Blender ウォッチング

3Dキャラにポージングのための仕組みを追加 ~「Blender」による制作もいよいよ仕上げ

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

完成の喜びを全身で表すウサギ

 今回は「Blender」による3Dキャラクター制作チュートリアルの最終回として、前回の目の追加の続きと、モデルのポージングがもっと楽にできるようにします。モデリングはしませんが、どれもキャラクター作成には大事なことです。

作業ファイルについて

 前回終了時の作業ファイルが下のリンク先からダウンロードできます。ご利用ください。

前回終了まで作業済みのblenderファイル


    ※Webブラウザーによってダウンロードがブロックされる場合がありますが、右クリックメニューからファイルの保存を行い、警告が表示されても[継続]などの項目を選択して保存してください。

オブジェクトモードで元の形状が表示される不具合について

 この連載の執筆中、「Blender」v3.2~3.5までで、特定のモディファイアーと「GPUサブディビジョン」(GPUによりサブディビジョンサーフェスを支援する機能)の組み合わせ時に[オブジェクトモード]に切り替えると、細分化されていない元の形状が表示される不具合を発見しました(開発には報告済み)。

 この記事が掲載される時期に修正される保証はないので、とりあえず「メッシュオブジェクト」に設定されている[アーマチュアモディファイアー]パネル内にある[編集モード]ボタン(下図②)をクリックして回避してください。なお、前掲の「作業済みのblenderファイル」ではすでに設定済みです。

図の左側のようになるので、「メッシュオブジェクト」の[モディファイアー]プロパティ(①)の[アーマチュアモディファイアー]パネル内にある[編集モード]ボタン(②)をクリックして回避

目の頂点グループ設定

 前回作成した目には、ポージングを行うためアーマチュアと結びつける「頂点グループ」が設定されていません。まずはこれを追加します。

  1. 画面右側の[プロパティエディター]を[オブジェクトデータ]プロパティに変更します。
  2. [頂点グループ]パネル内のリストから、頭部のボーン名である「Bone.00」をクリックします。
  3. 前回に選択した目の周りの辺がそのまま選択中であることを確認します(クリースと重なって見づらいですが、黄色になっていれば選択中です)。
  4. [頂点グループ]パネルの[割り当て]ボタンをクリックします。

 本来はちゃんと[ウェイトペイントモード]や[ペアレント]ツールで設定すべきなのですが、この場合はこれで十分です。

[オブジェクトデータ]プロパティ(①)に変更し、[頂点グループ]パネル内のリストの「Bone.00」(②)をクリック。前回に選択した目の辺が選択中(③)か確認し、[頂点グループ]パネルの[割り当て]ボタン(④)をクリック

 せっかくなので試しにポーズモードで少し動かしてみましょう。

  1. [Tab]キーなどで[オブジェクトモード]に変更します。
  2. 右上の[アウトライナー]で「アーマチュアオブジェクト」をクリックして選択します。
  3. [プロパティエディター]を[オブジェクトデータ]プロパティに変更します。
  4. [ポーズ位置]をクリックします。
[オブジェクトモード](①)に変更し、[アウトライナー]で「アーマチュアオブジェクト」(②)を選択。[オブジェクトデータ]プロパティ(③)から[ポーズ位置](④)をクリックして変更
  1. 左上から[ポーズモード]に変更します。
  2. 頭部のボーンを選択し、[R]キーで回転します。

 ちゃんと回転についてきていれば成功です。

 回転には[回転]ツールや[トランスフォーム]ツールを使用してもかまいませんが、ボーンの選択と操作を頻繁に切り替えて行うポージングでは、特にショートカットキーを覚えておいた方が楽になると思います。

[ポーズモード](①)に変更し、頭部のボーンを選択して[R]キーで回転(②)
頂点グループの継承条件は?

 「耳には設定しないの?」と思った人はするどい! 実は耳の頂点にはもう頂点グループは設定されているので、必要ありません。

 これは目の場合、面の中にナイフツールで直接「頂点」を作成したため、頂点グループが追加されていませんでしたが、耳の場合は頭部のから「押し出し」で作成しているため、元となった面(の頂点)の頂点グループがそのままコピーされているからです。他にも既存の「」を分割してできた場合の頂点にも継承されます(最後の「しっぽの追加」を参照)。

ポージング用のIKの設定

 手や脚のように、多数のボーンからなる部分のポーズをつけるのは面倒です。

 そこで少し楽になるよう、IK(インバースキネマティクス)を導入します。ただし真面目にやると長くなるので、今回は簡易的な設定にします。

  1. [モデリング]ワークスペースに変更します。現在選択中のアーマチュアが[編集モード]に入るはずです。
  2. [3Dビューポート]上部の右端に4つある「シェーディングモード」アイコン(球型アイコン)の右から2番目をクリックし「マテリアルプレビューモード」にします。
  3. その下の「オプション」の文字の左側の[X]ボタンをクリックし、「ミラー編集」モードにします。
  4. さらにその下の[ナビゲーションギズモ]やホイールドラッグなどで、左右が見やすいようビューを回転・ズームします。
[モデリング]ワークスペース(①)に変更し、[3Dビューポート]上部の右端に4つある球型アイコンの右から2番目の球(②)をクリック。その下の[X]ボタン(③)をクリックし、[ナビゲーションギズモ](④)やホイールドラッグなどで見やすいようビューを回転・ズーム

 向かって右側の手先のボーン(Bone06.L)の「先端」をクリックして選択し、[押し出し]ツールを選択します。先端のみを選択してください。

向かって右側の手先のボーン(Bone06.L)の「先端」をクリックして選択し、[押し出し]ツールを選択

 ハンドルをドラッグし、適当な長さに押し出します。

 上の手順で「ミラー編集」モードが正しく設定されていれば、反対側にも同様にボーンが生成されているはずです。

 以降は上で押し出しにより作成したボーンを「ターゲットボーン」と呼ぶことにします。

ハンドルをドラッグし、適当な長さに押し出し

 押し出しで生成されたターゲットボーンを選択し、右クリックメニューから[ペアレント]-[クリア]-[親子関係をクリア]を実行します。

 なお、押し出し同様ミラー編集モードのおかげで、もう片方にも自動的にこの設定が行われます。

ターゲットボーンを選択し、右クリックメニューから[ペアレント]-[クリア]-[親子関係をクリア]を実行

IKコンストレイントの追加と設定

  1. [ポーズモード]に入り、向かって右側の手先のボーン(Bone.06.L)をクリックして選択します。
  2. [ボーンコンストレイント]プロパティ(下図)をクリックして開きます。
  3. 中の[ボーンコンストレイントを追加]ボタンをクリック後、[インバースキネマティクス(IK)]を選択します。
[ポーズモード](①)に入り、向かって右側の手先のボーン(Bone.06.L)を選択(②)。[ボーンコンストレイント]プロパティ(③)から[ボーンコンストレイントを追加]ボタン(④)をクリックし、[インバースキネマティクス(IK)](⑤)を選択
  1. パネル内の[ターゲット]フィールドをクリックし、リストから[アーマチュア]を選択します。
  2. 下に現れた[ボーン]という項目でクリックし、リストからターゲットボーン名(Bone.06.L.001)を指定します。
  3. [チェーンの長さ]を「2」にします。

 現時点ではボーンを直接スポイトで指定できないため、リストで選択した方が早いのです。残念。

パネル内の[ターゲット]フィールドをクリックし、リストから[アーマチュア]を選択、下に現れた[ボーン]という項目でもクリックし、ターゲットボーン名(Bone.06.L.001)を指定、最後に[チェーンの長さ]を「2」に設定

コンストレイント設定のコピー

 ポーズモードではミラー編集モードによるコンストレイント設定の自動設定はできないので、専用のコピーツールを使用します。

  1. 「反対側のボーン」(Bone.06.R)をクリックで選択後、[Shift]キーを押しながら先ほど「IKを設定したボーン」(Bone.06.L)を選択します。
  2. [ポーズ]メニューから[コンストレイント]-[選択したボーンにコンストレイントをコピー]を実行します。これで反対側にもコンストレイント設定がコピーされます。
「反対側のボーン」(Bone.06.R)をクリックで選択後(①)、[Shift]キーを押しながら先ほど「IKを設定したボーン」(Bone.06.L)を選択(②)し、[ポーズ]メニュー(③)-[コンストレイント]-[選択したボーンにコンストレイントをコピー]を実行

 設定がそのままコピーされているため、反対側の腕がこちら側の「ターゲットボーン」に向かって曲がっていますので、修正します。

 もう一度反対側のボーン(Bone.06.R)を選択し、パネル内の[ボーン]のフィールドをクリックして、ターゲットボーン(Bone.06.R.001)を指定します。

もう一度、反対側のボーン(Bone.06.R)を選択(①)し、パネル内の[ボーン]フィールドをクリック(②)してターゲットボーン(Bone.06.R.001)を指定(③)

 それぞれの「ターゲットボーン」を[G]キーで移動してみてください。距離と場所に応じて直観的に動くようになったはずです。簡易的な物なので、必要であれば腕の付け根側の回転もしてみてください。

「ターゲットボーン」を[G]キーで移動してみた例

さらに追加してみよう

 実はスペースの都合でこのままでは完全ではありません。今まで習った操作で以下を追加してみましょう。

しっぽの追加

 お尻に「しっぽ」を追加してみましょう。例えば下図のように[ナイフ]ツールでカットし、できた面を[押し出し]ツールで押し出せば簡単にできあがります。

 必要に応じて「ループカット」や頂点の移動で成形してみてください。

 なお、下の例では既存の辺を分割して作成したので、序盤に行った「頂点グループの割り当て」は必要ありません。

検索してみるとそんなに丸いわけでもないらしい

脚へのIKの追加

 腕同様に、脚にも「IK」を追加することで、ポージングが楽になります。逆方向に曲がらないようにするなど、もっと複雑な機構も構築できますが、また別の機会に。

押し出しツール使用時、ハンドルではなく白い円をドラッグすることで、こんな風に前に押し出すことも可能

終わりに

 お疲れさまでした。本チュートリアルではあまり長くない手順で、実際にポーズのとれるキャラクターの作成を目指してみました。途中に色々省いた部分もありますが、またの機会があれば解説してみたいと思います。

 ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。

 ではまた。