でんこと旅するメタバースの世界
キーワードになるのは「没入感」と「トラッキング」 ~VRヘッドセットがあればもっとメタバースを楽しめる!
自分自身がそこにいる、自分自身にあわせてアバターが動いている。増すリアリティと楽しいコミュニケーション
2022年11月24日 07:05
連載の第3回目となる今回は「なくても大丈夫。あったらもっと楽しめる」というVR機器(VRヘッドセット)の魅力についてお話ししていきたいと思います。
前回は「メタバースを楽しむためにはVR機器は必須ではない」というお話をしました。「いきなり前回と言ってることが違うじゃないか」と思われる読者の方もいらっしゃるかもしれません。
私のスタンスは「メタバースの入口を体験したりするのはいつものデバイスでOK。でもより深く楽しむならVR機器があった方がもっと楽しい体験ができますよ」というものです。それでは詳しくお話ししていきますね。
一言で言うと圧倒的な「没入感」。自分自身がメタバースの世界にいる感覚
なぜVR機器があればより楽しめるのか。それはバーチャルな空間に自分が居る感覚を強く感じられるから、一言でいうと「没入感」にあります。ベタな表現に感じられるかもしれませんね。
前回ご紹介したように、普通のPCやスマートフォンでもメタバースの世界に入ることは可能です。ただ、それではどうしても「画面の中に広がる」仮想世界を体験することしかできません。ふと画面から目を離すとそこにあるのはいつも自分が過ごしている現実世界の光景が広がっています。
ですが、VRヘッドセットを被ると体験は大きく異なります。当然主観視点(一人称視点)になり、360度、上下左右どの方向を向いても向こう側にある仮想世界の光景が広がるのです。(現実世界のスペースがあればですが、)実際に現実世界で歩くとバーチャル空間の中を実際に移動できますし、首を傾ければ頭の動きに連動してバーチャル空間も傾いて見えます。
お化け屋敷のようなホラーワールドはより怖く、みんなが音楽に合わせて踊っているクラブワールドはよりノリノリに、ゲームワールドはもっと楽しく、美しいワールドはさらに美しく……。VRヘッドセットを被って体験できるのは、完全に現実世界から切り離された仮想世界にいる体験なのです。
メタバースには現実世界では難しい表現や、物理法則を無視できる利点を生かした場所など非現実的な場所がたくさんあります。そんな非現実的な場所を現実的に感じられる、まさにバーチャルな空間に「居られる」こと、それがVRヘッドセットを使う魅力の1つです。
現実世界の身体とメタバース内の身体を同期させることで一体感を感じる
もう1つの魅力が体のトラッキングです。「トラッキング」とはセンサーから体の部位の位置を追尾する仕組みです。メタバース住人の中でスタンダードなデバイスとして人気が高い「Meta Quest 2」でも頭の向きや傾き、そして両手の位置などを追尾することができます。
「手や頭の位置が追尾できるだけで何が良いの?」という声が聞こえてきそうですね。実際に私も最初はそう思っていました。ですが、このトラッキングもまたバーチャル空間に存在している感覚を高めるものなのです。
例えば、現実世界で誰かとコミュニケーションを取る時には無意識に頷いたり首を振ったり、身振り手振りを使っていることがあると思います。メタバースも仮想の世界とはいえ、アバターの向こう側にいるのは生身の人間です。両手が動かない棒立ちのアバターよりも、頷いたり両手を使ってコミュニケーションをとっている人の方がより人間らしく感じられ、コミュニケーションに深みが増すというのはなんとなくイメージがつくでしょうか。
コミュニケーションだけではありません。メタバースの中では音楽にあわせて踊るクラブのような場所や、みんなでラジオ体操をするような場所があります。そんな時もVRヘッドセットがあれば現実世界で実際に踊ったり、ラジオ体操をしている動きが反映されるのです。それはメタバースという仮想世界が現実世界に近づく感覚です。
メタバースの中にある自分のアバターを現実世界の自分の動きにあわせるというのは非常に楽しい感覚なのです。やり込んでいるユーザーになると「トラッカー」と呼ばれるセンサーを追加で購入して、足の動きなどもアバターに反映されるようにしています。
ほかにも「VIVE Pro Eye」というヘッドセットを代表に「アイトラッキング」、つまり眼球の動きをトラッキングできるデバイスや、「VIVEフェイシャルトラッカー」という顔の下部の動きをトラッキングできるデバイスもあり、それらをフルに使って現実世界側の自分自身の動きをメタバース側に反映しているヘビーユーザーもいます。
メタバースにいるアバターは自分自身です。現実世界にいる自分自身の動きと連動させたいという気持ちになるのは当然のことなのかもしれません。
著者プロフィール:でんこ
バーチャルに活動の場を移したゲームライター。得意分野はビデオゲーム全般だが、最近はメタバースへの関心が強い。
ライターとして様々なメディアで執筆する一方、NPO法人バーチャルライツ公認の第0期VR文化アンバサダーでもあり、メタバース上の活動やメディアでの情報発信を通じてVR文化の魅力を普及させるべく活動中。
・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/