働く人のための「DaVinci Resolve」
第4回
「DaVinci Resolve」で映像と同時に録音した音声を同期! 切り出しの基本も解説
2023年5月11日 06:55
本連載では、無料で使える高機能な動画編集ツール「DaVinci Resolve」の使い方をお伝えしています。
自分で作る羽目になった人に捧ぐ「DaVinci Resolve」講座4回目です。前回宿題となっていたのが、映像ど同時に録音された音を合体させて編集しやすくする、ということでした。
普通に考えれば、タイムラインの映像トラックに映像を配置し、続いて音声トラックに別に録音したオーディオを配置し、再生してみてどれぐらいズレているかを耳で聞いて、少しずつ位置合わせをしていくといった作業になります。
ですがそんな苦労をしなくて済むよう、「DaVinci Resolve」には便利な機能があります。「オーディオの自動同期」という機能です。
今回の解説で使用した素材をサンプルとしてご用意しました。ご利用ください。
※Webブラウザーによってダウンロードがブロックされる場合がありますが、右クリックメニューからファイルの保存を行い、警告が表示されても[継続]などの項目を選択して保存してください。
別機材で録音した音声を映像と自動で同期する
現行バージョンでは[エディット]ページでしかこの機能を使えませんので、画面下のアイコンをクリックして[エディット]ページに切り替えます。
- 素材を読み込んだメディアプール内の空いているところを右クリックして、メニューを表示させます。
- メニュー内の[オーディオを自動同期]から、[波形に基づいてトラックを追加]を選択します。
- しばらくスキャンが行なわれたのち、同期できなかったファイルが表示されます。[OK]を押してダイアログを閉じます。
手順としてはこれだけなんですが、この作業で一体何がおきているのかを順に解説します。「オーディオを自動同期」は、同じタイミングで録音されたオーディオファイルを映像とくっつけたい時に使用する機能です。
機能の中には「タイムコードに基づいて〜」といったグループがあります。タイムコードとは一種の時間情報で、1つのジェネレータから発生したタイムコードデータを分岐して、複数の機材に入力しておきます。複数のカメラやレコーダが同時に同じシーンを収録した場合でも、それぞれのファイルのタイムコードの時間さえ合わせれば、複数のファイルのタイミングを合わせる事ができます。
これにはまずタイムコードが入力できる機材がなければできませんので、スマートフォンなどの民生機では対応できません。
もう1つ「波形に基づいて〜」というグループがあります。こちらは、音声波形を使ってタイミングを合わせる機能です。複数のカメラヤレコーダに同じ音声が入っていればいいので、スマートフォンなどでも簡単に利用できます。
この機能は、[波形に基づいて同期]と[波形に基づいてトラックを追加]と2パターンあります。[波形に基づいて同期]は、同じタイミングで収録された音声を自動で探し出して、映像ファイルに入っている音声部分に差し替えてしまうという機能です。映像側の音は絶対に使わない、この機能を信用している、というのであれば、こちらを選んでもいいでしょう。
もう1つ[波形に基づいてトラックを追加]は、映像側の音声も残しながら、同じタイミングの音声ファイルを別トラックに追加してくれます。この機能のメリットは、映像の音も残りますので、本当に音声とタイミングがあっているのかを確認できるというところです。
なお、最後に探してみたけどどこにも同期する相手がいなかったクリップが表示されます。これは映像だけ撮った、音だけ撮ったということは当然あり得るので、気にする必要はありません。
試しに「シーン2」という動画ファイルがどうなっているか、タイムラインに置いて見てみましょう。通常の映像ファイルでは、1つの映像に対して音声トラックが1つしかありません。ですが、[波形に基づいてトラックを追加]という機能を使った後では、1つの映像に対して音声トラックが2つに増えます。
A1というトラックが、映像と同時に集音されたカメラマイクの音、A2というトラックが、別途集音された音声のみのトラックの音です。このまま再生すると、2つのトラックの音が同時に再生されますので、音がピッタリ同期しているか、確認する事ができます。同期がズレている場合は、同じ音が遅れて聞こえる、エコーのように聞こえるはずです。
あるいは音声波形を見比べてもいいかもしれません。同じタイミングのところが膨らんでいる形になっていれば、同期していると考える事ができます。
今回は敢えて同期しているかどうかの確認のために[波形に基づいてトラックを追加]のほうを選びましたが、映像に入っているほうの音は使いませんので、A1トラックのところにある[M]ボタンをクリックして赤くしておきます。「M」はミュート(Mute)の意味で、このタイムライン上ではA1トラックの音はOFFになります。
1カット目を編集してみよう
下準備ができたところで、早速編集に入っていきます。前回の「ファストレビュー」で撮影された映像素材を確認した結果、以下のようにグループ分けできる事がわかりました。音声素材はもう映像素材の中に取り込まれているので、カウントしないことにします。
- シーン1:映像のみ、音声のみ
- シーン2:メイン動画
- シーン3-1:サブ1〜サブ5動画
- シーン3-2:メイン動画、サブ動画
- シーン3-3:メイン動画、サブ1〜2動画
- シーン3-4:メイン動画、サブ動画
- シーン3-5:メイン動画、サブ動画
- シーン4:メイン動画
これらの映像を、シーン順ごとにプラモデル的に組み立てていけば、1本の動画になりそうだということがわかります。まずはシーン2のメイン動画を使って、編集の基礎を学びます。
画面下のアイコンをクリックして、[カット]ページに切り替えます。先ほどテスト的にシーン2のメイン動画をタイムラインに乗せましたので、「Timeline1」というタイムラインが自動的にできあがっています。先ほど乗せたシーン2のメイン動画は、いったん削除します。クリップの削除は、削除したいクリップを選択して、[Delete]キーです。
次にメディアプールの中から、「シーン2」の動画をダブルクリックします。右側の[ビューワー]画面に、動画の内容が表示されます。画面の下に、時間軸とともに音声波形が表示されています。音があるところが山になり、音がないところが平地になります。
まずはこのシーン2の使うところを指定します。
- [ビューワー]画面の下の再生ボタンをクリックして、動画を先頭から再生します。ここで、どの部分が使うべき部分なのか、だいたいのあたりをつけます。
- 音声トラック部分にある赤い再生バーを掴んでドラッグし、使いたい部分の始めのポイントを探します。
- 使いたいポイントに赤い再生バーを置いて、[I]キーを押します。これで動画の使いたい部分の開始ポイント(IN点)が指定されたことになります。
- 使い終わりのあたりに赤い再生バーをドラッグし、終わりのポイントを探します。
- 終わり部分に赤い再生バーを置いて、[O]キーを押します。これで動画の使いたい部分の終わりポイント(OUT点)が指定されたことになります。
- 中央部分にあるアイコンのうち、[末尾に追加]をクリックします。選択された範囲だけが、タイムラインに追加されます。
ここで、IN点やOUT点を指定するのに便利なキーボードショートカットをまとめておきます。
動作 | キーボードショートカット |
映像の再生・停止 | スペースキー |
1フレームずつ移動 | 左・右カーソルキー |
1秒ずつ移動 | [Shift]+左・右カーソルキー |
先頭・末尾へ移動 | 上・下カーソルキー |
では切り出した動画のほうを確認してみます。[カット]ページのタイムラインは、2段に分かれています。上の細い部分は、常にタイムライン全体を表わします。下の広い部分は、再生ポイントを中心にした拡大図のようなものだと思ってください。大雑把に動かすときは上を、細かい作業をするときは下のタイムラインを使用します。
タイムラインのエリアをどこでもいいので1度クリックすると、[ビューワー]画面がタイムラインの映像に切り替わります。タイムラインの大きな赤いバーは、タイムライン上での現在位置を示しています。これをドラッグすることで、見たい場所を移動することができます。
開始や終了のタイミング(IN点・OUT点)を調整したい場合には、まずタイムライン上の始点・終点あたりにマウスカーソルを移動しましょう。矢印アイコンの形が変わるポイントがあると思いますので、そこでマウスボタンを押したまま左右に動かすと、使用ポイントを伸ばしたり縮めたりできます。
具体的にどこまでを使うかは、次のカットを繋いでみることでまた変わることがあります。今はまだ、だいたいのところが指定されていればOKです。
タイムラインの再生中に使えるキーボードショートカットは、上記の素材映像を扱うときと同じですが、上・下カーソルキーだけは、編集ポイントへの移動に変わります。
次回は複数のカットを編集して、全体の流れを作ってみましょう。