Blender ウォッチング
「Blender」内のVR空間に入り込んでモデリングを行えるアドオン「Freebird XR」
2022年12月2日 15:22
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
今回はVR内で「Blender」が操作できる「Freebird XR」をご紹介します。以前にもVRで「Blender」内の3D空間に入ることのできるアドオンをご紹介しましたが、これは実際にオブジェクトの生成や簡単なモデリングができます。
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なお、本記事ではPC側は「RTX 2060 12GB」と「Windows 10 Pro」、「Blender 3.3.1」、VR側は「Meta Quest 2」と「Air Link」「SteamVR」を使用しています。
ダウンロードとインストール
ダウンロードは公式サイトから行います。
Freebird XR: Fast and Easy 3D Modeling using AR/VR
リンク先のページ上部の[Click here to download the beta!]をクリックし、ベータ版のページの下の方にある、[Download Freebird from ~]と書かれているリンクをクリックしてください。
そして、いつものように[Blenderプリファレンス]ウィンドウの[アドオン]タブ(①)にある[インストール...]ボタン(②)からダウンロードした「Freebird.zip」を指定します。
インストールが成功すればパネルが表示されますので、「三角アイコン」と「チェックボックス」(③)でパネルの拡張表示と有効化を行います。
本記事執筆時点でのアドオンのバージョンは「1.3.0」です。
利用方法
上記で「Blender」が起動している状態だと思いますので、「Virtual Desktop」や「Air Link」などで「PCVR」が利用可能な状態にし、「Blender」内の「3Dビューポート」右上の[Start VR]ボタンをクリックします。
インターフェイス
- 左手側にツールをまとめたパネルと「UNDO」(元に戻す)ボタンと「REDO」(やり直す)ボタンがあります。
- 右手側の「トリガー」でこれらパネルやオブジェクトとの操作を行います。こちらには[Quick Tools]ボタンと[CLONE](複製)ボタン(利用可能な場合のみ表示)があります。
左右は前述のアドオンパネル内の設定で入れ替えることもできます。
本記事ではデフォルトの「右手設定」で表記しますので、入れ替えた方は読み替えてください。
オブジェクトの追加(SHAPE)
左手パネルの「SHAPE」アイコンをクリック後、パレットから形状を選択し、右手トリガーでメッシュオブジェクトを追加します。形状の寸法や比率はインタラクティブに設定でき、右手グラブを同時押しすると傾きます。
選択ツール(SELECT)
- 左手パネルの「SELECT」アイコンをクリックし、消しゴムツール同様、右手の先端を対象に重ねてトリガーを押します。押したまま移動すると、選択物の移動になります。
- 左手トリガーを押しながら右手トリガーを押すと選択の追加と解除ができます。
- 辺ループ選択などの高度な選択ツールは現時点では未実装です。
トランスフォームと複製
右手の先端を対象に重ね、グラブを押しながら移動すると、移動と回転ができます。さらに左手のグラブも押すと、スケーリングが可能です(全軸のみ)。
トリガーとグラブを同時押しするか、右手の[CLONE]ボタンを押すと複製できます。
編集ツール(EDIT)
現在選択中のオブジェクトの形状を編集可能です。
執筆時点では3つの選択モード(「頂点」「辺」「面」)と、3つのツール(「BEVEL」(ベベル)「INSET」(差し込み)「EXTRUDE」(押し出し))が利用可能でした。残念ながら現時点では辺の細分化や削除、統合用ツールはありません。
ツールは通常の「Blender」同様、ハンドルを引っ張って操作します。ただ、執筆時点では「INSET」がうまく動かなかったり、「EXTRUDE」の操作に対する移動量があまり直感的なかったりと、まだあまり調整されていない感じを受けました。
ちなみに「BEVEL」は方向によって分割数が変わります。
その他の便利ツール
Quick Tools
右手の[B]ボタンを押しながら左右に動かすと、選択ツールと削除ツールがすばやく切り替えできます。
VRとデスクトップとの切り替え
「Menu」ボタンや「Oculus」ボタンなどでバーチャルデスクトップに切り替えるか、HMDを外しましょう。
[Stop VR]ボタンは特に押す必要はありませんが、HMDを外した場合はCPUやGPUなどのリソースを無駄に消費するので、気になる方はクリックして止めた方が精神衛生的によろしいかと思います。
他にも凸包形状が作成可能な「VOLUME」ツールや、三次元のグリッドを表示する「GRID」などがあります。
操作感について
操作感は悪くなく、直感的に操作できます。ただVRの場合、手によるポインティングが安定しないのが最大の問題だと思いますので、スナップは欲しいところです。
モデルの編集は「ループカット」や「ループ選択」、「頂点のマージ」は欲しいところ。ひと月ほど前に公開された時点では、編集ツールはベベルツールくらいしかなかったので期待できそうです。
ただ、上記の公式サイトによると、コンセプトアーティストを対象としており、VRでは必要最小限の機能のみで、残りはデスクトップモードで行ってもらうワークフローを想定していると思われます。
とはいえ、作者の方は有償化を目指しているらしいので、状況によっては方向の転換はありうるかもしれません。
終わりに
実は他にもVRの3Dモデリングツールを少し試していたのですが、カーブサーフェスベースの所為かあまりなじめず、今回のアドオンはいつも使用している「Blender」での編集とあって、すぐに慣れました。
上記にもありますが、まだ本格的な作業をするには色々と足りません。しかし、まるでミニチュアで遊んでいるような感覚は楽しく、機能がそろえば時間が溶けるかもしれないと感じました。このまま進化を続けていってほしいと思います。