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Adobe、「Creative Cloud」の大規模アップデートを発表 ~iPad版「Photoshop」をお披露目

「Project Gemini」「Project Aero」「Premiere Rush」などの新顔も、既存アプリも強化

 米Adobe Systemsは10月15日(日本時間)、ロサンゼルスで開催中のカンファレンス“Adobe MAX”で、「Adobe Creative Cloud」の大規模アップデートを発表した。新しいフォントサービス“Adobe Fonts”が統合されたほか、新しい「Creative Cloud」ファミリーや既存アプリのアップデートが一斉に発表されている。

 なお、新しい「Adobe Creative Cloud」では対応OSの変更が行われているので注意。Windows 7は引き続きサポートされるが、Windows 8.1/Mac OS 10.11には対応していない。

iPad版「Photoshop CC」が登場、デスクトップ版にも多くの新機能が追加

 まず、iPad向けの「Photoshop CC」がプレビュー公開された。iPad版「Photoshop CC」はデスクトップ版とほぼ同等の機能を備えており、iPadだけで画像処理を完結させることも、デスクトップ版と連携させることもできる。

iPad版「Photoshop CC」がプレビュー、2019年にリリースへ

 一方、20回目のメジャーアップデートを迎えるデスクトップ版「Photoshop CC」にも多くの機能改善が投入された。たとえばコンテンツに応じた塗りつぶし機能が“Adobe Sensei”のパワーを借りてリフレッシュ。ライブプレビューパネルで結果を確認しながらピクセル選択範囲の追加と削除が行えるようになった。新しいフレームツールや、放射状・曼荼羅などを新たにサポートされたシンメトリーペインティングが正式に導入された。ホーム画面も刷新され、「Photoshop」の使い方を学んだり、アセットを開くことができる。

コンテンツに応じた塗りつぶしワークスペース

 日本語版のユーザーにとっては、マッチフォント機能で日本語フォントが検索できるようになったのもうれしい改善だ、マッチフォントは画像内の選択範囲に含まれる文字を解析する機能で、AI技術“Adobe Sensei”がシステムにインストールされているフォントや“Adobe Fonts”に収録されている膨大なフォントライブラリから類似のフォントを検出・表示してくれる。

iPadに導入されたもう一つの新アプリ「Project Gemini」

 「Photoshop CC」に加え、iPad向けにリリースされたもう一つの新しい「Creative Cloud」ファミリーが、「Project Gemini」アプリだ。「Project Gemini」アプリはiPadに特化したドロー&ペイントアプリで、「Adobe Photoshop」のパワフルなブラシエンジンをベースに開発されている。

「Project Gemini」

 「Project Gemini」は現在のところプレビュー版として提供される。正式リリースはiPad版「Photoshop CC」と同じ2019年になる見込み。iPad以外のデバイスへの展開も計画されている。

マルチデバイス対応のARオーサリングツール「Project Aero」

 3つ目のプレビュー製品「Project Aero」は、デザイナーによるARコンテンツの制作を支援する。現在のARコンテンツには特別な学習やトレーニングが必要で、まだ身近なものであるとは言えない。ARコンテンツが普及するための鍵は、既存のクリエイターにもなじみの深いスキルをそのまま応用できるようになるのことだろう。

「Project Aero」

 そこで提案されているのが、「Project Aero」だ。その内容は野心的なもので、「Photoshop CC」や「Dimension CC」で制作したコンテンツのAR対応、プログラムの知識がなくてもシンプルなドラッグ&ドロップ操作で使えるイマーシブデザインのツール(デスクトップ・モバイル両対応)、“Adobe Sensei”をベースに光源やテクスチャー、動き、空間の認識などを行うクラウドベースのARサービスを組み合わせたものとなる。

 現在はまだプライベートベータの段階だが、AdobeのARにかける意気込みを感じさせるプロジェクトといえるだろう。

まったく新しい動画制作アプリ「Adobe Premiere Rush」

 「Adobe Premiere Rush CC」も今回より新たに「Creative Cloud」ファミリーに加わった製品で、動画の撮影から直感的な編集、カラーおよびオーディオ調整、モーショングラフィックスの活用、SNSへのシームレスな公開までをカバーした動画制作アプリだ。

「Adobe Premiere Rush」

 最大の特徴は、スマートフォン、タブレット、デスクトップで一貫性のあるユーザーエクスペリエンスを提供していること。デスクトップで制作した作品を移動中に手直しするといった使い方もできる。SNS共有のためのプリセットも充実しており、ワンクリックでコンテンツをそれぞれのSNSに自動的に最適化して公開できるのも魅力だ。

 本アプリは、「Premiere Pro」「After Effects」「Audition」などと共通の技術基盤の上に構築されており、実力は遜色ない。それでも不足を感じる場合は、「Premiere Rush」のネイティブプロジェクトを「Premiere Pro」で仕上げることも可能だ。

そのほかの改善

「Illustrator CC」

 新しいカラーブレンド機能で、より自然で表現力の高いグラデーションを作成可能に。“Adobe Sensei”がコンテンツに応じたトリミングや“パペットワープ”のピンをサジェストしてくれる。

「InDesign CC」

 「InDesign CC 2019」で作成されたレビュー済みPDFの注釈を読み込んで管理可能。ドキュメントのサイズを変更したとき、ワンクリックでテキストとグラフィックを自動的に調整できるようになったほか、直感的なプロパティパネル、カラーフォントのサポートなどが導入された。“Adobe Sensei”の機械学習を活用して、内容を認識した画像のサイズ変更・位置合わせも行える。

「Adobe XD CC」

 音声コントロールとスピーチ機能をサポート(日本語対応は近日予定)。開発者コミュニティが作成した多彩なプラグインを使用して、「XD」の機能を拡張できる。「Illustrator」ファイルの読み込みや「After Effects」への書き出しをサポートするなど、アプリ間連携も改善。

「Lightroom CC」

 “Adobe Sensei”テクノロジーで顔を自動で検出。特定の人物が写っている写真を簡単に見つけることができるようになった。「Adobe Portfolio」との統合が図られたほか、Macでは“Apple Photos”ライブラリの読み込みがサポートされている。

「Lightroom Classic CC」

 HDRパノラマ写真を短時間で作成。被写界深度のマスキング、かすみ除去機能の強化、光量不足の写真で発生する紫の色かぶりの軽減といった改善が盛り込まれた。

「Premiere Pro CC」

 新しいノイズ除去スライダーとリバーブ除去スライダーでオーディオをクリーンアップ。“Lumetri”カラーツールで部分的なカラーグレーディングが行えるようになった。180 VRをサポートするイマーシブ動画の編集にも対応している。

「After Effects CC」

 パペットツールの強化、3Dコンポジションにおける深度パスの抽出、モーショングラフィックステンプレートの機能強化などが行われた。「Adobe Animate」および「Adobe XD 」との連携も強化されている。

「Dimension CC」

 サポートする3Dファイルフォーマットを拡充。複数のグラフィックレイヤーがサポートされたほか、レンダリングの高速化が図られた。「Illustrator」および「Photoshop」との連携も強化されており、コピー&ペーストでコンテンツのやり取りが行える。