれまたセールが来ると思われますので、その時まで待つのもいいでしょう。
 ではまた。