特集

「Windows 10 April 2018 Update」の新機能と改善を探る ~タイムラインや近接共有機能など

過去の作業の続きをすばやく再開したり、近くにいる人と簡単にファイルを共有可能に

Windows 10 バージョン 1803 Build 17134.5

 「Windows 10」の新しい機能アップデート「Windows 10 April 2018 Update」(RS4、バージョン 1803)が正式にリリースされた。リリース直前のトラブルで若干延期されたものの、どうにか4月中の一般公開にこぎつけた格好だ。

 そこで本特集では2回に分けて「Windows 10 April 2018 Update」に搭載される新機能と改善を紹介していきたい。今回は、なかでも注目を集めている機能をピックアップして紹介していくこととする。なお、本稿は「Windows 10 Insider Preview」Build 17134.5を使って動作を確認している。

過去の作業や他デバイスで行っていた作業をすばやく再開できる“タイムライン”

過去の作業や他デバイスで行っていた作業をすばやく再開できる“タイムライン”
アクティビティの同期を有効化すると最大30日までさかのぼれるようになるほか、他のデバイスでアクティビティを再開できるようになる

 この機能アップデートには多くの機能が盛り込まれているが、なかでももっとも注目されているのが“タイムライン(Timeline)”機能だろう。

 “タイムライン(Timeline)”は、タスク切り替え機能“タスク ビュー”を拡張して、過去の“アクティビティ”や他のデバイスで行っていた“アクティビティ”への切り替えを実現したものだ。

 “アクティビティ(活動)”というのは、従来からある“タスク(作業)”という概念を拡張したもので、プロセスやウィンドウだけでなく、それが扱っているコンテンツ――閲覧中のWebページや編集していたドキュメント、再生していた音楽プレイリストなど――をも包括している。“タイムライン”ではそれぞれの“アクティビティ”が“カード”として表現されており、クリックすると“アクティビティ”がデスクトップに復元される。

 過去の“ウィンドウ(タスク)”を呼び出したい場合、真に切り替えたいのはウィンドウではなく、それが扱っていたコンテンツであろう。また、モバイル環境を含めたマルチプラットフォーム対応を考えた場合、そもそもモバイルアプリにはウィンドウという概念がない。スマートフォンの小さな画面を占有し、何らかのコンテンツを観たり、聴いたり、編集したりしているわけだ。切り替えの対象が“ウィンドウ(タスク)”ではなく“アクティビティ”になるのも自然の成り行きといえる。

 「Windows 10 April 2018 Update」のタスク切り替え機能には“時間軸”が追加されており、現在開いているウィンドウ(タスク)に加え、過去の“アクティビティ”へ切り替えられる。また、切り替え画面には同じ“Microsoft アカウント”にリンクした他のデバイスのコンテンツも表示される。時間とデバイスを超えて“アクティビティ”を切り替えられるというわけだ。

 また、画面右上には検索ボックスが用意されており、“アクティビティ”をキーボード検索することも可能。過去のコンテンツをも扱うことで、“タスク ビュー”に表示されるカードの量は飛躍的に増大している。日付だけでは“アクティビティ”を絞り切れない場合、キーワード検索機能は頼りになるはずだ。

“時間軸”を操作して過去のアクティビティへアクセス
検索ボックスでアクティビティをフィルタリング

 デスクトップアプリで“アクティビティ”に対応したものはまだ多くなく、そういったアプリはこれまで通り、基本的に“ウィンドウ”を切り替えることになるが、コンテンツを扱うアプリを中心に対応アプリは増えていくはずだ。

 “タイムライン”は過去にさかのぼれることばかりが注目されがちだが、ノートPCとデスクトップPCを使い分けてる、マルチデバイスユーザーにこそ便利な機能といえる。たとえば、外出先でノートPCを使い、帰宅してデスクトップPCに電源を入れると、パーソナルアシスタント“Cortana”がノートPCで行っていた“アクティビティ”を提示してくれる。[その他の活動]ボタンを押すと“タイムライン”に切り替わり、デバイスを問わず、やり掛けの作業を探し出してその続きを再開できる。

パーソナルアシスタント“Cortana”が他のPCで行っていた“アクティビティ”を提示
[その他の活動]ボタンを押すと“タイムライン”に切り替わる

【コラム】PCにちゃんと名前を付けよう

「設定」アプリの[システム]-[バージョン情報]セクション

 PCには“名前”を付けることができるが、これまでホームネットワークを組んだりしなければ、それを意識する必要性は低かった。「Windows 10」が勝手につけてくれたPC名をそのまま利用しているユーザーも少なくないのではないだろうか。

 しかし、複数のデバイスを管理して、“タイムライン”をはじめとするデバイスをまたいだ機能を使うようになると、そうはいかない。それぞれのPCに、きちんとわかりやすい名前を付けていないと、どれがどれだかわからなくなってしまう。

 「Windows 10」の場合は、「設定」アプリの[システム]-[バージョン情報]セクションなどでPC名を設定できる。これらの機能を使う前に、設定を見直しておきたい。なお、設定の反映にはOSの再起動が必要となっているので注意しよう。

ファイルやURLを簡単にBluetooth経由で送れる“近くの共有”

OSの[共有]コマンドから近くにあるデバイスへデータを送信

 ネットワーク関連でもう一つ注目したいのが、“近くの共有(Near Share、近距離共有)”機能だ。この機能を利用すると、指定したファイルやURLを、OSの[共有]コマンドを利用して、Bluetooth経由で他のPCへ簡単に送ることができる。

送信側:デバイスを選択してURLを送信
受信側:URLを受け取って「Microsoft Edge」で表示
ファイルの送受信も可能
ファイルの送受信には双方の「Windows 10」で[近距離共有]オプションを有効化しておく必要がある

 注意しなければならないのは、双方の「Windows 10」で[近距離共有]オプションを有効化しておく必要があること。共有先に相手のPCが現れない場合は、“アクション センター”を開いて[近距離共有]オプションを確認しよう。

【コラム】URLを共有する方法

 モバイル端末(iOS/Android)からPCへURLを送りたい場合は、モバイル版「Microsoft Edge」アプリや「Continue on PC」アプリが利用できる。また、前述の“タイムライン”機能もURLの共有に利用できる。

 ただし、これらは同じ“Microsoft アカウント”でデバイスがリンクされている必要がある。“近くの共有”にはそれが必要ないので、友人と情報を交換するといった用途に向いているだろう。

 また、写真の共有に関しては、現在「フォト」アプリで試験導入中の機能の利用も検討したい。

“非通知モード”の不満を解消してくれる“集中モード”

“非通知モード”の不満を解消してくれる“集中モード”

 以上、2つの機能は“Windows Insider Program”でも人気を集めた注目機能だが、筆者が個人的に気に入っているのは“集中モード(Quiet Time)”機能だ。

 通知がわずらわしいとき、従来の「Windows 10」では“非通知モード”を手動でONにするしかなかった。しかし、わざわざ“非通知モード”を有効化するのは面倒だし、“非通知モード”を解除するのを忘れると大事な通知を見逃してしまうのが難点だ。また、すべての通知を止めるのではなく、優先度の低い通知だけを止めるといった細かいカスタマイズも行えない。

 「Windows 10 April 2018 Update」の“集中モード”は、そういった不満を一掃してくれる便利機能だ。“優先順位”をカスタマイズして通知を受け取るアプリを限定したり、特定条件下で通知の抑制が行われるよう“自動規則”を設定することができる。たとえば、“自動規則”では以下のルールを指定することが可能だ。

  • 指定した時間帯
  • ディスプレイを複製しているとき(「PowerPoint」でプレゼンを行っている場合など)
  • ゲームをプレイしているとき
  • 自宅にいるとき

 また、“集中モード”で読み逃した通知のサマリーを表示する機能も備えている。

iOS 11で採用されたHEIFを標準でサポート

HEIF形式のサポートを試すには「フォト」アプリからプレビュープログラムに参加する必要がある(執筆時現在)

 そのほかにも、「Windows 10 April 2018 Update」では“HEIF(High Efficiency Image File Format)”形式イメージの読み取りがサポートされた。

 HEIFはバーストモードなどで撮影した複数の画像、メタデータなどを単一のファイルにまとめることができるコンテナフォーマットで、Blu-rayなどでも採用されている高圧縮コーデック“HEVC”により、従来のJPEG形式よりもディスクスペースを節約することができる。最近「iOS 11」で採用されたこともあり、Windowsでもサポートを望む声が多く寄せられていた。

プライバシーコントロールの改善

 また、プライバシーコントロールでもいくつかの改善が盛り込まれている。OSをセットアップする際に現れるプライバシー設定画面に「Windows 10 April 2018 Update」では[Inking & Typing(手描き入力)]と[Find my device(デバイスを探す)]という新しい設定が新設され、有効・無効を切り替えられるようになっている。

OOBE(OSのセットアップ)のプライバシー設定に2つの新しいオプションが追加される
「設定」アプリの[プライバシー]セクション

 なお、これらの設定は、セットアップした後に変更することも可能。オプションはすべて「設定」アプリの[プライバシー]セクションにまとめられている。

 開発に役立てるためMicrosoftへ送られる診断データをユーザー側で把握できるようになったのも大きな改善だ。本バージョンでは「診断データ ビューアー」という新しいアプリが利用可能で、「設定」アプリの[プライバシー]-[診断&フィードバック]セクションから有効化・導入できるようになっている。このアプリを利用すれば、Microsoftへ送られるデータを確認・検索したり、フィードバックのために送信することができる。

「設定」アプリの[プライバシー]-[診断&フィードバック]セクション
「診断データ ビューアー」アプリ

 さて、次回は今回紹介しきれなかったこまごまとした改善を紹介する。楽しみにしていてほしい。