でんこと旅するメタバースの世界

メタバースでノードプログラミング!? 物作りの未来を先取りする「NeosVR」

まるで学園祭みたい!「MMC」で未来を感じてきた話

 この連載では「メタバース」という、現実とは異なるもう1つの素敵な世界について、メタバースライターである私、でんこがその魅力や楽しみ方などをお届けします。ぜひ私と一緒に新たな世界へ旅立ってみませんか。
今回紹介する「Metaverse Maker's Competition」のビジュアル

 「メタバース」という世界の魅力は人によって、また切り口によってさまざまな捉え方があると思います。好きなアバターを身にまとって現実世界とは全く異なる自分になること。自分の想像力を解放させて、現実では作れないようなモノや空間を作ること。どういった形であれ、現実世界ではできないようなことができるのが「メタバース」の魅力の1つだと私は思っています。

 さて、今回ご紹介するのは「NeosVR」というプラットフォームで開催されていたイベント「Metaverse Maker's Competition(MMC)」という物作りコンテストです。ちょうど2月1日から3月1日の約1カ月間、行なわれていたので、その様子をお届けしながら、改めて私がメタバースに感じた魅力と可能性についてお話しさせてください。

Metaverse Maker Competition 2023

とても未来感を感じるメタバース。それが「NeosVR」

 「NeosVR」は、チェコのSolirax社が開発・運営しているメタバースプラットフォームです。ほかのメタバースプラットフォームと同様、自分の好きなアバターを身にまとったり、ワールドと呼ばれる世界を作ったりすることはもちろんできますし、ほかの住人と話したり、ゲームで遊んだり、イベントで盛り上がったりもできます。

 これだけだと、よくあるメタバースプラットフォームだなと思うかもしれません。私がこのプラットフォームに魅力を感じた理由は「未来感」にあります。いきなり未来感なんて言われても戸惑いますよね。順番に説明していきますね。

 1つは先見の明を持っているところ。この「NeosVR」というメタバース空間では、多くの実験的な機能が比較的早い段階から実装されてきました。例えば、いまや「VRChat」や「cluster」も対応しはじめていますが、全身11カ所の動きを取り込む「11点トラッキング」に加え、専用のデバイス情報を読み取って目の動きをアバターに反映する「アイトラッキング」、口の動きをキャプチャーする「フェイシャルトラッキング」といった機能をいち早く実装していました。

【話題のメタバース】『Neos VR』って何?

 そしてもう1つが物作りの空間としての可能性です。「NeosVR」の世界の中では、メタバースの3Dバーチャル空間にいながら、3Dモデリングやプログラミングが可能なのです。その自由度は非常に高く、ある住人は「NeosVRに不可能なことはない」とまで表現していました。

 私が「NeosVR」に驚いた点、そして可能性を感じている点は、まさに「メタバースの3D空間の中で物作りができる」という環境にあります。アバターのままノード式プログラミング(ビジュアルプログラミング)をしたり、モデリングをしたりといった、普段であればメタバース空間からログアウトして、自分のローカルPCで作業するようなことがメタバース空間の中でできるのです。

ある日の光景。インスペクターと呼ばれるウィンドウをバーチャル空間上に浮かべて作業をしています
ノードを繋げてプログラミングをすることも可能です
メタバース空間の中でモデリングもでき、有志による講習会が行なわれました

メタバース空間における物作りから生まれる未来への可能性

 さて「MMC」は「NeosVR」上で毎年1カ月間にわたって開催されるコンテストイベントです。参加費は無料で、個人・グループを問わず誰でも参加できます。参加者はワールドやアバター等を制作し、優勝作品に選出されれば賞金を獲得することもできます。過去のMMCでは、アバタークリエイター、ワールド、ゲーム、NPC、ジェネレーティブアート、カスタムツールといったカテゴリーで、魅力的な作品が数多く披露されました。

 私がお邪魔したのは、MMCの締め切りも間近のところ。作業が完了しているチームや、最後の追い込みをしているチームがほとんどでしたが、今回見せていただいたのはワールド、アート、ゲーム系の作品でした。

こちらは童謡の「鶴の恩返し」をテーマにしたアート作品です。作業はまさに追い込みという段階でした
音楽にあわせて流れてくるノードにタイミングよく触れていく音楽ゲーム。譜面の作成まで「NeosVR」の中で制作されたツールを使っているとのことで驚きました

 これらの作品を見て、それぞれの思いが込められた完成作品自体のクオリティや面白さに魅力を感じたのはもちろんです。ただ真の価値はそこだけではないと感じました。これらの価値は“メタバース空間の中で”物作りをすることから生まれるコラボレーションの賜物であるということです。

 3Dのバーチャル空間の中で作業していると、それを見た誰かがサポートをしてくれたり、刺激的なアイデアを出してくれるかもしれません。例えば、アート作品ならその場で見てもらって感想を聞いたり、ゲームであればその場でテストプレイをしてもらうこともできます。そのフィードバックを活かしてそのままみんなでデバッグをする、なんてことも起きるでしょう。

 そうすることで生まれる人と人の繋がり。それが1番の未来感であり、大きな可能性なのかもしれません。目の前に共通の話題があり、それについてみんなで語り合う。今回「MMC」を案内してくれた私の友人はそれを「まるで学園祭みたいですよね」と表現していました。自分の出し物を作るのはもちろん、友達や隣のクラスの出し物を手伝ってみる。そうすることで物作りに新しい刺激が生まれますし、新しい友達ができることもありますよね。

チームによる作業風景。みんなで成果物を見ながら意見を出し合い、そのまま3Dのバーチャル空間の中で作業をしています

 たしかに「MMC」は「NeosVR」で開催されたイベントの1つではありますが、「人と人の繋がり」という「メタバース」そのものの魅力を改めて認識させてくれました。このプラットフォームと、そしてこのイベントを通じて、また3Dのバーチャル空間である「メタバース」上でコラボレーションすることの可能性を強く感じた次第です。ご興味がある方はぜひ次回開催の際には参加してみてください。

 「ヘッドマウントディスプレイを被り、バーチャル空間の中でメンバーと協力しながら作業をしたり打ち合わせをする」というアプローチは、いくつかの大手企業やプラットフォームが提案、一般展開に向けて準備を進めているところではありますが、すでにそれを実現しているプラットフォームがあるのです。こういった面白いことをもう楽しんでいる住人たちがいる。ぜひそうしたことを知ってもらえると嬉しいです。

著者プロフィール:でんこ

バーチャルに活動の場を移したゲームライター。得意分野はビデオゲーム全般だが、最近はメタバースへの関心が強い。
ライターとしてさまざまなメディアで執筆する一方、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJなどの活動を通して、メタバースの魅力を多くの人に伝えるべく活動中。

・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/

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