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GPUアクセラレーションですみずみまで高速化した「paint.net 5.0」が正式版に

筆圧感知や埋め込みカラープロファイルにも対応

dotPDN、「paint.net 5.0」を正式公開

 米dotPDNは1月10日(現地時間)、「paint.net 5.0」をリリースした。2014年6月以来、実に8年半ぶりのメジャーバージョンアップとなる。

 「paint.net」は、もともとWindowsアプリの開発フレームワーク「.NET Framework」で開発された高機能なレタッチソフト。現在はクロスプラットフォーム対応の後継技術である「.NET」を採用しており、Windows専用アプリであることはかわらないものの、「.NET」の強化を積極的に取り入れている。最新の「paint.net 5.0」は「.NET 7」ベースで、レガシーなC++/CLIコードをC#へ移植するといった改善に用いられているようだ。

 「paint.net 5.0」の目玉は、GPUアクセラレーション対応の拡充だ。キャンバスの描画に関してはすでにv4.0からハードウェアアクセラレーションレンダリングが用いられているが、本バージョンではそれ以外のUI要素(レイヤーウィンドウ、履歴ウィンドウ、ルーラー、メインウィンドウの上部にある画像リストなど)でもGPUアクセラレーションを活用している。[調整]と[エフェクト]メニューのコマンドでもほぼすべてがハードウェアアクセラレーション対応となり、パフォーマンス向上はもちろん、ノートPCではバッテリー持続時間の延長も期待できる。

 なお、アクセラレーションに利用するGPUは設定画面で選択が可能。既定ではOSが「パフォーマンス GPU」と識別するGPU(通常はディスクリートGPU、dGPU)が用いられるが、消費電力重視で内蔵GPU(iGPU)を選ぶこともできる。GPUに問題がある場合は、CPUによるレンダリングを選択することも可能だが、パフォーマンスとバッテリ消費の双方に悪影響があるのでなるべく避けるべきだろう。

アクセラレーションに利用するGPUは設定画面で選択が可能

 それ以外の主な変更は、以下の通り。

筆圧感知とブラシエンジンの刷新

 「paint.net」はかつて筆圧感知をサポートしていたが、当時はさまざまな技術的課題があり、2009年の「paint.net 3.5」で一旦削除された。「paint.net 5.0」では、これが「Windows Ink」というAPIを活用することで再度実装されている。このAPIは「Surface Pen」やWacom製のペンタブレットなどで広くサポートされており、さまざまなデバイスで利用可能だ。

「Windows Ink」による筆圧検知

 そのほかにも、ブラシエンジンを刷新。平準化(stabilization)と呼ばれるパススムージングが実装されたほか、ブラシスタイルの適用をコントロールする「間隔」プロパティスライダーがツールバーに追加された。この新しいブラシエンジンはすべての標準ブラシツール(ペイントブラシ、消しゴム、クローンスタンプ、色の変更)でサポートされており、将来的にはカスタムブラシなどへも展開していくとのこと。

新しいパススムージング「平準化」と「間隔」プロパティスライダー
「間隔」プロパティスライダーを「200%」に調整した例

埋め込みカラープロファイル

 「paint.net」には「Adobe Photoshop」や「Krita」、「GIMP」のようなカラーマネジメントシステム(CMS)はまだない。しかし、画像に埋め込まれたカラープロファイルを適用するのは可能で、正確な色表現が必要な現場にも対応できる。

埋め込みカラープロファイルへ対応。EXIF、XMP、IPTCなどで利用できる

 なお、CMSの実装は将来のアップデートで追加が検討されている。

画像サイズの変更

 [画像]-[画像サイズを変更]コマンドのサンプリングモードが拡充され、アダプティブ法(最高品質)、Lanczos3法などが新たに利用できるようになった。バイリニア法もアップデートされ、古い方式は「バイリニア法(低品質)」という名前になった。

[画像]-[画像サイズを変更]コマンドのサンプリングモードが拡充

 これらのサンプリング処理には「PhotoSauce.MagicScaler」というライブラリ(.NET製、Windows専用)が利用されており、最新のアルゴリズムで従来よりも高い品質とパフォーマンスを実現しているという。

[調整]コマンド

 [調整]コマンドとして、新たに[露出]、[ハイライト / シャドウ]、[温度 / 色合い]が追加された。以前はプラグインのインストールが必要だったが、その必要がなくなる。

新たに[露出]、[ハイライト / シャドウ]、[温度 / 色合い]が追加

 また、[セピア]コマンドの強度スライダーも改善されているとのこと。

[エフェクト]コマンド

 新エフェクト[傾き補正]を利用すると、被写体が傾いて写ってしまっている写真を簡単に回転させることが可能。[オブジェクト]メニュー配下には[影をつける]エフェクトが追加されており、「Direct2D」による新しいGPU画像処理を活用してすばやくドロップシャドウを付与できる。

新エフェクト[傾き補正]

 さらに、[ぼかし]-[ボケ]エフェクトも強化された。これは古い焦点ぼかしを置き換えるもので、一眼レフの「ボケ」によく似たぼかし効果をシミュレートできる。ただし、設定によってはGPUへの負荷が少し大きくなる点には注意したい。

新しいエフェクトプラグインシステム

 エフェクトプラグインシステムも刷新され、GPUハードウェアアクセラレーションが利用できるようになった。編集中の画像のすべてのレイヤーにアクセスしたり、画像のメタデータにアクセスできるようになるなど、柔軟性も増している。

 古いシステムも引き続き機能するが、今後は新システムへの移行が進むだろう。

システム要件の変更には注意

 なお、「paint.net 5.0」の対応OSは「Windows 10 バージョン 1809」以降。Windows 7/8.1はサポートされない。

 CPUはx64/ARM64がネイティブサポートされるが、x86(32bit)対応は打ち切られるとのこと。x64 CPUは「AVX2」命令への対応が推奨となっているが、2013年以降に発売されたCPUであれば問題はない。

 バイナリはこれまで通り無償で、公式サイト「getpaint.net」などからダウンロードできる。「Microsoft Store」からも入手できるが、820円(税込み)のダウンロード販売だ。買い切りなので、開発を支援したい場合は「Microsoft Store」からの購入も検討してほしい。

ソフトウェア情報

「paint.net」
【著作権者】
dotPDN LLC、Rick Brewster 氏、contributors
【対応OS】
Windows 10 バージョン 1809以降
【ソフト種別】
フリーソフト(寄付歓迎)
【バージョン】
5.0(23/01/10)