レビュー

イラストをAIの学習から守る! 作風の模倣を防ぐ「Glaze」とは

ノイズを入れて加工、元の絵も損なわない?

「Glaze」バージョンbeta 3

 「MidJourney」や「Stable Diffusion」のような、AIを利用してテキストから画像を生成するツールが流行しているが、一部では絵描きにとって困る話題が尽きないのも事実だ。悪意をもって作風を模倣し悪用されることを恐れて、ネット上に自身の作品を投稿することがためらわれる、という声も聞く。

作風が模倣される流れ

 「Glaze」は、そんな描き手の不安を和らげてくれるであろう、AIの機械学習を阻害するソフト。米シカゴ大学の学術研究グループによって開発されたフリーソフトで、公式サイトからダウンロードできる。なお、初回起動はリソースのダウンロードが行われるため、追加で時間がかかることに注意。

 「Glaze」で加工しても人間の目にはほとんど違いが分からないため、オリジナルとほぼ同じに見えると謳っている。

 公式の解説では、加工後のイラストでAIに学習させると、全く別の作品として認識し、そこから生成される画像は勘違いさせた作風になったとのことだ。詳細が気になる人はこちらの研究論文を確認してみてほしい。

「Glaze」の仕組み

  利用するには、まず[1.SELECT YOUR IMAGE(S) TO GLAZE]エリアの[Select]ボタンから画像を選択し、[2.DEFINE GLAZE SETTING]エリアでどのくらい加工する(阻害効果を高める)かの設定をする。上部の[Intensity]スライドバーでは加工の強度を選択でき、高めに設定すればより強力な学習妨害効果を期待できる。下部の[Render Quality]スライドバーでは、レンダリング品質にかける時間を設定でき、遅めに設定すればより強力な学習妨害効果を期待できる。

 最後に保存先を設定して、[Run Glaze]を押せば加工開始だ。ただし、PCスペックに左右されるが加工にかなり時間がかかるので注意。以下、筆者のノートPCの場合の比較を参考にしてみてほしい。

  • CPU:Intel Core i5-4200M
  • メモリ:8.00GB
  • GPU:Intel HD Graphics 4600

 画像は、こちらの記事用に生成していたが、最終的に使わなかったものを使用している。

今回加工する元画像

最大設定の場合

「Glaze」の設定
  • [Intensity]:Very High
  • [Render Quality]:Slower
結果
  • 加工時間:約1時間30分
  • プレビュー:確認できないが、加工自体は可能
    プレビューを見るにはメモリが足りない
  • 見た目:ぱっと見でわかるレベルのノイズ
    最大設定で加工後

最小設定の場合

「Glaze」の設定
  • [Intensity]:Very Low
  • [Render Quality]:Faster
結果
  • 加工時間:約45分
  • プレビュー:確認可能
  • 見た目:少し画質が落ちたかなというレベル
    最小設定で加工後

 公式例にあるようにイラストより絵画向けの加工技術のため、作風によって加工後の見た目や学習防止効果の大小があることには留意したい。この例のようなイラストでは、最大だと明らかに見た目に変化を感じられてしまう結果となった。しかし、最小ではパッと見て違和感を持たれることは少ないと思われる。

 確実に学習を防止できると保証されているわけではないが、研究で高い効果が実証されているということで、ある程度の期待はしていいだろう。AIによる機械学習に使われることが不安な人には、現時点でできる自己防衛策のひとつとして試してみることをおすすめする。

ソフトウェア情報

「Glaze」
【著作権者】
SAND Lab
【対応OS】
64bit版のWindows 10/11
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
beta 3