Blender ウォッチング
超個人的メタバース? 「Blender」の中にVRで転生する方法
2022年10月14日 11:45
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
新しい「Meta Quest Pro」の発表が話題になっていますが、今回は「Meta Quest2」などの「HMD(ヘッドマウントディスプレイ)」と、PCによる「PCVR」ゴーグル環境で「Blender」を覗いてみましょう。
「Blender」にはVRが利用できるアドオンがバンドルされています。モデリングなどは不可能ですが、作成した建築物の中を実際に移動できるため、モデルの確認やプレゼンテーションに利用できそうです。
利用方法
先に利用可能なHMDを確認しておきましょう。下記リンク先に、対応するHMDとOSの表が掲載されています。
本記事では「Meta Quest2」と「GeForce RTX 2060 12GB」、「Windows10」、「Blender 3.3.1」の環境で動作を確認しています。
アドオンの有効化
まずはアドオンを有効化します。「Blender」を起動し、[編集]メニューの[プリファレンス]で[プリファレンス]ウィンドウを表示し、[アドオン]タブ(①)の右上の検索ウィンドウ(②)から「VR」と入力します。
そして表示されたリスト中の「VR Scene Inspection」アドオンのパネル左上のチェックボックス(③)で有効化後、[プリファレンス]ウィンドウを閉じます。
HMDによるPCとの接続と「Blender」の起動
「Virtual Desktop」などでPCにHMDをPCVRとして接続します。各HMDによって操作方法が違いますのでここでは割愛させていただきます。本記事では「AirLink」を使用しています。
操作方法
「タッチコントローラー」による操作では、右スティックで「左右回転」と「上下移動」、左スティックで「前後左右」移動が割り当てられています。
また、トリガーで光線を発射し、光線が当たった面の前に移動することもできます。
現時点ではスナップ回転などはありませんので、酔う方は回転だけ自力行い、移動はトリガーによるワープを利用してみてください。(デフォルトの立方体では場所も限られますが)
もし他のデバイスをお持ちで操作がしづらいという方は、[アクションマップ]パネルにあるデバイスがあれば試してみてください。
既存のファイルの読み込み
立方体だけ見ていてもつまらないので、VR側でデスクトップ表示から操作するか、PCから別のファイルを読み込んでみましょう。
読み込み後は、直前のVR表示用プロセスが停止していますので、再びサイドバーを開き、[Start VR Session]をクリックする必要があります。
VR画面で3Dモデルを表示する際は、以下の点に気を付けてください。
- レンダーエンジンが「Cycles」の場合は、「Eevee」に変更します。
- [Start VR Session]をクリックしてもすぐ止まる時は、恐らく「シェーダーコンパイル」で表示の準備をしています。しばらく待ってみてから再度クリックしてみてください。
- 当然ながらVRの表示など考慮していない重いファイルがあり、低フレームレートによる「VR酔い」になる可能性があります。気分が悪くなったら我慢せず休みましょう。
シーンが重くてカクカクする場合
大抵の建築モデルでは、複雑な間接照明を利用可能な「Cycles」レンダーによる利用を前提とした質感が設定されており、さらにポリゴン数も節約されていないことが多いため、VRでの閲覧には適さないことが多いです。
なるべく軽くするには、以下のような最適化作業が必要になります。
- レンダーを「Eevee」に再設定
- 「透過」と「鏡面反射」マテリアルをできるだけ減らす
- 可能な場所ではモディファイアーを「適用」または「削除」する
- 「プロシージャルテクスチャ」を「画像テクスチャ」に変える
- 間接照明には「ライトプローブ」を使用する
- 複雑な「シェーダーツリー」や重い「シェーダー」を使用している場合は、「プリンシプルBSDF」による簡単な物に置き換える
- 「ボリューム」や「ヘアーパーティクル」などの重いオブジェクトは非表示にするか削除する
下の動画では、公式Eeveeデモファイルの「Architectural Visualization」(Marek Moravec氏作)をVR表示しています。元ファイルにあったマットの削除などの最適化を行っています。
アニメーションも見られる!……かも
実はアニメーション再生中もVRによる閲覧が可能です。例えば軽量なモデルであれば、キャラクターがダンスをしている様子を眺めることもできます(※ただしPCの性能に依存する)。
方法は簡単で、アニメーション再生(スペースキーなど)を行った後で、[Start VR Session]をクリックするだけです。
下の画像は、最初の動画の作業画面です。インポートしたVRMモデルにIK リグを付けてアニメーションを行っています。
ここでは速度を稼ぐのとアニメ風の質感を保つため、トーンシェーダーを直接「マテリアル出力」ノードにつなげ陰影処理を省略していますが、「プリンシプルBSDF」ノードに置き換えてもいいかもしれません。
ちなみにアニメーションせず、単にポージングした状態では、もう少し負荷は減ります。
終わりに
元々性能の要求の高いVRですが、それに加え最適化が行われていないモデルやマテリアルでの動作は厳しく、執筆中はVR酔いで中々作業が進みませんでした。
本文では完成しているファイルの閲覧について書きましたが、むしろ制作途中での確認に活躍してくれそうです。
ではまた。