正式リリース間近! 新機能・改善盛りだくさんの「Windows 10 May 2020 Update」

第4回

「DirectX 12 Ultimate」がゲームを革新! ゲームバー、タスクマネージャーにも強化

「Windows 10 May 2020 Update(バージョン 2004)」

 「Windows 10 May 2020 Update(バージョン 2004)」の新機能と改善点を紹介する本特集。第4回となる本稿では、ゲーム関連の改善に焦点を当てる。また、OSの標準ツールで導入された新機能についても触れる。

Windows PCとXbox Series Xを統一する「DirectX 12 Ultimate」

 ゲーム関連における「May 2020 Update」の目玉は、なんといっても「DirectX 12 Ultimate」だろう。Windows PCだけでなく、先日発表された次世代ゲーム機“Xbox Series X”のグラフィックスプラットフォームを統一し、ゲームエコシステム全体の拡大を図る。

 「DirectX 12 Ultimate」では、以下の4つの技術が採用される。

 まず1つ目が、リアルタイムレイトレーシングだ。現実世界における光の振る舞いをそれっぽくイミテート(真似る)のではなく、ゲームの実行中にシミュレーションすることで、大域照明や反射、陰などをリアルで美しく描写する。リアルタイムでないレイトレーシングは映画などでも用いられてきたが、それがとうとうゲームの中でリアルタイムに用いられるようになったわけだ。

 最近ではリアルタイムレイトレーシング対応のWindows 10向け「Minecraft」がベータ版としてリリースされるなど、対応タイトルも増えつつある。

リアルタイムレイトレーシング対応のWindows 10向け「Minecraft」がベータ版

 「DirectX」におけるリアルタイムレイトレーシングAPIは「DirectX Raytracing(DXR)」と呼ばれており、その初版“Tier 1.0”(DXR 1.0)は「May 2019 Update」から利用できる。「May 2020 Update」ではそのアップデートである“Tier 1.1”(DXR 1.1)が実装されており、それが「DirectX 12 Ultimate」の要件となっている。とはいえ、「DXR 1.0」対応のハードウェアであればドライバーのアップデートで利用可能だ。

 2つ目は、「May 2019 Update」で実装された可変レートシェーディング(Variable Rate Shading:VRS)。目に見える部分をより繊細に描き、注視することがない周辺部分は繊細さを落とすなどして、シェーダーのピクセル解像度を状況に応じて調節することにより、見た目に影響を与えず描画を高速化する。

「シヴィライゼーション 5」の画面半分だけに可変レートシェーディングを利用。片方はハードウェアレンダリングが14%高速化しているが、パッと見ただけでは品質に違いはない

 3つ目のメッシュシェーダー(Mesh Shaders)は、Turing世代のNVIDIA製GPU(Quadro RTX/GeForce RTX 20)に追加された新しいプログラマブルシェーダー。オブジェクトの遠近からどれだけ詳細に描画するか(LoD)を計算したり、遠過ぎたり隠れて見えないオブジェクトを除外するカリング計算を担当するタスクシェーダーと組み合わせることで、レンダリングしなければならないオブジェクトを減らしつつ、そのディテールをできるだけ高く保つことにより、パフォーマンスと画質を大幅に向上させる。

現行のレンダリングパイプラインと、タスクシェーダー+メッシュシェーダーで効率化された新しいレンダリングパイプライン
Asteroids Mesh Shaders Demo

 最後のサンプラーフィードバック(Sampler Feedback)は、テクスチャサンプラーがどのように使用されているかをゲームエンジンが追跡し、フィードバックを得られるようにする仕組みで、「May 2020 Update」からサポートされる。フィードバックをもとに品質をスマートに調整して、GPU負荷を下げるという点では2つ目の可変レートシェーディングとよく似ているが、レンダリングの効率や画質の向上にも応用できる。

 「DirectX 12 Ultimate」の対応ハードウェアは、現在のところNVIDIAの“GeForce RTX 20”シリーズのみ。AMDのGPUも、“Xbox Series X”と“PlayStation 5”で採用が発表されている次世代アーキテクチャー“RDNA 2”でフルサポートする。

「ゲーム バー」も強化! FPSグラフや“Xbox”の実績も確認可能に

強化された「ゲーム バー」

 一方、ユーザーインターフェイス面でもゲーム対応の強化が図られている。その筆頭が「ゲーム バー」だ。

 Windows 10の“ゲーム バー”は、[Windows]+[G]キーで呼び出せるオーバーレイ画面。登場当初はさまざまな機能がビルトインされていたが、現在は“ウィジェット”で機能を拡張するスタイルとなっており、初期設定ではプレイ画面のキャプチャー、オーディオの調整、パフォーマンスメーター、“Xbox”ソーシャルネットワークが有効となっている。キャプチャーしたスクリーンショットやムービーを閲覧したり、SNSへ投稿するギャラリーウィジェットや、ゲーム中に音楽ストリーミングサービス“Spotify”を楽しめるウィジェットなども同梱されている。

 「20H1」では、パフォーマンスウィジェットにFPSカウンターが追加された。これまではCPU/GPUの利用率やメモリ使用量といった「タスク マネージャー」でも確認できる情報しかチェックできなかったが、最新版ではFPSもグラフ表示できる。

パフォーマンスウィジェットにFPSカウンターが追加

 また、“Xbox”の実績を表示するアチーブメントウィジェットも導入された。フィルタリング機能も備わっており、いろんな角度からゲームの実績を振り返ることができる。

“Xbox”の実績を表示するアチーブメントウィジェットも導入

 なお、これらの機能は「20H1」のテスト中に導入されたものだが、「May 2019 Update」より前のバージョンのWindowsでも体験可能。ストアアプリの自動更新を有効化していれば、利用できるようになっているはずだ。

地味だけど……「タスク マネージャー」ではGPU温度が表示されるように

 さらに「タスク マネージャー」にもちょっとした改善が盛り込まれている。「タスク マネージャー」を起動して[詳細]表示に切り替え、[パフォーマンス]タブへアクセスしてみよう。GPUの欄に温度が小さく表示されているはずだ。画面をGPUに切り替えれば、“共有 GPU メモリ”欄の下にもGPU温度が表示されているのがわかる。

「タスク マネージャー」ではGPU温度が表示されるように

 この機能は今のところ、ディスクリート、つまり外付けのグラフィックスカードを搭載している場合のみ利用可能。また、「WDDM 2.4」以降をサポートしたグラフィックスドライバーが必要になるので注意したい。温度表示は今のところ摂氏のみの対応で、華氏表示はできないが、日本のユーザーには影響はない。

 そのほかにも、「May 2019 Update」の「タスク マネージャー」にはディスクタイプを表示する機能が追加された。ディスクドライブがHDDかSSDかが簡単にわかる。