でんこと旅するメタバースの世界
スタンミ&トコロバ旋風が巻き起こった2024年のメタバース。次なる波はどこから来るのか
インフルエンサーが切り開いたメタバースの「可能性」と「未来」を探る
2025年1月1日 13:30
明けましておめでとうございます、咲文でんこです。読者の皆様にとって昨年2024年はどんな年だったでしょうか、そして今年2025年はどんな年にしたいとお考えでしょうか。
私は昨年も多くの時間をメタバースで過ごし、いろんな出会いや体験を通し、改めてこの世界の魅力を感じたところです。そして今年も、この世界の楽しさを知ってもらうべく、活動していく決意をしました。
さて、メタバース界隈の2024年を振り返ってみると、たしかに地上波に取りあげられたり、雑誌やWebニュースに取りあげられるような華々しいトピックスはありませんでした。ですが、そうした中でも、とりわけ大きな話題となった出来事として、インフルエンサーのスタンミさんと一般宇宙人のトコロバさんによって旋風が巻き起こりました。
今回はその旋風についてご紹介しつつ、メタバースの次なる波はどこから来るのか、考えてみたいと思います。
スタンミ&トコロバ旋風がもたらしたメタバースの広がり
昨年、メタバースの世界の楽しさを最も広く伝えたのは、冒頭でご紹介したスタンミさんとトコロバさんだと思います。
スタンミさんは、Twitchで51万人以上のフォロワーを集める人気配信者です。これまではゲーム配信を主にされていて、メタバース的な文脈ではほとんど活動されていませんでした。しかし、昨年、彼の参戦によって「VRChat」、そしてメタバース(広義のメタバース)への関心が一気に高まったのです。
最初は、VRChatユーザーから集めたさまざまなエピソードを紹介するところから始まりました。そこから、スタンミさんは実際にVRChatの中へ入り、その中で体験した多くの出来事を、配信を通じて広く発信したのです。
メタバースから生まれたインフルエンサーではなく、メタバースの外からやって来たインフルエンサーが中の様子を実際に体験しながら配信する。これは非常に大きな転機でした。
さらに、このスタンミさんの配信をより魅力的なものにしたが、メタバース住民のトコロバさんとの偶然の出会いです。
日本語話者が1対1で会話を楽しめるワールド「NAGiSA」で出会った際、トコロバさんはユニークな宇宙人型のアバター(「Wormiesock」というアバター)と、そのあまりにも濃いキャラクターが、スタンミさん、そして視聴者の心をキャッチしました。その時の様子を切り抜いた動画は、YouTubeで580万回以上再生されています。
スタンミさんと一緒に遊ぶようになったトコロバさんは、TwitchやYouTube、各種SNSを通じて爆発的に拡散され、それまでメタバースに関心や興味がなかった一般ユーザーまで巻き込み、2024年の年末時点でXのフォロワー数が30万人を突破するほどの、注目度と人気の高さになりました。
YouTubeで今も見れる動画の中では「VRChatで仲良くなった謎の生命体と、夏休みを過ごすスタンミじゃぱん【VRChat】」が私のお気に入りです。メタバースの世界で出会ったばかりの初心者と上級者、インフルエンサーと一般人(一般宇宙人)。異なる属性を持っていますが、そういったことは関係なく、一緒にゲームで遊んだり、綺麗なワールドを見に行ったり、語り合ったりする。こういった過ごし方ができるのがメタバースの世界です。
最初はお互いに探り探りの部分もありました。でも、この世界ならあっという間に仲良くなれる。それは個人のコミュニケーション能力の高さとも言えるかもしれません。ただ私は、これにはメタバースという世界の仕組みが大きく影響していると思っています。現実とは異なる見た目、年齢や性別、肩書き、そんなものはすべて関係なく、絆を作れる。それがこの世界の魅力のひとつなのだと私は思います。
振り返ってみると、「メタバース」という言葉が地上波やWebメディアで大きく取り上げられた際にもユーザーの広がりが見られました。今回のスタンミさんの配信をきっかけに、メタバースに遊びに来る人が増えたのは、たしかにインフルエンサーとしての拡散力が背景にあったでしょう。ただ、それ以上に「メタバースを満喫し、実際に楽しんでいる姿」をありのままに発信したことが、これまでVRChatやメタバースに興味がなかった視聴者に、その魅力がダイレクトに伝わったのだと思います。
データを見ても、その影響は明らかです。下記のグラフは「[JP]Tutorial world」と「ポピー横丁-Poppy Street-」における訪問回数の前日比伸び率(%)の推移を表したグラフです。
このグラフからわかるように、8月は訪問回数が一気に増加していることが確認できます。この急増はスタンミさんのVRChat配信のタイミングと一致します。一時期ほどの割合ではありませんが、いまでも「スタンミさんの配信を見て来た」というユーザーに出会うことがあるという話も聞きます。
「メタバースを広めたい」という住民は多くいます。ですが、大きなネックになるのが「メタバースの魅力は外から眺めているだけではなかなか伝わりづらい」ことです。そして、実際に中に入ってみても“メタバースの遊び方のお作法”がわからないと、体験はむしろマイナスの印象を与えることもあります。
私自身も最初はそうでした。初代「HTC Vive」を購入したときに、勇気を出して「VRChat」の世界に飛び込んだのです。しかし、その時に目の前に広がっていたのはグロテスクなアバターや多言語が飛び交う混沌とした世界。日本語話者も少なく、場違いな感覚に襲われ、そこから数年、ログインすることはありませんでした。
ですが、別のタイミングで「cluster」というメタバースに飛び込んでみたところ、その印象は大きく変わりました。この世界には、想像を超える多様な人々が集まり、それぞれが自由に過ごし、イベントや集会、ゲームワールドで遊ぶなど、外からでは見えない楽しみが詰まっている世界でした。
誰もが最初からその魅力をすぐに理解できるわけではありません。筆者もこの連載を通じてメタバースの楽しさを発信してきましたが、「百聞は一見に如かず」だとも思っています。ある程度の遊び方がわかった上で、実際に体験することで、その魅力がより一層感じられると思っています。
2025年、メタバースの新たな波を探る
では、メタバースにとって、2025年はどんな年になるのでしょうか。
昨年のインフルエンサーによる情報発信は、メタバースに対する認知度や興味を一気に押し上げました。個人的にはその流れが続いて欲しいという気持ちと、新たなムーブメントが起きてほしいという想いがあります。
スタンミさんのように外から中に遊びに来てくれるインフルエンサーだけでなく、中から外に情報を発信するインフルエンサーの数や力が今まで以上に増すかも知れません。もしかしたら、AIなどの技術革新や、新しいHMD(ヘッドマウントディスプレイ)などのハード面の進化により、また新たな波を引き起こす可能性もあります。
どんな未来が待っているのかはまだわかりません。ですが、私もメタバースの住民であり、情報発信者の1人として、その変化をいち早くキャッチし、届けていきたいと考えています。
なぜならば、私自身がこれまでメタバースに飛び込んでその魅力を体験してきたように、多くの人にこの世界に触れてその魅力を体験してみてほしいと願っているからです。
2025年もメタバースはさらに進化を続けるはずです。この記事を読んでくださった皆さんと一緒に、その変化を追いかけていけたら嬉しいです。
著者プロフィール:咲文でんこ(さきふみでんこ)
ライター/VTuber。得意分野はビデオゲーム全般だが、メタバースやAI関連の記事も積極的に執筆中。ライター業以外にもVTuberとしての活動や、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJとしての顔もあり、肩書きが混雑してきたのが最近の悩み。
・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/