Windows新標準アプリ徹底解説

Windows 11の「メディア プレーヤー」はデザイン性と実用性を兼ね備えたアプリとしての一歩を踏み出す

基本機能は抑えており、クラシックな「WMP」の置き換えも視野に入ってきた

Windows 11の「Windows メディア プレーヤー」アプリ

 Windows 11で刷新されたインボックス(OS同梱)アプリを紹介する本連載。今回は、メディア管理・再生ソフト「Windows メディア プレーヤー」を紹介する。[スタート]画面では「メディア プレーヤー」と表記されているので、本稿ではそう呼ぶことにする。

 Windows 11の「メディア プレーヤー」は古くからある「Windows Media Player」(WMP)と直接の関係はなく、むしろWindows 10に搭載されていた「Groove ミュージック」アプリの後継だ。当時主流であったフラットデザインで一から構築されており、同社の音楽サービス「Groove Music Pass」のクライアントアプリとしての役割も果たしていたが、同社の音楽配信事業が頓挫すると、「確かにモダンでオシャレだが、WMPに比べると機能不足なメディアプレイヤー」という微妙な立ち位置になってしまい、利用も振るわなかった。意外にことに音楽CDや動画ファイルの再生にも対応していない。

Windows 10の「Groove ミュージック」アプリ

 かといって、いまさら「WMP」に戻ることもできないだろう。「WMP」のデザイン設計は古く、近年増えてきた高解像度モニター(高DPI環境)、タッチデバイスへの対応が弱い。ダークモードにも対応していない。

古くからある「Windows Media Player」(WMP)はさすがに古臭くなってきた

デザインと機能面でのテコ入れを図ったWindows 11の「メディア プレーヤー」

 そこで、Windows 11では「Groove ミュージック」を継承しつつ、デザインと機能面でのテコ入れが行われた。動画や音楽といったローカルのマルチメディアコンテンツを楽しめることに改めてフォーカスされている印象だ。

 まず、デザイン面ではアルバムアートやアーティストの画像をふんだんに用いたリッチなエクスペリエンスが実装された。もちろん、コンテンツにそういったメタデータがあることが前提だが、データがそろっていればなかなか迫力のあるデザインとなる。再生ビューとライブラリビューの切り替えは、左下のエリアをクリックすることで行える。

基本機能を充実させたWindows 11の「メディア プレーヤー」。アルバムアートやアーティストの画像をふんだんに用いたリッチなエクスペリエンスもよい
ファイルのメタデータに含まれていることの多いアルバムアートはともかく、アーティストの画像があるかどうかは状況次第。洋楽の場合はアーティスト名をカタカナからアルファベット表記に変えるだけで出てくることもあるので試してみよう。ただし、編集画面が表示されなかったり、保存に失敗するのはいただけない
再生ビューとライブラリビューの切り替えは左下のエリアをクリック
コンパクトモードも搭載。しかし、少し大き目かもしれない
OS標準アプリだけあって、ジャンプリストをはじめとするシェル機能の対応は一通り行われている

 なお、「メディア プレーヤー」の既定アクセントカラーは「熱情」などを意味する専用色の「Zest」となっており、他のアプリとは趣を異にしている。これはこれでメディアプレーヤーっぽくてよいが、システム全体の統一感を重視してOS標準のアクセントカラーに合わせることも可能。好みに応じてカスタマイズするとよいだろう。

「メディア プレーヤー」の既定アクセントカラーは「熱情」などを意味する専用色の「Zest」。これはOS共通のアクセントカラーに変更することも可能

 また、アクセシビリティも重視されている。たとえば「メモ帳」の回でも紹介した「アクセス キー」は「メディア プレーヤー」アプリでもサポートされており、[Alt]キーを押すと現れるニーモックを選ぶだけで、マウスレスでの操作が可能。ハンディキャップを抱えたユーザーにとっても操作しやすいよう配慮されている。これはマウスが壊れた場合にも役に立つ。

[Alt]キーを押すと現れるニーモック。アクセシビリティにも注力されている

 機能面ではイコライザーの追加、再生速度の調整、デバイスへのキャスト、10秒前・30秒後へのスキップなどが追加された。動画の再生も可能で、「Groove ミュージック」時代に比べれば格段に実用的なアプリとなっている。

 ただし機能の拡充に関してはまだ発展途上で、CDの再生やビデオの明るさ・コントラスト調整といった機能がプレビュー版Windows 11でテストされている段階だ。

 このプレビュー版ではユーザーインターフェイスの改善やライブラリのパフォーマンス向上も図られており、期待の持てるクオリティになっている。

CDの再生
アーティストビューでアルバムのサムネイル・曲リストの切り替えが可能に
グリッドアイテムにマウスホバーすると現れる「クイックアクション」
再生ビューに[ビデオの機能強化](Video enhancements)というダイアログが追加され、明るさやコントラストをスライダーで調整できるように
詳細オプションを有効化すると彩度や色合いも調節できる
クラシックな「WMP」もまだ利用可能
Windows 11の「メディア プレーヤー」はかなり改善されつつあるが、いまだクラシックな「WMP」を完全に置き換えるには至っていない。そのため、「WMP」も引き続きオプション機能として引き続き提供されている。[スタート]画面(コントロール パネル)の「Windows ツール」フォルダーから利用できる。不要な場合は「設定」アプリの[アプリ]-[オプション機能]セクションでアンインストールすることも可能。80MB程度にしかならないが、ストレージの空き容量を増やすことができる。
不要な場合は「設定」アプリの[アプリ]-[オプション機能]セクションでアンインストールすることも可能