山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
防水カバーとサヨナラして快適にお風呂読書! 「Kindle Oasis」と「Kobo Libra H2O」
2021年9月13日 06:55
入浴中に読書をする人は意外と多いようだ。紙の本であればふやけてしまい、読み終わったあとに本棚に並べられなくなるが、防水機能を備えた端末ならばそうした問題もない。Wi-Fiさえつながっていれば、どの本を浴室に持ち込もうと考える必要もなく、浴室の中から本は選び放題、さらには買い放題だ。
今回はこうした、浴室内での利用に向いた電子書籍端末を紹介する。また後半では、防水規格についての基礎知識も併せて触れる。
浴室での読書に向いた電子書籍端末はこれだ
最初に紹介するのはAmazonの電子書籍端末「Kindle Oasis」だ。E Ink電子ペーパーを採用した読書端末「Kindle」のラインナップで最上位にあたる本製品は、7型のスクリーンを備え、タップやスワイプに加えて、画面の横にある2つのボタンを使って、ページめくりを行える。
ボディサイズはスマホを横に2台並べた程度、タブレットで言うと「iPad mini」よりもわずかに小さい程度だが、重量は「iPad mini」の300.5gに対してわずか188gと、長時間手に持っても負担になりにくいことが特徴だ。
もうひとつの候補は楽天の電子書籍端末「Kobo Libra H2O」だ。楽天KoboがラインナップするE Ink電子ペーパー端末のひとつで、画面サイズは前述の「Kindle Oasis」と同じ7型、こちらもやはり画面の横にボタンを搭載し、ボタンでのページめくりも行える。
重量はこちらも192gと、同等サイズのタブレットなどと比べて軽量で、長時間の利用に向いている。写真のホワイト以外にブラックモデルも用意されており、好みに合わせて選べるのもプラスだ。
この両製品はいずれもE Ink電子ペーパーを搭載しており、表示はモノクロである代わりに目に優しく、バッテリーも週単位で持つので、毎日充電する必要はない。また両製品ともフロントライトを搭載しているため、浴室内のように読書ライトが使えない環境であっても、快適な読書が楽しめる。
実際にどの程度、水がかかっても大丈夫なのだろうか。この両製品については、いずれもIPX8等級の防水機能を備えており、水深2mの真水に60分沈めても有害な影響がないとされているため、水がかかった程度で故障するような心配はまったくない。
もちろん、水滴が画面についたまま使おうとすると、タップがまれに誤反応することはあるが、画面についた水滴を手で軽く拭きさえすれば問題なく使えるし、タッチスクリーンに触れずにボタンを使ってのページめくりにも対応する。浴室内でも安心して利用可能だ。
スマホやタブレットではなく専用端末をおすすめする2つの理由
ところで最近では、多くのスマホやタブレットが防水性能を備えており、上記のような専用の防水端末をわざわざ用意しなくとも、浴室内で読書を楽しむことは可能だ。そうした中、敢えて専用端末をお勧めするのは、大きく分けて2つの理由がある。
ひとつは、ボタンを使ってのページめくりに対応することだ。スマホやタブレットの場合、電子書籍のページをめくるにはタッチスクリーンでの操作が必要になるが、水滴がついたままだとどうしても誤反応が発生する。たまに水滴が飛ぶくらいなら拭えばよいが、ひんぱんに水滴が飛ぶようであれば、画面を拭いても拭いても追いつかない。
その点、今回紹介した2つの端末であれば、ボタンによるページめくりが行えるので、画面に多少の水滴がついていても、無視して操作を続行できる。結果的に、使っていてもイライラさせられることがなく、読書に没頭できるというわけだ。
そしてもうひとつは、万一壊れた場合のリスクだ。いかに防水対応とはいえ、電子機器である以上、一般的な環境で使用している場合に比べると、故障の危険は伴う。例えば、USBポートに入り込んだ水滴をきちんと拭き取らないままケーブルを差し込むなどの行為は、故障に直結しがちだ。
これが単価の高いスマホやタブレットだと、金銭的なダメージも大きいし、汎用的な端末だけに、ひとたび壊れると読書以外の用途への影響も大きい。その点、今回紹介したような専用端末は、読書専用ということもあって万一の場合もほかへの影響が少なく、単価的にもダメージは比較的小さい。バッテリーが長寿命なので、故障につながりやすい充電の回数そのものを減らせる利点もある。
とはいえ今回の2製品はいずれも2万円台と、読書端末としては高価な部類に入るので、さらにリスクを減らしたければ、「Kindle Paperwhite」のような、防水機能は備えつつも1万円台で入手できる端末を選ぶ手もある。前述のページめくりボタンがないなど機能は控えめだが、リスクとコストを重視するならばありうる選択肢だろう。
デバイスの防水機能について知っておきたい基礎知識
ところでこうした端末につきものの「IPX8」や「IP68」などといった防水防塵の等級については、その意味が正しく理解されていないことも多い。最低限知っておくべき点を挙げて、本稿の締めとしよう。
まず知っておくべきなのは、今回の製品が対応している「IPX8」をはじめとした防水規格は、すべて「真水」かつ「常温」が前提ということだ。いかに防水だからといっても海水は厳禁だし、プールも塩素を含むのであまり好ましくない。浴室内でも、石鹸やシャンプーがかかるのは避けたいし、高温になるサウナもリスクが高い。
ところがこうした製品の使用例写真では、海と砂浜をバックに読書を楽しんでいるなど、優良誤認にあたる写真が掲載されていることがある。今回紹介している端末の過去のモデルでも、発表の時点でそうした写真を載せていて、外部の指摘で引っ込めた例もあるほどだ。仮にこうした写真を見かけても、「真水」「常温」以外はNGであることは肝に銘じておきたい。
また防水の等級はさまざまで、多少濡れても大丈夫というレベルから、短時間ならば水中でも耐えうるレベルまで幅広い。今回紹介している製品の「IPX8」は、IECないしはJISが定める8段階の防水等級の中ではもっとも安全性が高いが(水深2m・最大60分耐久)、あくまで生活防水の延長線上にあるもので、水中で使えるわけではない。「どれだけ持つか試してみよう」などと、おかしなチャレンジはしないのが肝要だ。
さらに、水が侵入しやすいUSBポートは、使い終わったら入念に水滴を拭き取るのが常識だ。これらは製品ページなどにも注意事項として記載されているのだが、それらをよく読まず、ポートに水が残ったまま充電ケーブルを差し込んだりすると、容易に故障につながる。今回の2製品はいずれもバッテリーが数週間持つので、毎日充電する必要があるスマホなどと比べるとリスクも低いが、充電にあたっては十分気をつけたい。
ちなみに、これらUSBポートに水滴が浸入するのが気になるのであれば、ポートの形状に合わせた保護カバーを差し込んでおく方法もある。防水のための製品ではないので過信は禁物だが、シャワーが勢いよくかかるようなケースでは、浸入防止には有用だ。
特に今回紹介した2製品は、防水スマホのようにUSBポートが軟質のカバーで覆われず、露出したままになるタイプなので、使用後はティッシュなどで水を吸い出す作業が必須になる。こうしたカバーがあれば、それらの手間から解放される(くどいようだが過信は禁物だ)。数百円程度で売られているので、気になる人は調達しておくとよいだろう。