山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
雑誌を読むなら「iPad」一択? コストが気になるなら外部モニターという裏ワザも
2021年10月21日 06:55
電子書籍に向いた本のジャンルのひとつに雑誌がある。電子ならばバックナンバーが増えても保管コストが掛からず、また紙の雑誌のように処分の手間もかからない。さらに読み放題サービスと契約すれば、何百冊というラインアップの中から好きな記事だけをつまみ食いで読めてしまう。
また電子本来のメリットである、小さな文字であってもスムーズに拡大縮小が行なえるという利点があるのはもちろんのこと、手でページを抑えなくても開いたままの状態をキープできるのも、隠れたメリットと言える。電子で雑誌を読むようになって以来、紙の雑誌はほとんど読まなくなった人も多いのではないだろうか。
今回は、電子書籍でそんな雑誌を快適に読むにはどのような方法があるかをチェックしていこう。
コストの問題さえなければ選択肢は実質一択?
雑誌を読むためのデバイスに求められるポイントは、おそらく誰に聞いても共通の回答が返ってくるだろう。それは「画面サイズが大きいこと」だ。
A4やB5といった判型の雑誌を、なるべく現物に近いサイズで表示するためには、とにかく大きな画面が必要になる。というよりも、いま雑誌を読むためのデバイスを探している人の多くは、すでにスマホなどで電子書籍の経験があり、雑誌だけはそれらの画面サイズではどうにもならないことから、専用デバイスを探すに至った人が多いのではないだろうか。
こうした条件下で、現在もっとも雑誌を読むのに向いたデバイスといえば「12.9インチiPad Pro」が筆頭に挙げられる。なにせ雑誌とほぼ同じサイズでありながら700gを切るデバイスは、そうそうあるものではない。ネックとなるのは10万円を超える価格だが、そこさえクリアできれば、雑誌を原寸大で表示できることにおいて、右に出る者はいないだろう。
また12.9インチiPad Proは解像度も264ppiと高いため、単ページ表示はもちろん、見開きで表示するのも不可能ではない。細かい注釈は見づらく感じることもあるが、少なくとも文字が潰れることはい。どうしても気になるようならば、見開き表示をあきらめて単ページ表示に切り替えればよいし、ダブルタップで一時的に拡大することもできる。
ちなみにiPhoneやiPadは、自社の電子書籍ストア(「Apple Books」)を除いて、電子書籍アプリ上で新規のコンテンツを買うことができず、毎回ブラウザを起動してサイトから購入しなければいけない制約がある。
しかし「dマガジン」や「楽天マガジン」など、定額制の雑誌読み放題サービスであれば、毎回の購入手続きを必要とせず、アプリ上で次々と雑誌をダウンロードして読んでいける。電子書籍におけるiOSデバイスの使いづらさのハンデがないという意味では、これは大きなプラスだろう。
画面サイズを妥協するならば他の選択肢も
12.9インチiPad Proは10万円を超える予算を必要とするため、さすがにそこまでは手を出せないという人もいるだろう。その場合は、画面サイズを妥協してデバイスを探すことになる。その場合の有力な候補となるのは、39,800円から購入できる、エントリーモデルの「iPad」だろう。
こちらは画面サイズが10.2型と、12.9インチiPad Proで見開き表示した場合の1ページ分の画面サイズしかないが、細かい注釈を除けばギリギリ実用レベルだ。ダブルタップでの拡大縮小を併用するにしても、挙動はスムーズで、実用上の問題はまったくない。なによりコストは前述の12.9インチiPad Proの3分の1程度で済む。
ただし前述の12.9インチiPad Proの場合、2ページを横に並べた見開き表示で読んでいて、サイズが小さいと感じれば単ページ表示に切り替えて読めば済むのに対して、このiPadなど10型クラスのタブレットは最初から単ページで読むため、小さくて読みづらいと感じても、できることといえば、ダブルタップで部分的にズームすることくらいしかない。
もちろんスマホなどに比べると圧倒的に大画面とはいえ、もともとがA4やB5に近いサイズの雑誌を見やすく表示するには、10型クラスでは不十分であることは、認識しておく必要がある。本来であればこのエントリーグレードでiPadの大画面版にあたるモデルがあればよいのだが、残念ながら現行のラインナップには存在しない。
ちなみに同じ10型前後であれば、Androidタブレットでも候補がないわけではないが、Androidの多くは画面の縦横比が16:10とワイドであるため、ページが幅に合わせて縮小されてしまい、縦横比が4:3のiPadに比べると2周りほど小さくなる。そのぶん、前述のような制約がさらに厳しくなるので注意したい。
それ以外の選択肢はどうだろうか。例えばWindowsのタブレット、もしくは2in1デバイスであれば、「Surface Pro」シリーズは画面サイズは12.9インチiPad Proに匹敵するなど協力なライバルだが、雑誌を読むための電子書籍アプリの多くはWindows向けにリリースされておらず、ブラウザビューアで読まざるを得ないため、ダウンロードができないというデメリットがある。同じ理由で没入感もいまいちだ。
それならば「Lenovo Yoga Tab 13」など、Androidタブレットのほうがアプリが使えて安心だが、こちらは重量が800gを超えるなど、また別の問題があるので悩ましい。雑誌を電子で読むニーズはそこそこあってもいまいち盛り上がらないのは、こうした決め手になるデバイスがないからというのは、理由として少なからずありそうだ。
目からウロコ? 大画面ディスプレイ×スマホという選択肢
考え方を変えて、PCの画面で読むというのはどうだろうか。例えば今回紙の雑誌のサンプルとして使用している「DOS/V POWER REPORT」の場合、サイズは210×278mmなので、横に2ページ並べると原寸での表示には420×278mmが必要になる。アスペクト比16:9のディスプレイならば、21.3型(47×27cm)以上の製品ならば、原寸での表示が可能ということになる。
ただしPCのディスプレイは、タブレットに比べるとやや離れた位置から見ることになるので、できれば27型以上、もし老眼が入っているならば32型程度を目安としたい。最近のPC用ディスプレイは価格下落が著しく、27型クラスでも3万円台から購入できるので、前述の12.9インチiPad Proより安く済み、かつ通常のPC作業にも使えるので、投資としては悪くない。
ところで、PC用ディスプレイが使えるのならばぜひ試してみてほしいのが、手元のスマホやタブレットで表示している雑誌を、これらディスプレイにミラーリング表示して読むというワザだ。
多くのスマホやタブレットには、画面を外部ディスプレイにミラーリング表示できる機能が搭載されている。この機能を用いれば、手元のスマホやタブレットで表示している雑誌を、そのままディスプレイに表示できる。
これは一見すると、PCに接続した大画面ディスプレイ上で電子書籍を表示しているのと変わらないが、実際には大きな違いがある。それは、手元のスマホやタブレットをそのまま使って、ページめくりが行えることだ。ふだんと同じ左右スワイプの操作でページがめくれるので、PC上でマウス操作でページをめくるのと比べても、操作は圧倒的に自然だ。
両者の接続は、上記の例のようにUSB Type-Cケーブル1本で接続できる場合もあれば、AirPlayのようにワイヤレスで飛ばせる場合もあるなど、機種によりさまざまだ。ワイヤレスならば、離れたところに寝転がって、手元のスマホで操作が行える。またPC用ディスプレイ以外に大画面テレビやプロジェクターに出力できるなど、自由度は高い。
どちらにしても言えるのは、ディスプレイに雑誌のページを表示するのは変わらなくても、マウスでクリックしてページをめくるのと、スマホを使ってふだんと同様にスワイプでページをめくるのとでは、快適さがまったく違うということだ。
これが小説やコミックなど、小さな画面で問題なく読めるものであればそれほど恩恵はないが、大きな画面を必要とする雑誌では効果は大きい。これらは手元にHDMIケーブルやUSB Type-Cケーブル、さらにそれらを変換するアダプタがあれば、コストを抑えて実現できてしまう場合もあるので、うまく実現できる組み合わせがないか、探してチャレンジしてみてほしい。