使ってわかるCopilot+ PC
第9回
ボーカル曲から元から他の音なんてなかったかのように歌声だけを抜き出す!
NPUを活用するDJソフト「djay Pro」のNeuralMix機能が凄かった
2024年9月13日 06:55
DJソフトのAI処理にNPUを使用する
「Copilot+ PC」に搭載されたNPUを使用できるソフトとして、Algoriddimが開発したDJソフト「djay Pro」というものがあるという。筆者はDJについての知識はほぼないが、数少ないNPU対応ソフトということで興味がわいた。
ソフトの詳しい説明はできないが、今回はとにかくNPUを使う機能だけを試してみることにする。本ソフトはMicrosoft Storeからダウンロードが可能で、基本機能は無料で利用できる。検証にはSnapdragon X Plusを搭載した「Copilot+ PC」の1つ、「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」を使用した。
楽曲から声や楽器など特定の音を分離するAI機能
NPUを使用するのは、NeuralMixというAI機能。マイクロソフトの説明によると、「あらゆる音楽トラックを分解」するものだという。
具体的な内容を調べてみると、ある音楽に使われている歌声や特定の楽器の音だけを分離・再生できるというものだそうだ。これはDJでなくとも面白い機能だ(DJ以外で実用性があるかどうかはともかく)。
使用できる音楽は、個人所有の音楽ファイルだけでなく、Apple Musicなどの音楽配信サービスのものも使用できる。各サービスのサブスクリプションは当然必要だが、無料で使える本ソフト独自の音楽配信サービスもある。
早速、筆者の手元にあるボーカル入りの音楽ファイルで試してみた。操作は音楽ファイルをドラッグし、本ソフトの左上の部分にドロップする。すると自動で音楽の再生が始まる。ここまではただの音楽プレイヤーと変わらない。
ここで画面左上に並ぶいくつかのマークの中から、「N」のようなものを選ぶ。これが目的の「NeuralMix」機能を呼び出すものとなっており、画面中央付近に新たなメニューが現れる。
メニューには、「DRUMS」、「HARMONIC」、「VOCALS」とある。これらのアイコンをクリックすると、その音だけを分離し、他の音を消し去って、単体で聴かせてくれる。
分離できるといっても、ノイズキャンセリングヘッドフォンのように、他の音が聞こえにくくなるくらいではないかと想像していた。とりあえず手元にある筆者所有のボーカル曲を入れて実際に試してみると、想像したものとは次元が違った。
「VOCALS」をクリックすると、歌手の声以外の楽器音が完全に消え去り、声だけが見事にピックアップされる。しかも声に歪みもなく、まるで「元から他の音なんてなかった」と感じるくらいにクリアに処理されている。
再生したのは、手持ちのCDから音声データ化したファイル(WMA)で、元データ自体に分離できる要素はない。何度も聞いて声も楽器音もほぼ記憶している曲なのに、いきなり声だけが抜き出されて、こっちが度肝を抜かれる。
声以外の音についても同様で、ドラムだけ、ベースだけといった抽出も見事にこなす。どのような処理で実現しているのかは表向きには見えないが、確かにAIが得意そうな内容ではある。
本ソフトを使用中にタスクマネージャーを確認すると、確かにNPUを使用しているのを確認できた。GPUも使用率が上がっており、基本的にはGPUを使って処理するソフトのように見受けられる。
なお「NeuralMix」は、無料版では10秒程度の体験ができるだけで、本格的に使用するには年額5,850円のサブスクリプションが必要。7日間の無料トライアルも用意されている。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/