Blender ウォッチング

3DCGの謎用語を解説! 「アーマチュア」って素人って意味じゃないの?

「エンベロープ」「リギング」「コンストレイント」なども説明します

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

 今回はキャラクター制作でおなじみの「アーマチュア」や「リギング」などの用語を解説します。アニメーションはしなくてもキャラクターは作ってみたいという方は多いのではないでしょうか。まずは用語だけでも知っておいても損はないと思います。

「Blender」にはわかりづらい用語がたくさん(キャラクターモデルはプロ生ちゃん(Pronama LLC氏、120氏作)

アーマチュア

 人体などの生物のポーズを表現するために骨組みを模した機構。他のツールなどでは「スケルトン」とも。

 ボーンの集合で構成され、メッシュオブジェクトの頂点と「頂点グループ」「エンベロープ」などでバインド(関連付け)され、骨格に基づいた変形を行う。

 [編集モード]でボーンの編集を行い、[ポーズモード]でポーズを付ける。

アーマチュアによるメッシュオブジェクト変形例。プロ生ちゃん(Pronama LLC氏、120氏作)を元にした改造版

ボーン

 3DCGではキャラクターなどを動かす骨格に使用される仮想の骨のこと。

 「Blender」ではヘッド(Head)と呼ばれる「根元」と、テール(Tail)と呼ばれる「先端」で構成され、この2つが「ペアレント」でつながり、関節を作る。ボーンにはそれぞれ「ローカル軸」があり、把握しておかないとリギングの際に苦労することになる。

 表示方法には複数の種類があり、さらに他のメッシュオブジェクトを指定し、ターゲット用の特別なボーンを判別しやすくすることも可能。

ボーンの表示タイプ。これらはアーマチュア全体でのみ変更可能だが、カスタムボーン機能でボーン毎に他のオブジェクトの形状を利用することもできる(1つ前のアーマチュアの項の図を参照)

頂点グループ

 頂点をまとめる機能。主に「モディファイアー」などによる影響範囲の指定や除外に使用され、機能によっては「ウェイト」(重みづけ)により、その影響力が調整できる。「Blender」では[編集モード]と[ウェイトペイント]にて編集が可能。

 アーマチュアとの関連付けは通常、メッシュをアーマチュアの子として[ペアレント]-[アーマチュア変形]-[自動のウェイトで]を使用し、自動的にウェイトを追加・設定して行う。

 ボーンと同名の頂点グループが設定された頂点がボーンの影響を受け、複数の頂点グループが指定されている場合は、各頂点グループのウェイトで動きが決まる。

 「Blender」では1つの頂点に設定可能な頂点グループ数に制限はないが、「Unity」などのゲームエンジンではパフォーマンスの理由で4つ程度に制限されていることが多い。また、ウェイトの合計が「1.0」でないといけないなどの制限もあるため、「Blender」で作成後、他のツールなどで利用する場合は注意が必要である。

[ウェイトペイント]モード。アーマチュアとメッシュがペアレントされている時は、アーマチュア→メッシュの順で選択し、[ウェイトペイント]に入ると、[Ctrl]+左クリックでボーンを選択しながらペイントできる

エンベロープ

  1. 「Blender」でアーマチュアとメッシュを関連付ける方法の1つ。各ボーンの周囲に、各ボーンの関節ごとに大きさを決めた領域を設定し、その中に入った頂点を変形の対象とする。実際には直接この機能で変形するより、頂点グループに変換するなど補助的に利用されることが多い。
  2. F カーブ用の「モディファイアー」の1つ。
エンベロープ。興味のある方はクリック後の画面をヒントに調べてみるのもいいかもしれない

リグ・リギング

 「機構」のこと。また、このような機構を構築することをリギングと呼ぶ。

 例えば[ペアレント]によりドアを開け閉めする機構や、「カメラ」をターゲットに向ける機構、そして[アーマチュア]を使用した、人体を模した構造などが「リグ」にあたる。

 「Blender」でのリギングには[コンストレイント]などが利用される。

「Blender」同梱のアドオン、「Camera Rig」。これもリグ

コンストレイント

 ボーンやオブジェクトの動き(トランスフォーム)を制御する機能。「Blender」では単純にトランスフォーム情報をコピーしたり、変換するものもあれば、追跡(トラック)やIK(インバースキネマティクス)を行うもの、ペアレントを操作するものなど、様々な種類がある。

「回転コピー」コンストレイントの使用例

IK

 Inverse Kinematics(インバースキネマティクス)の略称。

 ターゲットの位置に先端のボーンが到達するよう、途中のボーンを自動的に回転して合わせる機能。腕や脚のポージングの省力化に非常に役に立つが、その反面、途中のボーンの姿勢を調整できない欠点がある。「Blender」ではボーン用のコンストレイントの1つとして実装されている。

 反対語として、FK(Forward Kinematics: フォワードキネマティクス)があり、こちらはIKのないデフォルトの状態で、ユーザーが途中のボーンの姿勢を自由に決めることができる代わりに、ターゲットの位置に先端のボーンを到達させるような用途には向かない。リグにはIKとFKを切り替え可能な物がある。

IKの使用例

ポーズ

 「Blender」ではアーマチュアで各ボーンの姿勢をまとめた物。[ポーズモード]で編集する。ポーズは[ポーズアセット]としてポーズライブラリに登録することや、アセットブラウザーなどから再利用することが可能。

ポーズライブラリの使用例