メタバース空間で河野太郎氏とハイタッチ!? 現実とは遠くないがユニークな世界が広がっている「メタバース」

現実に限りなく近づいている「メタバース」

 昨今「メタバース」という言葉が盛り上がっている。Webメディアはもちろんテレビや書籍にもメタバースという単語が多数登場している。ここまでメタバースという単語が取り上げられたのには様々な理由があるが、もっとも大きな出来事はFacebook社がMeta社に社名変更したことだろう。

 ところが、メタバースとはなにか、そして実際にどんな人が、どんなことをやっていて、どんな風に楽しんでいるかまでは、なかなか伝わっていないのが現状ではないだろうか。

 筆者がいわゆるメタバースに足を踏み入れたのは2020年のクリスマス頃だ。その頃はまだメタバースという単語が広がっていない状況で、今メタバース(に近いもの)と呼ばれている「VRChat」や「cluster」、「NeosVR」といったプラットフォームサービスは「バーチャルSNS」や「VRSNS」という表現をされていた。

 そこで様々な人と出会い、様々な刺激を受け、この世界にどっぷりとハマった筆者は、バーチャル世界に存在する美少女「でんこ」としてこの世界で様々な活動を行ない、いくつかのメディアでメタバースについて執筆したり、地上波のテレビ番組で取り上げられたこともある。またNPO法人バーチャルライツ公認の第0期VR文化アンバサダーとして、この文化・面白さを一人でも多くの人に届けるべく活動している。

 この特集では、そんな筆者がメタバースで行なわれていることについて紹介していきたいと思う。

著者近影。最近はメタバース内のバーでお酒を出さずに雑談をするマスターをしています

メタバースと現実は限りなく近づいている!

 さて、今回は「メタバースは意外と現実とそう遠くない」という話をさせていただきたい。今メタバースと現実との接点は着実に増えている。

 「メタバース」は様々な意味を含んでいるのだが、一言でいうとインターネット上の仮想空間である。そのため「現実世界で生活している私たちには関係ない」と思われている読者も多いかもしれない。

 もちろん我々が生活している現実世界とメタバースの世界が様々な点で異なっているのは事実だ。だがメタバースは一部のユーザーが内輪で楽しんでいるだけの場ではなく、現実世界とメタバースの距離は非常に近くなっている。

メタバース上では花火を楽しんだりすることもできるが、なにも内輪だけで楽しんでいる場ではない

 いくつかのエピソードがあるが、特に印象的なのは政治家の演説がメタバース内で行なわれたことだ。

 「VRChat」というメタバースと「cluster」というメタバース、それぞれ別の政治家が演説を行なったことがある。筆者も実際にclusterで行なわれた演説を見に行ったのだが非常に面白い試みだと感じた。

自民党の青年局による演説が行なわれたことがあり、筆者も聴衆として参加してきた

 普段であれば私達が演説を見にするとしても、それは街頭で選挙カーの上で演説をしている姿だろう。だが、そんな政治家が筆者を含めユーザーに馴染みのあるメタバース空間にいる。それだけで非常にインパクトがあった。

 そして自宅から演説を見れることも面白かった。現実世界であればそういった演説を聞こうとするとその場所まで行く必要がある。現実世界では県をまたいだり、海をまたいだりして距離が離れていたとしても、メタバース空間ではそんなことは関係ない。物理的にどこにいても演説が聞けるのだ。

 また、なんともユニークだと思ったのが最後に行なわれた聴衆とのハイタッチ会だ。現実世界のように握手ではなく、ハイタッチを行なっていた。意図はわからないが、これはこれで非常に楽しい体験だった。

 しかもclusterではアバターの上にプレイヤー名が書いてあるので、政治家たちが「〇〇さん、ありがとうございます」と言いながらハイタッチをする。これは本当に印象的だった。やはり名前を呼ばれるのは嬉しいし、こうやってメタバース空間に来てくれたんだという面白さ。様々な要素が絡み合って面白かった。

ハイタッチ会も非常に印象的だった

 ほかにも、さまざまなVTuberやアーティストがメタバース上でバフォーマンスなどを行なったこともある。

 今年の8月にVRChatで開催された「バーチャルマーケット2022 Summer」では歌手の広瀬香美さんのステージも作られているし、多数の大手企業がブースを出展。また、同じく今年の8月に「NeosVR」で開催された、ユーザー主導の展示会「NeosFesta4」でも「Happy Hacking Keyboard」で知られる(株)PFUといった企業が出展している。

先日VRChatで開催された「バーチャルマーケット2022 Summer」ではさまざまな企業がメタバース上にブースを出展していた
NeosVR上で開催された「NeosFesta4」にも(株)PFUといった企業が出展している。Twitterキャンペーンなどもあわせて実施された

 まだメタバースは一部の人達にとっての特別な世界かもしれないが、今後は確実に変化していくものと筆者は考える。多くの人々が当たり前にインターネットを使う時代になったように、メタバース上で買い物をする、メタバース上でエンタメを楽しむ、メタバース上で友人たちと交流をする……そういった世界が当たり前に来ると筆者は確信している。

メタバース上ではDJパフォーマンスをするユーザーや、それらに参加して楽しむユーザーもいる

著者プロフィール:でんこ

バーチャルに活動の場を移したゲームライター。得意分野はビデオゲーム全般だが、最近はメタバースへの関心が強い。
ライターとして様々なメディアで執筆する一方、NPO法人バーチャルライツ公認の第0期VR文化アンバサダーでもあり、メタバース上の活動やメディアでの情報発信を通じてVR文化の魅力を普及させるべく活動中。

・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/