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Adobe、「Creative Cloud」の大規模アップデートを発表 ~“Adobe MAX 2020”

iPad版「Illustrator 1.0」やiPhone版「Fresco」が追加。既存製品にも多くの新機能

 米Adobeは10月20日(現地時間)、オンラインカンファレンス“Adobe MAX 2020”で「Adobe Creative Cloud」の大規模アップデートを発表した。iPad版「Illustrator 1.0」やiPhone版「Fresco」がラインナップに加わったほか、デスクトップ版「Photoshop 22.0」をはじめとする既存製品のアップデートが行われている。

強力なAI支援機能を追加した「Adobe Photoshop」

 デスクトップ版「Adobe Photoshop 22.0」では、同社のAIプラットフォーム「Adobe Sensei」を活用した新機能がいくつか導入された。

 たとえば写真の構図はピッタリなのに、あいにくの曇り空で被写体が映えないといった経験はないだろうか。ただの風景写真ならともかく、結婚式や入学式など、人生の節目となるイベントの写真がそれではがっかりだろう。

 しかし、最新版の「Photoshop」なら“空の置き換え”で曇り空を簡単に青空へ置き換えられる。夕焼けに変えたりするのもお手の物だ。

“空の置き換え”で曇り空を簡単に青空へ置き換え

 また、“ニューラルフィルター”も強力なAIによるレタッチ機能だ。スライダーを調整するだけでシーンに色を付けたり、画像の一部をズームインしたり、人の表情や年齢、視線、ポーズを変更できる。

スライダーを調整するだけで人の表情や年齢、視線、ポーズなどを変更できる“ニューラルフィルター”

 そのほかにも、「XD」や「Illustrator」(後述)に搭載されていたバージョン管理機能がデスクトップ版「Photoshop」で利用できるようになった。自動保存機能で保存された過去のバージョンにいつでも復帰できる。

 一方、昨年登場したiPad版「Photoshop」アプリもv2.0となり、熟成が図られた。作品を“Behance”コミュニティへブロードキャストしたり、検索ギャラリーで他のユーザーのライブストリームを探せるようになったのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で自宅での作業を強いられる状況下でスキルの磨きあいに役立つだろう。

iPad版「Photoshop」アプリ

iPad版が追加された「Adobe Illustrator」

 「Illustrator」の目玉は、待望のiPad対応だ。iPad版「Illustrator 1.0」にはコアのツールキットに加え、1万8,000ものフォント、放射状・グリッド・ミラーなどのリピートツールといった多くの新機能が搭載されている。

iPad版「Photoshop」アプリ(同社ブログより引用)

 v25.0に到達したデスクトップ版にも、新機能は多い。なかでも“オブジェクトの再配色”はデザインの印象を一新したい場合に便利。ワンクリックでコンテンツ全体のカラーテーマを変えることができる。

 また、クラウドドキュメントがサポートされたのもポイント。iPadで描いたコンテンツをデスクトップで仕上げるといった、デバイスを横断した作業をシームレスに行える。

iPhoneに対応した「Adobe Fresco」

 革新的なライブブラシにより、紙やキャンバスに描くような感覚で描画できる「Fresco」は、iPhoneをサポート。iPadやWindowsタブレットでお馴染みの機能が、iPhoneにも提供される。基本機能は無償で、今後プロ向けの有償機能が追加されていく予定だ。

iPhoneに対応した「Adobe Fresco」

 「Fresco」のプロジェクトはクラウドドキュメントとして保存されるため、デスクトップやモバイル、タブレットのいずれからも開くことが可能。ライブストリーミングにも対応している。

新機能“カラーグレーディング”を導入した「Adobe Lightroom」「Adobe Lightroom Classic」

 デスクトップ版「Adobe Lightroom 4.0」では3ウェイのカラーホイールが追加され、シャドウ・中間調・ハイライトのカラーコントロールを同時に行えるようになった。従来の明暗別色補正よりも詳細に色をコントロール可能で、写真を自在に補正できる。「Adobe Lightroom Classic 10.0」ではパフォーマンスの向上も図られている。

新機能“カラーグレーディング”。明暗別色補正を刷新

「Adobe Sensei」が字幕を作ってくれる「Adobe Premiere Pro」

 「Adobe Premiere Pro 14.5」でも、大幅なパフォーマンス強化が図られた。また、プレビュー版として“テキスト書き起し”を新搭載。ビデオの音声の書き起こしを自動化してキャプションや字幕を生成できる。

被写体をフレーム横断で追跡・切り抜き「Adobe After Effects」

 「Adobe After Effects 17.5」でも「Adobe Sensei」の技術が生かされている。新たに搭載された“ロトブラシ2”は、認識した被写体の境界をフレームを横断して追跡し、自動で切り抜きを行う。また、3Dデザインスペースも刷新されており、3Dでのナビゲーションとデザインがより効率的かつ迅速に行えるようになった。

“3D変形”機能が導入された「Adobe XD」

 ユーザーインターフェイスのデザインツール「Adobe XD」では“3D変形”機能が導入され、ユーザーエクスペリエンスデザインに奥行きと遠近感を追加できるようになった。

 「Creative Cloud」ライブラリも「XD」とより密接に統合され、より身近な存在になった。カラー、文字スタイル、コンポーネントなど、すべてのアセットが「XD」のライブラリパネルから直接利用できるようになる。このライブラリのAPIはサードパーティーに公開されているので、今後はより多くのツールと連携可能になるだろう。

「Adobe XD」に統合された「Creative Cloud」ライブラリ

デスクトップ版をプレビュー「Adobe Aero」

 ARコンテンツを作成できる「Adobe Aero」はiPhone/iPad向けとして出発したが、デスクトップ版も開発されることになった。現在はプレビューという扱いで、誰でも無償で試すことができる。

デスクトップ版「Adobe Aero」

「Adobe Creative Cloud」のトライアル期間がリセット、再試用が可能に

 そのほかにも、デザイナーとの共同を加速させる「InCopy」、台本から自動的に漫画の吹き出しやコマ割りを作成できる「ComicBlast」などがお披露目された。

 「Adobe Creative Cloud」のアプリは基本的に有償だが、今回の“Adobe MAX 2020”を機にトライアル期間がリセットされている。以前に試用版を使い、期限切れで使えなくなってしまったユーザーも、最新機能を再び体験することが可能だ。この措置は11月6日までの期間限定となるので、興味のあるユーザーは「Adobe Creative Cloud」をインストールしてみるとよいだろう。多くの脆弱性も修正されているので、既存のユーザーもアップデートを忘れないようにしたい。