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2024年の「年賀状じまい」プランも「ゆるじまい」がおススメ

8年間で年賀状の発行枚数は半減。徐々にSNSへの移行を目指しましょう

単にやりとりを止めてしまうのでなく、徐々にSNSへ移行する「ゆるじまい」がおすすめ

徐々に減りゆく年賀状発行枚数は、ピーク時の3分の1に

 今年も年賀状の季節がやってきました。……やってきましたが、早く年賀はがきをポストに投函しなければという焦りを感じる人は、年々少なくなっているかもしれません。

 日本郵便が毎年公表しているお年玉つき郵便はがきの発行枚数を辿ると、2003年の44億4780万枚(寄付金つき郵便はがきを含む、以下同)をピークに、おおよそ減少傾向が続いています。2023年の発行枚数は約16億8491万枚で、3分の1まで落ちています。8年前の2016年から比べても半減しており、底を打つ気配はまだ感じられません。

お年玉つき郵便はがきの発行枚数の推移(日本郵便の公表値から筆者作成)

日本郵便も「LINE」に移行? 「スマートねんが」今年も提供

 その背景にはメールやチャット、SNSなどの新たなコミュニケーションツールの台頭があると言われています。日本郵便も時勢を鑑みてか、2021年末から「LINE」で年賀状が送れる年末年始限定サービス「スマートねんが」を提供しています。

 年賀状の作成から送付、受け取りと保管まで全て「LINE」上で完結するというもので、この年末年始も12月1日から提供を始めました。合計45種類の文面デザインが選べ、2024年の干支である辰をモチーフにした動くスタンプなども使えます。使用料は送付先の数を問わず、基本プランで320円(税込)となります。

「スマートねんが」のトップ画面

 NTTドコモのモバイル社会研究所が毎年実施している60~70代の男女を対象にしたアンケートによると、2023年には「LINE」の使用率が初めてメールを抜いてトップになりました。割合では76%に及び、Facebook(12%)やX(旧Twitter:8%)を大幅に上回っています。

 年賀状作りに慣れ親しんできた世代でも4人に3人が「LINE」を使うようになっている今、『はがきを投函しないなら「LINE」で』という日本郵政の戦略は理に適っているといえるでしょう。

モバイル社会研究所が2018年1月から毎年実施している「シニア調査」の「メール・SNS利用率(関東)」の調査結果

 SNSでコミュニケーションするパイプができているのであれば、「スマートねんが」を含めて、「LINE」やメール、SNSなどで年始の挨拶を交わすスタイルに切り替えるのは有効だと思います。

 ただ、そこで問題になるのは、「LINE」やメールアドレス、ほかのSNSの使用を知らない知人との繋がりではないでしょうか。

シニアのスマホ所有率は急増中、2022年には70代でも6割に

 住所以外の連絡先を知らない間柄であれば、そこまで密な交流がないケースが多いと思われます。「LINE」への移行を機に関係を断ってしまっても、普段の交際において大きな損失を感じることは少ないかもしれません。

 しかし、それは人間関係というかけがえのない財産を、自ら切断することにほかなりません。

 そもそも年賀はがきは、コミュニケーションを保つ最後の手段になることが多いツールです。少し面倒でも、1年に1回だけは連絡することで保たれていた数々の人間関係を、ツールの盛衰に引っ張られて失ってしまうのは、とても勿体ないことです。

 ですから、昨年も提唱しましたが、やはり「年賀状じまい」は数年スパンでゆるやかに行うのがベターではないかと思います。年賀状を断つ前に、とりあえずは文面で年賀状じまいの意向とともにこちらのLINE IDやメールアドレス、SNSのIDなどを伝えて、オンラインでの繋がりができるように持ちかけたりして、相手のアクションを2~3年は待つ、連絡手段をスパッと切り替えるのではなく、ゆるく交代させていくという、いわば、年賀状の「ゆるじまい」です。

 なお、1年動きがなかったからといって、諦めるのは早計です。「LINE」を使うためにほぼ必須アイテムといえるスマホの所有率は右肩上がりを続けています。「1年前は「LINE」もSNSも使う機会がなかったけれど、今はインストール済み」という人が少なからずいるので、相手の動向をゆっくりと見守る余裕を持つことも大切でしょう。

 とりわけ70代のスマホ所有率は2021年の53.1%から2022年には7.5ポイントアップの60.6%になるなど、伸びが顕著です。80歳以上の人も2021年の19.2%から27.3%にアップしており、これまで年賀状をやりとりしていた高齢の方々のデジタル環境が変わっている可能性が、それなりに高く存在します。

2017年から2022年にかけてのスマートフォンの所有率。総務省「通信利用動向調査」から筆者作成

 年賀はがきにLINE IDなどの個人情報を記載することに不安を覚える人もいるでしょう。その場合は、「今度、帰省するから会おう」などとリアルで会う約束をしてみるのが良いかもしれません。コロナ禍への警戒がまだ強かった1年前と比べると、直接的な交流も随分とやりやすくなったはずです。

 コミュニケーション手段の変化は縁切りの機会にも、旧交を温める機会にもなり得ます。はがきや「LINE」、メール、SNSなどの手段に交流関係を左右されるのではなく、交流を豊かにするために利用する。それが本来的な道具との付き合い方だと思います。

 仕事納めや学業納めが迫り、どんどん予定が埋まっていく時期ですが、できるだけ手間をかけずに、数年先の人間関係を損なわないように年を越していきましょう。