でんこと旅するメタバースの世界

「メタバースでイベントを成功させたいなら海外進出くらいの気持ちでいてほしい」 ~1年間で1万人を動員した住民・uMeさんに聞く

メタバースにおける「コミュニティ」の重要性とは?

 この連載では「メタバース」という、現実とは異なるもう1つの素敵な世界について、メタバースライターである私、でんこがその魅力や楽しみ方などをお届けします。ぜひ私と一緒に新たな世界へ旅立ってみませんか。
今回は特別に「mXizm」の会場でuMeさんと写真を撮らせていただきました

 こんにちは、でんこです。

 本連載ではメタバースに関連するさまざまなトピックスを取り上げてきましたが、今回は音楽イベント「mXizm」を主催している一般ユーザー「uMeさん」のお話を通して、メタバースにおける「コミュニティ」の大切さについて、考えてみたいと思います。

cluster内の音楽好き集まるイベント「mXizm」の様子

DJイベント「mXizm」主催から1年間で1万人を動員したuMeさんに聞く

 「mXizm」は、メタバースプラットフォーム「cluster」内で毎週水曜日に行なわれているバーチャルDJイベント。約2時間のイベント時間中に来場者数が平均で200人~300人になる、というかなり大規模なもので、参考までに私がパーソナリティを務めていた約1時間のラジオ番組イベントの平均来場者数が60~70人くらいです。

 そんな「mXizm」は今年の3月に1周年を迎えました。いまやclusterの音楽好きユーザーの中ではお馴染みのイベントですが、実は最初からそんなに多くのユーザーが訪れたわけではなかったそうです。uMeさんのお話によると、「当初は人が来ると思ってなくて始めてしまった」とのことで、実際に昨年3月28日に開催されたイベントの来場者数は63人でした。

 そこからも曜日は決まっておらず、不定期でイベントを開催していたということですが、1回のイベントの平均来場者数が200人くらいになってきたタイミングで、水曜日に曜日を固定することにしたそうです。

 その後、clusterで毎週水曜日に開かれる音楽(DJ)イベントとして定番化した「mXizm」は1周年を迎え、今年2月8日にはイベントの総来場者数が10,000人を達成しました。名実ともにclusterを代表するユーザーイベントとして大成功したといっても過言ではないでしょう。

ご自身で作られた1万人動員の記念の盾の前で1枚

 uMeさんは「みんなの居場所が自分の居場所だったと思う」として、1万人動員達成については「水曜日のこの時間に、ここにいれば遊びに来てくれる人にとっても、自分にとっても、一緒に2時間を遊ぶお互いの居場所というイメージで、居心地のよさから結果的にそうなったと思います」とコメントしています。

「mXizm」はイベントではなく、毎週水曜日にみんなが集まるコミュニティといえる存在です

 「mXizm」について、個人的には“イベント”というよりも、1つの「コミュニティ」ともいえるもの、いえ「たまり場」という印象です。毎週水曜日の2時間、ここに来れば必ずuMeさんがいて、そのパフォーマンスを楽しむ住民たちがいる。そんな場所だと私は思っています。

メタバースには「コミュニティ」が何よりも重要

 さて、私はメタバースにはコミュニケーションの場、「コミュニティ」がとても大切だと思っています。メタバースにはたしかに多様なコンテンツがあります。美しいワールドを巡る観光的な遊びもあれば、ゲームワールドで楽しんだり、お化け屋敷のようなホラーワールドで絶叫する遊び方もまた1つあります。

 ただ、どの遊び方にも共通する要素ですが、これらの遊びはもちろん1人でもできますし、十分楽しめます。ですが、友達や誰かと一緒に遊ぶことでその楽しさは何倍にもなります。一緒に感想を話しながらワールドを巡ったり、一緒にゲームで熱くなったり、ホラーワールドで怖さを共有できるのです。どの遊び方にしてもその楽しさは1人で遊ぶこととは比較にならないでしょう。

 そして友達と一緒に作る場所、もしくは新しい友達と出会うのがメタバース上における「コミュニティ」です。

 メタバース上にコミュニティがあれば、誰かと一緒に遊ぶことはもちろん、何気ない雑談も1つの楽しみになります。むしろメタバース上でずっと雑談をすることが楽しいという住民もいるでしょう。かくいう私もその1人です。コミュニティはメタバースには欠かせないものだと私は思っています。

みんなが集まって交流するコミュニティ。メタバースではとても重要です

コミュニティの重要性は企業のメタバース参入にも共通する

 「企業がメタバースに参入するときも、コミュニティを大切にすべきだと思います」とuMeさんは話します。自分自身も試行錯誤しながらイベントを開催してきたuMeさん。自分のイベントを開催するだけでなく、ほかの住民のイベントに遊びに行ったり、イベント以外でもほかの住民と交流を深めたりと、そうやってメタバースの中に溶け込んだからこそ、いまの自分があるといいます。それは私も強く同意するコメントでした。

ただイベントを開催するだけでなく、メタバースのコミュニティに溶け込む努力をされているそうです

 例えば、メタバース上で企業が単発でイベントを行なう、単発でワールドを作る……それだけでは住民は決して遊んでくれないでしょう。コストをかけてメタバースに参入したのに見合った効果が出ない、ということになると思います。

 事実、過去には「メタバース上に作られた『バーチャル大阪』が過疎になっている」とニュースになったことがあります。住民の私から見てもそれは誇張などではなく、事実だと思います。ただ箱モノを作れば、住民が勝手に遊びに来てくれて自然と盛り上がっていき、コストをかけた分の価値が出る。そんな簡単なものではないのです。

 だとすれば、メタバース内でイベントを成功させるためには何が必要なのでしょうか。

 uMeさんはこう語ります。

 「海外進出くらいの気持ちでいてほしいです。まだ多くの企業はニーズがわかってないと思います。自分は半年くらいかけてニーズが自然とわかってきました。企業さんは半年位遊んで、どういうコンテンツが求められるかを感じた方がよい効果が出てくると思います。それはマーケティングと変わりなく、メタバースだからと端折ってしまうと、誰のためのコンテンツかわからなくなると思います。メタバースの空気を肌で感じて欲しいですね」

 これを聞いた私は心の底から頷きました。そこに「コミュニティ」がある、そこに人が集まる理由がある。そうしたときに初めて住民が遊びに来てくれて、はじめてメタバースを活用した効果が出るのだと思います。

1周年をお祝いするイベントにも多くの住民が訪れました。これこそまさにメタバースにおけるコミュニティの1つといえます

 uMeさんの例は、たしかにメタバースで大成功した特殊な例といえるのかもしれません。ですが、メタバースにおけるコミュニティの大切さ、居場所の大切さ、という意味では全く特殊なものではないと思います。

 メタバース空間であろうとなかろうと「コミュニティ」を作るのは大変です。ですが、とりわけメタバースにとっては「人と人との繋がり」がとても重要なのです。

著者プロフィール:でんこ

バーチャルに活動の場を移したゲームライター。得意分野はビデオゲーム全般だが、最近はメタバースへの関心が強い。
ライターとしてさまざまなメディアで執筆する一方、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJなどの活動を通して、メタバースの魅力を多くの人に伝えるべく活動中。

・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/

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