杜のAndroid研究室

第159回

分散コンピューティングで科学の進歩に貢献できる「BOINC」

Android端末の余った処理能力を医学・物理学のデータ解析に役立てる

 『杜のAndroid研究室』では、スマートフォン向けOS“Android(アンドロイド)”をテーマに、窓の杜スタッフが厳選したアプリなどを紹介していく。今回は、分散コンピューティングのクライアントアプリ「BOINC」に焦点を当て、その使い方と機能を紹介しよう。

分散コンピューティングクライアント「BOINC」のAndroid版

「BOINC」

 「BOINC」は、Android端末を分散コンピューティングに利用するためのクライアントアプリ。Windows/Mac/Linux向けに提供されている分散コンピューティングの汎用クライアント「BOINC」のAndroid版で、同ソフトの技術を採用した分散コンピューティングプロジェクトに参加し、Android端末の余った処理能力をプロジェクトのデータ解析に提供できる。本アプリをインストールして参加するプロジェクトを登録すれば、充電中など端末に余力があるときだけ自動でデータの解析とアップロードが行われ、とくに意識することなくプロジェクトに貢献できる仕組み。

 利用するには、まず初回起動時に表示される画面で参加するプロジェクトを選択しよう。参加できるプロジェクトには、電波望遠鏡からのデータを解析して新たな天体を探索する“Einstein@Home”や、エイズ治療に効果のある候補薬を特定するプロジェクト“FightAIDS@Home”を含むプロジェクト群“World Community Grid”などが用意されている。また、画面下部の[Add project]ボタンからAndroid版「BOINC」に対応するプロジェクトのURLを入力して参加することも可能。

 各プロジェクトの参加にはログインが必要となり、プロジェクト選択後に表示される画面でユーザー登録したメールアドレスまたはユーザー名、パスワードを入力してログインできる。また、[Register]ボタンから新規ユーザー登録してログインすることも可能。

初回起動時に表示される画面で参加したいプロジェクトを選択する
ユーザー登録したメールアドレスまたはユーザー名、パスワードを入力してログイン

充電中かつバッテリー残量90%以上のときに自動で解析を実行

初期設定では充電中かつバッテリー残量が90%以上の場合のみ解析が実行され、条件を満たさない場合は一時停止する

 ログイン後には、最初に端末のベンチマークが行われたあとで、自動で解析用データのダウンロードや解析が実行される。本アプリは常駐型となっており、戻るボタンやホームボタンでアプリを閉じてもバックグラウンドで動作し続け、端末の余力があるときに解析が行われる。初期設定では、充電中でバッテリー残量が90%以上あることが条件となり、条件を満たさない場合は解析などは一時停止する仕組み。また、解析用データのダウンロードと解析結果のアップロードは、Wi-Fi接続時のみ実行されるように設定されている。そのため、バッテリーを消費し過ぎてしまったり、3GやLTEのデータ通信が勝手に使用されることはない。

 画面はタブ切り替え型となっており、[Status]タブでは分散コンピューティングが実行されているかどうかを確認可能。実行中には参加しているプロジェクトの画像が表示され、実行していないときは端末を充電するよう促すメッセージなどが表示される。また、[Projects]タブには参加中のプロジェクトが一覧表示されて確認でき、各プロジェクトをタップして参加の取り消しや一時中断ができるほか、画面下部の[Add project]ボタンから別のプロジェクトに参加することも可能。

 [Tasks]タブでは、参加中のプロジェクトで端末が実行している個別のタスクの進捗をパーセンテージで確認できるほか、“running”や“ready”などの状態も確認可能。また、各タスクをタップすれば、これまでの実行時間やタスクの締切日時などを確認したり、右側に表示されるボタンをタップしてタスクの一時停止や削除を行うことが可能。また、[Transfers]タブでは、データのダウンロード・アップロードの状態を確認できる。

[Projects]タブでは、参加中のプロジェクトを確認でき、[Add project]ボタンから別のプロジェクトに参加することも可能
[Tasks]タブでは、端末が実行している個別のタスクの進捗を確認できる
各タスクをタップすると右側にボタンが表示され、タスクの一時停止や削除を行える
[Transfers]タブでは、データのダウンロード・アップロードの状態を確認可能

解析が実行される条件のカスタマイズも可能

 [Preferences]タブを選択して表示される設定画面では、データの解析やダウンロード・アップロードが実行される条件などを設定可能。“Computer on Battery”チェックボックスをONにすれば、充電中でなくても解析などが実行される。その下側にある“Min. battery level”欄では実行を一時停止するバッテリー残量の条件を変更可能。また、“Transfer tasks on WiFi only”チェックボックスをOFFにすると、3GやLTEの接続時でもデータのダウンロード・アップロードが行われるようになる。

 さらに、“Show advanced preferences and controls”のチェックボックスをONにすれば、詳細な設定項目が表示され、実行を一時停止するバッテリー温度やCPU使用率、使用するCPUのコア数なども変更可能。

[Preferences]タブでは、データの解析やダウンロード・アップロードが実行される条件を設定可能
“Show advanced preferences and controls”のチェックボックスをONにすれば、詳細な項目が表示されて設定できる
「BOINC」
【著作権者】
University of California, Berkeley
【対応OS】
(端末により異なる)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
7.2.9(13/09/06)

(ライターズハイ:鈴木 友博)