週末ゲーム

第570回

第6回“WOLF RPGエディター コンテスト”お勧め作品ピックアップ

「ロードライト・フェイス」「Wish Disproportionate」「召喚指揮候補生」の3本を紹介

第6回“WOLF RPGエディター コンテスト”結果発表ページ

 フリーのRPG制作ソフト「WOLF RPGエディター」で制作したゲームのコンテスト“WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)”。第6回となる今回は75作品が集まり、23日に結果発表が行われ幕を閉じた。

 コンテストの参加作品は現在もダウンロードでき、すべて無償でプレイ可能。総合グランプリのほか、斬新さや物語性といった部門別のランキングも掲載されている。さらに、すべての作品にプレイヤーから寄せられたコメントが掲載されているので、コンテスト期間中にはプレイする暇がなかった、という人もこれらを参考に、自分好みの作品を探してみてはいかがだろうか。

 今回の“週末ゲーム”では、その中から個性的なRPG作品を3本ピックアップしご紹介する。

アイテムの使い方がすべてを分けるノンフィールドRPG「ロードライト・フェイス」

「ロードライト・フェイス」

 アイテムを駆使して戦いを生き延び、先へ先へと進んでいくRPG。移動は前進のみでフィールドはなく、ゲームの進行具合は目標地点までの残り歩数で表現されるという、いわゆるノンフィールドRPGの体裁をとる作品だ。

 武器や魔法も含め、すべてのアイテムの使用回数が限られているのが特徴。攻撃アイテムの最後の一撃は攻撃力が2倍となる上、成長に必要なポイントである“Faith”が手に入る。一方、使用回数の残っているアイテムを“捧げる”ことでLP(体力)が全快する。

 レベルアップではLPの最大値のみが上がるため、他のパラメーターを上げるにはアイテムを使い切ることが必須。一方、敵の攻撃は激しくLPは常にカツカツで、アイテムは貴重な回復手段でもある。ローグライクRPGのようなアイテムやり繰りの要素に、限られたアイテムを成長と回復のどちらに使うのかというジレンマが加わり、先を見越したアイテム戦略が重要となってくるわけだ。

攻撃に関わるパラメーターは筋力、魔力、敏捷の3種類で、どれを伸ばしていくのかも戦略……なのだが、伸ばしたパラメーターを活かせるアイテムが手に入るとは限らないのも悩ましいところ
アイテムを捧げることでLPを回復。使用回数の残りに関係なくLPは全快するのでなるべく使い切ってから捧げるのが得だが、そんな余裕もなくLPが尽きかける事の方が多い
最大LPと引き替えにアイテムを購入。商品はランダムで、運が悪いと攻撃アイテムが1つもないこともある

 アイテムは前進しているとランダムに入手するほか、定期的に現れる商店へランダムに並ぶものから購入もできるが、このとき引き替えにするのはなんと最大LP。ここでも、攻撃手段がなくなれば詰むが、LPが低すぎても死ぬというジレンマが発生する。

 あらゆる選択にはトレードオフの関係があり、“無難な手”というのはそうそう存在しないのが悩ましくも楽しいところ。アイテムの使い方を軸に、RPGにおける意志決定のゲーム性を凝縮した濃密なプレイ感の作品だ。頭を使う要素がアイテム回りに集約されており、全体的には操作性を含めシンプルな作りでサクサク遊べるのも好ましい。

 1プレイは30分程度と短いが、入手できるFaithが増加する聖職者や敵からアイテムを盗める盗賊といった7種類の職業と、イージー、ハード、ベリーハード、インポッシブルと4つの難易度が用意されており、これらの組み合わせでプレイ感ががらっと変わるため何度でもプレイできる作品となっている。

 高難易度ほどアイテムの引き運に依存する面が強くなるが、これに対抗する仕組みとして、ゲームオーバー時やゲームクリア時に持っていたアイテムをストックしておき、ゲーム開始時に好きなものを持ち込むことが可能。インポッシブルでは文字通り“無理ゲー”感が漂うが、これを“ぼくのかんがえた最強アイテムセット”で切り抜けるのは格別の達成感がある。

 とはいえ筆者の個人的なプレイ体験としては、アイテム持ち込みなしのハード~ベリーハードが一番面白く感じた。選んだ職業や上げたパラメーターに合った武器がなかなか手に入らない、LPをケチったら武器の残りが僅か、逆に思い切ってLPはたいて武器を買ったら直後に同じものを拾う……などなど、戦略ミスや不運からのリカバーも含めて楽しむには丁度いい難易度という印象だ。

 もちろんこれは一例で、プレイスタイルや好みの職業など、プレイヤーの数だけ遊び方がある。RPGが好きな人、とくに『最近時間がなくて長編はプレイできないけどRPGのエッセンスを味わいたい』という人やローグライクファンなら是非プレイしてみてほしい作品だ。

以前のプレイで得たアイテムをストックしておき、新規プレイ時に持ち込める。持ち込んでもストックからは消えないので、プレイを繰り返すことでストックは充実していく
シナリオは最小限だが画面作りや音楽も含め、荒廃した地を思わせる独特の雰囲気を醸し出している
「ロードライト・フェイス」
【著作権者】
ud 氏
【対応OS】
Windows 2000/XP/Vista/7
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.11(14/08/03)

カッコイイポーズを決めろ!そして宇宙へ……「Wish Disproportionate」

「Wish Disproportionate」

 自らの根城とするため、ある洞窟に訪れた魔族“マオウ”が主人公の短編RPG。戦闘はターン制のコマンド選択型で、コマンドはランダムに表示される3つから1つを選ぶ方式だが、その内容は“カッコイイポーズ”“そして宇宙へ……”など意味不明なものばかり。そして画面の右上には、“洞窟崩壊率”と“殺る気”という謎の数字が表示される。

 試行錯誤で戦闘システムを掴んでいくのが楽しい作品なので詳細は割愛するが、各種行動で上下するこの数値の制御がバトルのポイント。そのほかコマンドごとにさまざまなギミックも用意され、一風変わった戦闘が体験できる。

コマンド“カッコイイポーズ”では、マオウが格好いいポーズを取る。マントがなびくアニメーションがとても格好いい
コマンド“そして、宇宙へ……”を選択すると戦いの舞台は宇宙へ
本作にHP回復手段がない理由が明らかに……?

 シナリオもネタ満載。マオウは洞窟で出会った幽霊の“イデア”と共に洞窟の奥へと進んでいくが、中二病かつ大言壮語のマオウと突っ込み役のイデアによるテンポのよい掛け合いが楽しく、イデアは戦闘中すら突っ込みを欠かさない(というか突っ込みしかしない)。効率だけを考えるなら戦闘の難易度は低いが、仕込まれた小ネタを見たくてついつい無駄な行動を取ってしまう。

 一方でゲームを進めるとイデアの過去や、魔族は願いによって生まれる存在という設定を軸としたハードな展開も。30分ほどのプレイ時間にネタとシリアスが詰まった、短編らしいキレのある作品となっている。突き抜けた中二病が熱さへと転じ、システムが物語を演出するラストバトルは大きな見所だ。

「Wish Disproportionate」
【著作権者】
sunori 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.2

戦闘・交流・物語すべてが充実、キャラクターが魅力のRPG+ADV「召喚指揮候補生」

「召喚指揮候補生」

 とあるファンタジー世界の帝国を舞台に、さまざまな戦闘技能をもつ部隊員を戦場に召喚・指揮する“召喚指揮官”を目指す少年“デルタ”を主人公とした作品。敵を倒して任務をクリアしていくノンフィールドRPGに、さまざまなキャラクターと交流しつつシナリオを読み進めていくADVの要素が加わり、プレイ時間は約10時間とボリュームのある作品に仕上がっている。

 戦闘は剣・魔・戦・支という4つの属性を組み合わせた攻撃または防御スキルを1つずつ持つ部隊員により部隊を編成し、毎ターン部隊員を1人選んで攻撃や防御を行うというもの。敵も同じように4属性を組み合わせた行動を取り、攻撃なら敵と属性が1つも一致しなければ成功、防御なら逆に1つでも一致すれば成功となる。

 言葉にすると少々ややこしいが、イメージとしては攻撃側は敵の隙を突き、防御側は敵の攻撃を待ち受けるといったところだろうか。いずれにしても敵の行動を先読みすることが重要で、『腕を振り上げて襲いかかる』『熱気と共に息を吸い込む』などと敵の準備動作が表示されるので、これをもとに敵の行動を予測していく。

 基本的には防御側が有利なルールだが、任務にはターン数の制限があり、防御してばかりではクリアできない。さらには一度選んだ部隊員は一定ターンのあいだ再召喚できないため、4つの属性と攻撃・防御のバランスなど、任務の内容に応じた部隊の編成が重要になってくる。

判定に成功すると敵の行動を阻害し、こちらの行動だけが発動する。うまくやれば完封勝利も可能だ
4つの属性と攻撃・防御のバランスを考えて部隊を編成。加えて常時発動(パッシブ)スキルもある

 部隊の編成はADVパートにも関わるもので、出撃させた部隊員は友好度が上昇し、一定以上で交流イベントを見ることが可能となる仕組み。交流イベントは部隊員ごとに複数回用意され、交流を深めた部隊員は固有の特殊スキル“拝承技”が解放されるなど、さまざま部隊員を出撃させ、交流を深めていくのが戦略上も重要となる。部隊員は少しずつ増えて最終的に38人もの大所帯となるが、みな強烈にキャラが立っており、使って・交流していくうちにきっとお気に入りのキャラが見つかることだろう。

38人の部隊員それぞれに複数回の交流イベントが用意される。部隊員同士の関係が垣間見える場面も
“拝承技”の効果は強力な攻撃から特定属性の威力強化、ライフ回復、敵をダウンさせるなどさまざま

 メインシナリオの面でも、なし崩し的にデルタの居候となる留学生の少女“フェルミ”や同期の友人“ゼータ”とのドタバタあり、指揮官候補という立場ならではの葛藤ありと質・量ともに濃い内容。デルタ達が属する魔導院と元老院の軋轢や、魔族などさまざまな種族が暮らす帝国の国家事情、他国との緊張関係など、練り込まれた世界観が徐々に垣間見えてくるのも興味深い。ウィットに富み、ときにシニカルな台詞回しも本作独特の味となっている。

本作のヒロイン“フェルミ”
魔導院と元老院の軋轢など、帝国の抱えるさまざまな事情がデルタ達の行く末にも影響を与えていく

 中盤以降は物語が加速し、それと呼応するように戦闘も“同じ準備動作で異なる攻撃を仕掛けてくる”などより複雑化。パターンの見極めや、リスクを取って攻撃するか防御で様子を見るかの状況判断といった、緊張感のある駆け引きを存分に楽しめる。

 キャラクターごとに用意されたグラフィックやオリジナルのBGM、SEやカットインなどの演出も含め全体的なクオリティの高さが光る作品。戦闘・交流・物語どれひとつ取っても充実しており、さらにはこれらが絡み合い、培ってきた絆が力となる終盤の展開は圧巻。じっくり腰を据えてプレイしてほしい一作だ。

「召喚指揮候補生」
【著作権者】
川崎部
【対応OS】
(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.01a(14/08/17)

(中村 友次郎)