でんこと旅するメタバースの世界

メタバースに高額なVRヘッドセットは必須なの? 「メタバース=VR」のハードルを飛び越えよう!

普段使っているデバイスでOK、しかも“ほとんど無料で体験できる”

 この連載では「メタバース」という、現実とは異なるもう1つの素敵な世界について、メタバースライターである私、でんこがその魅力や楽しみ方などをお届けします。ぜひ私と一緒に新たな世界へ旅立ってみませんか。

 前回は「ぜひメタバースの世界に遊びに来てください!」というお話をしました。実際に飛び込んできてくれた方がいらっしゃったら嬉しいです。ですが、せっかくメタバース世界に入りたいと思っても、初心者には高額な「VR機器」が必要でハードルが高いと思われている方もいるかもしれません。

 そこで、今回はメタバースを楽しむために「実はVR機器は必須ではないよ」という話をさせてください。

メタバース世界に入るためにはVR機器は不要! 普段使っているデバイスでOK

 VRヘッドセット、VRゴーグル、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などなど、その呼び方はさまざまあるVR機器は、仮想現実世界(Virtual Reality)での体験をよりリアルで没入感のあるものにしてくれるものです。Metaをはじめとする多くの企業は、新型VRヘッドセットを続々と発表してメタバースの普及・構築を加速させています。

 そのため、一般的にメタバースと言えば「VRが必須」「VR機器がないとメタバース世界で遊べない」というイメージを持たれたり、「VRヘッドセットは高いし、重いし、カッコ悪いから使いたくない」という話を見たり聞いたりすることが多いです。

 現状、そういった「メタバース=VR」のイメージが先行していますが、実のところ、多くのメタバースではVR機器がなくても遊べます。

代表的なVRヘッドセットの「Meta Quest 2」。メタバース世界で遊ぶだけなら、実はこういった機器は不要です

 そもそもVRとメタバースはまったく違うものです。VRはあくまでも道具で、メタバースはそれを使って入る空間、と捉えてみるとよいかと思います。メタバースに入るための道具の1つなので、スマートフォンを使ってメタバースに入っても、普段のPCを使ってメタバースに入ってもよいということです。

 例えば、日本発のメタバースプラットフォームとしてお馴染みの「cluster」では、スマートフォンでも参加することができます。私はiPhone XS Maxという少し古めのスマートフォンで、公式で推奨されるスペック以下のスマートフォンを使用していますが、一部の重いワールド(3DCGで表現されたメタバース上の空間)を除き、快適に遊ぶことができています。

「cluster」は2020年からモバイルでの動作をサポート。翌年2021年にはOculus Quest 2単体での動作に対応しました

 また「cluster」を含め、「VRChat」や「NeosVR」といった知名度の高いメタバース世界でも、PCがあればプレイできます。

 「VRChat」の場合を例にすると、推奨スペックはWindows 10、CPUはIntel i5-6500 / AMD Ryzen 5 1600相当以上、メモリは8GB以上、ビデオボードはNVIDIA GeForce GTX 1060 / AMD Radeon RX 580相当以上となっています。「NeosVR」の推奨スペックもほぼ同じです。「cluster」はビデオボードの要求が低めで、Intel Iris Graphics 540以上となっています。

 基本的にはビデオカードを搭載した、いわゆるゲーミングPCが求められていますが、ここ数年の3Dゲームが動く程度のPC環境であれば十分動くでしょう。

VR機器があればたしかにもっと楽しめる。でも基本的なことを体験するにはなしでもOK

 VR機器は、たしかにデバイスとしては高額な部類に入ると思います。気軽に「さあ購入して一緒にメタバース世界を楽しみましょう!」とは言いづらいものです。

 代表的なVRヘッドセットを例に挙げてみると、コンシューマー用途で人気のある「Meta Quest 2」で59,400円(128GBモデル)からで、その対抗馬として先日10月7日に発売された「PICO 4」はもう少し安価ではありますが、それでも49,000円です。

VRヘッドセット「PICO 4」。Meta Quest 2より少し安価ですが、それでも49,000円です

 もっとも、上記のモデル以上に高価でハイエンドなVRヘッドセットもあります。Metaの最新モデル「Meta Quest Pro」はビジネス向けということで、その価格はなんと22万6,800円です。ノートPCに代わるものを目指しているとのことで、それに相応しいノートPC並みの価格になっています。

 ただ繰り返しにはなりますが、メタバース世界へ飛び込むためにVRヘッドセットは必須ではありません。

 そもそも上記でご紹介したcluster、VRChat、NeosVRというメタバース世界は遊ぶだけなら無料です。またワールドという3D空間を作るのも無料(今回は紹介していませんが「Decentraland」などワールドの公開に「土地」が必要なメタバースもあります)で、アバターを購入したり、ワールドの制作に使用するアセット(アイテムのようなもの)を購入すると、お金がかかると考えていただければと思います。

 メタバース世界の基本的な楽しみ方を満喫する分には、“ほとんど無料で体験できる”、と言っても過言ではないのです。

こういったワールドを公開するのも無料です。制作済みのアセットを使う場合は購入する必要がある場合もあります

 まずはスマートフォンやPCでメタバース世界に行ってみる。メタバース世界の楽しみである、さまざまなワールドを巡ったり、イベントに参加したり、ほかの住人たちと交流を楽しむ、そういった基本的な要素は十分に楽しめます。そして面白かったらもっと深く楽しむためにVRヘッドセットを購入する。広大なメタバース世界への足掛かりとしては、それで十分だと私は思います。

 せっかく“ほとんど無料で体験できる”のですから、「VRが必須だからメタバースに参加しない、中に入ることができない」というのは非常にもったいないと思います。この連載の第1回目でもお伝えした通り、メタバースはさまざまな可能性を秘めていますし、自分の可能性を解き放てる場所だと思うからです。

メタバース世界なら集客や場所を借りるコストなどを考えずにイベントを開催することができます。歌や演劇といったさまざまなパフォーマンスをしている住民たちが多くいます
「cluster」には「Cluster Lobby」(ロビー)というワールドに公式スタッフがいたり、有志の住民たちが初心者向けに案内をしてくれます。何をすればよいかわからなくても遊びにいける気軽な世界です

 ではそうなると、なぜメタバースの住人たちはVRヘッドセットを使う人が多いのでしょうか。

 そこには、VRヘッドセットだからできる経験が間違いなくあり、個人的にはその価格に見合うだけの価値があると思っています。それはつまり、VRヘッドセットがあれば“より楽しめる”ということです。

 それでは、どうしてVRヘッドセットによってメタバース世界をより楽しめるようになるのかについては、次回お伝えしたいと思います。どうぞお楽しみに。

著者プロフィール:でんこ

バーチャルに活動の場を移したゲームライター。得意分野はビデオゲーム全般だが、最近はメタバースへの関心が強い。
ライターとして様々なメディアで執筆する一方、NPO法人バーチャルライツ公認の第0期VR文化アンバサダーでもあり、メタバース上の活動やメディアでの情報発信を通じてVR文化の魅力を普及させるべく活動中。

・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/

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