初心者からEmEditorの達人になる!

第3回

最強のCSVエディター「EmEditor」はExcelの代わりにも使える ~テキスト編集上級者への道

まずは基礎機能から。初心者が引っ掛かりそうなポイントもQ&Aで解説

「EmEditor Professional」でワンランク上のテキスト入力を!

 脱「メモ帳」を目指す入門ユーザーのために、日本発の多機能テキストエディター「EmEditor Professional」でワンランク上のテキスト入力を指南する本特集。第3回となる今回は、「EmEditor」の目玉の一つといえるCSV編集機能の使いこなしを解説する。

 「CSV」は列をカンマ、行を改行で区切ったテキスト形式のテーブル(表)データだ。テキストが扱えるアプリならばどんなアプリでも扱えるので、さまざまなシーンで用いられている。

「メモ帳」で郵便番号のデータ(KEN_ALL.CSV)を開いた様子。「とりあえず」は扱えるといった趣だ

 しかし、一般のテキストエディターはCSVファイルを「とりあえず」扱えるに過ぎない。閲覧や編集にCSVに特化した機能があるわけではないので、CSVを効率よく扱うのは難しい。

 また、CSVファイルを扱うのに「Microsoft Excel」を利用するのもあまりお勧めできない。「Excel」をインストールすると「.csv」ファイルに関連付けられるので、そのままダブルクリックして開きたいところだが、高機能な表計算ソフトならではの自動機能が、想定外の結果を生んでしまう。

  • 電話番号など、先頭の「0」が消える
  • 桁数の多い数字が指数表記「E+」で表示される
  • 米国の財務諸表ではマイナス値を括弧で括って表記する関係で、括弧付きの数がマイナスの数になることがある
  • 分数が勝手に約分される
  • 住所の一部が日付に変換される

 加えて、サイズの大きなCSVデータを開くのに時間がかかる、処理が遅いなどの欠点も抱えている。

「.csv」ファイルに関連付けられるからといって、「Excel」で開くのはお勧めできない。一見問題がないようだが、「0」から始まる郵便番号がちゃんと表示されていないうえ、動作が重い

 その点、「EmEditor Professional」ならば一般のテキストエディターよりも強力で、CSVに特化したさまざまな閲覧・編集機能も備わっている。そして、その挙動は素直。「Excel」のような想定外の動作をする自動処理はない。もともとテキストエディターとして高機能で検索やテキスト加工が得意な上、並べ替えやフィルタリング、入力補完なども「Excel」顔負けの高機能っぷりだ。また、「巨大ファイル コントローラー」でGB単位のファイルも省メモリで扱えるのもうれしいポイント。サイズの大きな顧客名簿や商品データ、ログファイルもサクサクと扱える。

巨大なCSVデータもサクサク扱える「EmEditor Professional」。機能も「Excel」に引けを取らないばかりか、テキストの編集にかけては凌駕する


「EmEditor」でCSVファイルを開く

 それでは、今回もQ&A形式で「EmEditor Professional」でCSVファイルを扱う方法を紹介していこう。まずは、CSVファイルを開く際の疑問から解説する。


【Q.】 CSVファイルを作成するには?

【A.】 新しいテキストファイルを作成し、[CSV/並べ替え]ツールバーの[カンマ]ボタンを押す。すると「EmEditor」が「セル選択モード」になる。行番号を右クリックすれば行の追加や削除メニュー、ルーラー(CSV用の列ヘッダー)を右クリックすれば列の追加や削除メニューにアクセスできる。

ツールバーの[カンマ]ボタンを押すと「セル選択モード」になり、CSVを作成可能


【Q.】 CSVファイルを開くには?

【A.】 カンマで区切られたテキスト(CSV)ファイルであれば、「EmEditor」へファイルをドラッグ&ドロップするだけで「セル選択モード」へ自動で切り替わる。「EmEditor」はCSV以外にも、タブ区切り(TSV)やセミコロン区切りなどのテーブルデータ(DSVと総称される)も扱えるが、そうしたファイルの場合も自動で「セル選択モード」で開くことが可能だ(後述の設定を行う必要がある)。

拡張子が「.csv」であれば、「EmEditor」へファイルをドラッグ&ドロップするだけ

 なお、拡張子が「.txt」の場合は自動で「セル選択モード」に切り替わらないが、[CSV/並べ替え]ツールバーで区切り文字を自分で指定すれば「セル選択モード」で閲覧可能だ。


【Q.】 「EmEditor」でExcelファイルを開くにはどうしたらいいでしょうか?

【A.】 「Excel」ファイルはバイナリであり、「EmEditor」で直接開くことはできない。しかし、ひと手間かけることで「EmEditor」で扱うことは可能だ。

  • 一度「Excel」でファイルを開き、テキストファイル(カンマ区切りまたはタブ区切り)として保存すると、「EmEditor」で扱えるようになる
  • 「Excel」アドイン 「CSV Import+Export」を使ってファイルをCSVファイルとしてエクスポートし、「EmEditor」でそのCSV ファイルを開く
  • 「Excel」でファイルを開き、[Ctrl]+[A]キーですべてのセルを選択。[Ctrl]+[C]キーでクリップボードへコピーし、「EmEditor」の新規ドキュメントに[Ctrl」+[V]キーで貼り付ける。[CSV/並べ替え]ツールバーの[タブ区切り]を選択すると、[セル選択モード]で扱える
一度「Excel」でファイルを開き、テキストファイル(カンマ区切りまたはタブ区切り)として保存


「EmEditor」でCSVファイルを編集する

 CSVファイルを開けたら、次は編集だ。「セル選択モード」の「EmEditor」ではテキストを編集する場合とは異なる操作が必要となるため、はじめて「EmEditor」でCSVファイルを扱う際に戸惑いがちな疑問をピックアップする。


【Q.】 セルの編集やアクティブなセルの移動を行いたい

【A.】 基本的な操作は「Excel」に合わせて作られており、選択セルの移動は矢印キー(カーソルキー)で、選択セルの編集は[F2]キーで行える。編集内容の確定は[Enter]キーだ。

選択セルの移動は矢印キーで、選択セルの編集は[F2]キーで

 なお、選択したセルや行、列の枠をつかんでドラッグ&ドロップしたり、行ヘッダーのカラム境界をドラッグしてセルの幅を調整できるのも「Excel」と同じだ。セルの内容は[セル]ツールバーでも閲覧・編集が可能。邪魔であれば非表示にすることもできるが、セルのなかにカンマ(区切り文字)や改行を含めたい場合は表示しておくと便利だろう。

セルの内容は[セル]ツールバーで閲覧・編集できる。区切り文字を含めたり、[Ctrl]+[Enter]キーで改行を追加することも可能


【Q.】 行や列を選択するには?

【A.】 一行丸ごと選択する場合は、行番号をクリックする。一列丸ごと選択したい場合は、ルーラーに刻まれた番号(CSV用の列ヘッダー)をクリックすればよい。

一行丸ごと選択する場合は、行番号をクリック。一列丸ごと選択したい場合は、ルーラーに刻まれた番号(CSV用の列ヘッダー)をクリック

 ちなみに、行番号と列ヘッダーが交差する左上のエリアをクリックすると、テーブル全体を選択することが可能だ。


【Q.】 CSVデータを見やすく並べ替えたい

【A.】 「EmEditor」では、以下の並べ替え(ソート)がサポートされており、それぞれ昇順・降順に並べることができる。

  • アルファベット
  • 数値
  • 文字列の長さ
  • 日時
  • 出現頻度
  • IPv4/IPv6アドレス
  • ランダム

 「出現頻度」や「IPアドレス」による並べ替えは、アクセスログの解析などに役立つ。「ランダム」は並べ替えに含めてよいか迷うところだが、データを手軽にシャッフルしたい場合には便利だ。

列を選択してアルファベット順や数値順で並べ替え

 ソート処理を行うには列番号をクリックして列を選択し、右クリックメニューから並べ替えの方法を選択する。『列2で並べ替えた後に列3で並べ替えたい』といった高度な操作も、[高度な並べ替え]機能で実現できる。

『列2で並べ替えた後に列3で並べ替えたい』といった高度な操作も、[高度な並べ替え]機能で実現できる


【Q.】 CSVデータをフィルタリングしたい

【A.】 「EmEditor」のフィルター機能は、指定したキーワードが含まれる行だけを抽出して表示できるので、特定のデータのみを閲覧したい場合に便利だ

 フィルター機能を利用するときは、[フィルター]ツールバーを表示しておくとよい。このツールバーの検索ボックスにキーワードを入力すると、それに合致する行のみが表示される。テキストエディターから進化しただけあって、「EmEditor」では正規表現によるフィルタリングも行える。

[フィルター]ツールバーの検索ボックスにキーワードを入力すると、それに合致する行のみが表示される

 より複雑な条件でフィルタリングを行うこともできるが、以前に解説したのでそちらの記事を参照してほしい。


【Q.】 フィルターで一致する行の前後も確認したい

【A.】 ログファイルを解析する場合などでは、フィルタリングで目的の行だけを抽出するだけでは不十分なことがある。その前後で何が起こっているのかも確認したくなるものだ。

 「EmEditor」では、[フィルター]ツールバーの右端にあるプルダウンメニューを操作して、「一致する行に加え、指定した分だけその上下の行を表示する」ことが可能。たとえば「1」「2」と指定しておけば、マッチした行に加え上の1行、下の2行も併せて表示される。

一致する行に加え、指定した分だけその上下の行を表示

 どちらかといえばソースコードの検索などで用いる機能だが、CSVデータを分析するときにも役立つことがあるので覚えておくとよいだろう。


【Q.】 先頭行をヘッダー(見出し)として扱いたい

【A.】 CSVデータのなかには、先頭行が「見出し」(ヘディング)になっているものがある。これは特別扱いにしておかないと、並べ替えやフィルタリングを行う場合に不便だ。

頭行をヘッダー(見出し)として扱う

 「EmEditor」では[CSV/並べ替え]ツールバー右端に設けられている[ヘディング]メニューで、どの列を見出しとして扱うかを決めることができる。たとえば[ヘディング1]に切り替えれば、最初の行の背景が黄色にハイライトされ、並べ替え・フィルタリングの際は除外される。


CSVファイルを扱う際の疑問

 最後に、「EmEditor」でCSVファイルを扱うときに、引っかかりそうなところを解説する。困ったときは参考にしてほしい。


【Q.】 CSV ファイルを開く時に列の区切り位置の自動調節を無効にするには?

【A.】 [ツール]-[カスタマイズ]ダイアログで[CSV]ページを開き、[CSVのオプション]一覧にある[自動的に区切り位置を調節]というチェックボックスを解除する。

[ツール]-[カスタマイズ]ダイアログの[CSV]ページ


【Q.】 TSV(タブ区切り)のファイルの自動検出を有効にするには?

【A.】 [ツール]-[現在の設定のプロパティ]ダイアログの[ファイル]ページへアクセスし、[検出するCSV]一覧よりの[タブ区切り]チェックボックスをONにする。

[ツール]-[現在の設定のプロパティ]ダイアログの[ファイル]ページ

 既定ではカンマ区切り(CSV)のみが有効となっている。


【Q.】 巨大ファイルを開こうとすると、「ページング ファイルが小さすぎるため、この操作を完了できません」というようなエラーメッセージが表示されます。どのようにしたらエラーを回避できますか?

【A.】 巨大ファイルを開くには、物理メモリまたは仮想メモリを増やす必要がある。PCの物理メモリ(RAM)を増やすのが理想的だが、それでもエラーが継続する場合や、物理メモリを増やすことができない場合は、以下の手順で仮想メモリを増やすことで解決することがある。

  1. [Windows]+[R]キーで[ファイル名を指定して実行]ダイアログを開いて「SystemPropertiesPerformance.exe」と入力し、[Enter]キーを押してWindowsの[パフォーマンス オプション]ダイアログへアクセス
  2. [詳細設定]タブへ切り替える
  3. [仮想メモリ]ボックス内の[変更]ボタンをクリック
  4. [すべてのドライブのページング ファイルのサイズを自動的に管理する]チェックボックスをOFFにする
  5. [カスタム サイズ]を選択し、[初期サイズ (MB)]と[最大サイズ (MB)]の両方に同じ大きな数字(80000など)を入力する
  6. [OK]をクリックしてWindowsを再起動
  7. 再度「EmEditor」でエラーの出る巨大ファイルを開き、エラーが出ないことを確認する。エラーが継続する場合は、さらに仮想メモリを増やしてみる
[Windows]+[R]キーを押して[ファイル名を指定して実行]ダイアログにアクセスし、「SystemPropertiesPerformance.exe」と入力して[Enter]キーを押す
[詳細設定]タブへ切り替え、[仮想メモリ]ボックス内の[変更]ボタンをクリック
[すべてのドライブのページング ファイルのサイズを自動的に管理する]チェックボックスをOFF。仮想メモリのサイズをカスタマイズする

 ただし、巨大ファイルを開いてもエラーが発生しない場合には、この設定を変更する必要はない。

 今回は、「EmEditor」のCSV機能の基本をQ&A形式で解説した。以上の機能だけでもCSVビューワー・エディターとしては十分高機能な部類だが、「EmEditor」の実力はそれだけにとどまらない。次回は、さらに高度な機能を紹介しよう。

[制作協力:Emurasoft, Inc.]