でんこと旅するメタバースの世界

メタバースプラットフォームの普及には「始めやすさ」と「続けやすさ」がカギ

「Cluster Conference 2023 in Summer」を通して感じたこと

 この連載では「メタバース」という、現実とは異なるもう1つの素敵な世界について、メタバースライターである私、でんこがその魅力や楽しみ方などをお届けします。ぜひ私と一緒に新たな世界へ旅立ってみませんか。
「Cluster Conference 2023 in Summer」が開催されました!

 こんにちは、でんこです。先日、メタバースプラットフォーム「cluster」において、clusterの未来について語る「Cluster Conference 2023 in Summer」が開催されました。

 「Cluster Conference」は、clusterのアップデートや新機能、今後の展望について紹介される年次カンファレンスです。今回のカンファレンス「2023 in Summer」では、クラスター・代表取締役CEO 加藤直人氏、そしてプロダクトマネージャーのとみね氏、いかり氏、うば氏から「てざわり」、「つながり」、「はじまり」という3つの軸で、今後のclusterがどのように発展していくのか、どんな思いで開発していくのかが語られました。

 今回は、clusterが目指す今後、そしてプラットフォームとしての「メタバース」の今後について、私なりに考えてみました。

はじめやすく、続けやすい環境を作ることが「メタバース」には必要

 「Cluster Conference 2023 in Summer」では、今後の実装予定の新機能が発表されました。

 開催からすでに時間が経過したこともあり、一つ一つの新機能については、配信のアーカイブを見ていただければと思うのですが、今回の発表で個人的に強く感じたことは「これはclusterの触り心地やプレイ感覚を改善するアップデートである」という点です。

 言い換えるなら、それは「メタバースで何をすればよいかわからない、どう続ければよいのかわからない」を改善することです。

Cluster Conference 2023 in Summer

 私自身、clusterプレイ歴がそろそろ3年目に入ろうとしており、clusterのUIや使い心地をはじめ、clusterでどんなことができて、どんな楽しみ方ができるかといったことを、肌で感じて理解している方だと思っています。

 しかし「これからclusterを始めてみよう、メタバースというものに触れてみよう」と考えた新規の参加者にとってはどうでしょうか。clusterの世界ではできることは、想像以上にたくさんあります。

 いろいろなワールドを探検してもいいし、コミュニティに参加してコミュニケーションを取ったり、イベントを開催したり、参加してもいい。自分だけのアバターやワールドを作ることだってできます。非常に自由度の高い世界ですが、逆に「何をすればよいかわからない」というのが現実だと思います。

 今回の発表は、そんな「何をすればよいかわからない、どう続ければよいのかわからない」を改善する点が注目すべきポイントになります。

今回のカンファレンスは「てざわり」「つながり」「はじまり」の3つの軸で今後のアップデートが発表されました

 具体的に見ていきましょう。プロダクトマネージャーのいかり氏が発表した「てざわり」という項目では、いかに快適に「cluster」が体験できるかということがフィーチャーされました。

 特に印象的だったのは新しいメインメニューです。下記の画像はすでにリニューアル後のUIですが、画面の中心にいま使っているアバターが表示され、左部分にはよく使用する[アバター]、[アクセサリー]、[フレンド]というボタンが並びます。これにより、よく使うボタンは直感的かつ非常に使いやすくなりました。

大きく変わったメインメニュー。直感的で使いやすいものになりました

 続いて、がとみね氏から発表があった「つながり」です。「つながり」に関しては、先日リリースされたばかりの「写真フィード」が印象的です。

 この機能は、clusterアプリの中でX(旧Twitter)のような遊びができるものです。clusterの中で撮影したスクリーンショットと、そこにつけたコメントがフィードのように流れていきます。

 友達がどのようにclusterを遊んでいるかがわかりますし、ワールドやイベントの雰囲気がわかるのも利点です。まだ投稿にコメントをしたりすることはできず、「いいね」のリアクションができるのみですが、それでも十分に楽しい機能です。現在はモバイル版のアプリしか対応していないのですが、暇な時間はついついリロードして見たくなる機能です。

 clusterはもちろんですが、VRChatやNeosVR、バーチャルキャストといったメタバースプラットフォームでは、その世界の中でスクリーンショットを撮影して遊ぶという文化があります。「写真フィード」はその文化をより遊びやすくした機能といえます。

みんなでスクリーンショットを撮影して共有できる「写真フィード」機能。フレンドがどのように遊んでいるかを知り、共通の話題にもなります

 そして、うば氏が発表した「はじまり」も大事な取り上げるべきポイントです。チュートリアル的な機能である「clusterツアー」が大きな追加要素だと感じましたが、個人的には「ビギナーシステム」がとても素敵だと感じました。

 「ビギナーシステム」は「clusterを始めたばかり、もしくは徐々に慣れていっているプレイヤーのアイコンに、それぞれマークがつく」という機能です。いわゆる初心者マークでしょうか。狙いは初心者の方に話すきっかけを作りたい、ウェルカムな雰囲気を作りたい、というところにあるそうです。

 この機能はとてもありがたいものだと思いました。というのも、私はclusterの中でコミュニケーションを取る場所、具体的にはバーチャルなバーで、バーテンダーのロールプレイをするという遊びをしています。

 もちろん、何年もclusterをプレイしている人もいますが、インストールしたばかりの方が遊びに来ることも珍しくありません。そのときに初心者マークがついていると話題を振りやすいのです。そうして少しでもコミュニケーションをとる楽しさを知ってもらい、また遊びに来てもらえると、それ以上に嬉しいことはありません。

始めたばかりのプレイヤーにマークが表示される「ビギナーシステム」。この機能は大きな変化だと感じました

 今回のカンファレンスで発表された内容を振り返ってみると、「初心者やこれからclusterに触れるというユーザー」の方を向いたアップデートだと感じました。

 昨年も「Cluster Conference」が開催されたわけですが、そのときは機能拡張など、既存のclusterユーザーが喜ぶものばかりでした。昨年と比較すると、今回はプレイの始めやすさ、そしてプレイの続けやすさに重きを置いたアップデートだといえるでしょう。

 最後に、プロダクトマネージャーのとみね氏はこう語ります。

 「『cluster』というプロダクトは数年にわたって多くのコア機能と要素を追加し、多くの人々に楽しんでいただいていると思います。ですが、新しいユーザーが「cluster」に興味を持って継続的に使い続けるというユーザーシナリオがまだ完全ではないと感じています。現在はこのシナリオをよりスムーズにするための新しい機能や要素を開発しています」

 プレイし始めた人が続けやすい環境を作るというのは、今後の普及に向けて、王道かつ重要な戦略だと改めて考えさせられました。これはclusterやメタバースに限った話ではなく、プラットフォームサービスはどんなことができるかがとても重要ですが、“そこにどれだけ多くの人がいるか”も重要なことなのです。

著者プロフィール:でんこ

バーチャルに活動の場を移したゲームライター。得意分野はビデオゲーム全般だが、最近はメタバースへの関心が強い。
ライターとしてさまざまなメディアで執筆する一方、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJなどの活動を通して、メタバースの魅力を多くの人に伝えるべく活動中。

・著者Webサイト:https://note.com/denpa_is_crazy/

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