Blender ウォッチング

3DCGの謎用語を解説! 「シャドウキャッチャー」といっても野球用語ではない!

「コンポジター」「ホールドアウト」などレンダリングとVFX関連の用語を説明します

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

 今回は画像処理と動画編集、VFX関連の用語について説明しています。用語というより「Blender」の機能の紹介が中心になってしまっていますが、何かを始める足掛かりになれば幸いです。

「Blender」にはわかりづらい用語がたくさん

コンポジター

 「Blender」のエディターの1つ。レンダリング画像や、その他の画像の合成(コンポジティング)や加工をノードベースで行うことができる。[Compositing]ワークスペースからアクセスし、エディターのヘッダーの[ノードを使用]で利用可能になる。

 合成以外にも、[プロパティエディター]の[ビューレイヤープロパティ]で画像や照明の各成分のパスの出力を設定することで、画像のレンダリング時にこれらのパスのデータが出力され、[レンダーレイヤー]ノードのソケットから利用可能になる。これにより、画像の調整を再レンダリングせずに行うことができる。

 静止画と動画の両方で利用でき、動画の場合はあらかじめ全部のパスを含んだ動画を「OpenEXRマルチレイヤー」形式で連番画像として保存しておく必要がある。

[コンポジター]と[ビューレイヤー]プロパティ

パス

  1. 経路(Path)のこと。「出力~」「カーブ~」
  2. 通過すること「ロー~フィルター」
  3. 画像や照明の色、深度、法線、AO(アンビエント・オクルージョン)といった成分毎の出力のこと
    [コンポジター]ではこれらを組み合わせることで、再レンダリングせずに調整を行ったり、様々な効果を与えることができる。
【おまけ】出力パスについて

 ついでに「Blender」の動画の出力パス設定が少々わかりづらいのでこの機会に補足しておきます。

 「Blender」からの動画の出力には、[プロパティエディター]の[出力プロパティ]-[出力]パネルに動画を出力するパスを指定し、[レンダー]メニューの[アニメーションレンダリング]([Ctrl]+[F12]キー)を実行する必要があります。普通にアニメーションレンダリングすると、「tmp」フォルダーなどに保存されてしまうので注意が必要です。

 これは今回紹介する動画系エディターのすべてで共通です。

[出力プロパティ]の[出力]パネルとパスの例。図のように「//」で始まると.blendファイルの「相対パス」になり、この場合は1つ上の階層の「render」フォルダーに「testfile0001-0360.mp4」という名前で保存される。

連番画像

 動画の各コマを「Anim01230.exr」のように、ファイル名にフレーム番号を振った名前の画像ファイルに保存した物。イメージシーケンスとも。

 「Blender」で読み込む場合は、一番最初のファイル(上記の例なら「Anim0001.exr」)を指定し、ノードなどで連番画像に設定すれば、残りを自動的に読み込む。

オーバーレイ

  1. 【画像処理】画像の合成方法の1つで明暗を強調する
  2. 「Blender」のインターフェイスの1つで、エディター内に様々な補助情報を重ね合わせて表示する
    左のアイコンで全体的なON/OFFを切り替え、右側のボタンで内容を細かく切り替えることができる。
オーバーレイ(インターフェイス)

アルファ

 画像処理および3DCGでは画像の「不透明度」の値のこと。「Blender」でも扱えるが、以下のようにいくつかの注意点がある。

  • Eeveeレンダーでアルファ透過させるには、[プロパティエディター]の[マテリアルプロパティ]-[設定]-[ブレンドモード]および[影のモード]を指定する
  • アルファを含む画像を出力するには[出力プロパティ]-[出力]の[フォーマット]で「アルファ値を含むファイルフォーマット」(PNGなど)を、[カラー]で[RGBA]を使用する
  • 背景をアルファ透過させるには、[レンダープロパティ]-[フィルム]-[透過]を有効にする
  • [コンポジター]など、内部的に利用されているアルファ値は「プリマルチプライド」(RGBの各値にアルファ値が乗算する方式、乗算済みアルファ、合成チャンネルとも)だが、PNGファイルなどへの出力では「ストレート」になる。
プリマルチプライドとストレートの違い

シャドウキャッチャー

 「Blender」のレンダリング機能の1つ。影のみをレンダリングし、他の部分をアルファ透過することで、実写映像に違和感なく合成できるようにする。

 [プロパティエディター]の[オブジェクトプロパティ]-[可視性]にてオブジェクト毎に設定可能で、[Cycles]レンダーのみ利用できる。

ホールドアウト

 「Blender」のレンダリング機能の1つ。オブジェクトのレンダリング部分をアルファで透過することで、「画像のハメコミ」や、別のオブジェクトを隠し、実写映像を上に表示する「マスク」に使用できる。こちらもオブジェクト毎に設定可能で、[Eevee]レンダーでも利用可能。

シャドウキャッチャーとホールドアウト。クリックで実際の作業画面

ビデオシーケンサー

 「Blender」の動画や音声などを配置・加工・編集し、動画を作成するためのエディター。VSE(Video Sequence Editor)とも。

 動画や音声ファイルをストリップとして読み込み、まとめていく。表示は上のチャンネルが優先され、重ね合わせるには「アルファオーバー」エフェクトストリップなどを使用する。

 アクセスは、ワークスペースタブの[+]ボタンから[Video Editing]-[Video Editing]で行うか、[ファイル]メニューの[新規]-[Video Editing]で行う。

ビデオシーケンサー

動画クリップエディター

 「Blender」のエディターの1つ。実写映像と3DCG画像の動きを同期するため、映像からカメラの動きを検出する、いわゆる「カメラトラッキング」と呼ばれる処理を行う。

 こちらもワークスペースタブの[+]ボタンからアクセスできるが、[ファイル]メニューの[新規]-[VFX]の方が一度に必要なワークスペースを追加できて楽。

 以下に試してみたい人のために簡単な流れを示す。

  1. ワークスペース追加後に動画をドラッグ&ドロップ。
  2. [トラックタブ](①)にて[クリップ]-[シーンフレームを設定](②)で動画とシーンの長さを合わせる
  3. [マーカー]-[特徴点を検出](③)でマーカーを追加後、[トラック]-[トラック]の[↱]ボタン(④)をクリック。特徴点のトラッキングが行われる
  4. [解析]タブで[三脚]をチェックし、[カメラモーションの解析]をクリックして解析を行う
  5. [シーン設定]-[トラッキングシーン設定]でカメラが追従するよう設定する
動画クリップエディター