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窓の杜編集部でも15年以上愛用され続けている「EmEditor」はどこが凄いの?

編集者だけでなくプログラマーやWebデザイナー、サーバー管理者にもオススメしたい最強エディター

 窓の杜編集部は、厳選した1,000本以上のソフトウェアライブラリの中から、信頼性・利便性・コストパフォーマンスなど、総合的な観点から特に秀でていると認めたソフトウェアに“窓の杜RECOMMEND”マークを付与し、推奨しています。“窓の杜RECOMMEND”が日々のソフト選びの参考になれば幸いです。

「EmEditor Professional」

 PCはさまざまな用途に利用されているが、その多くを占めるのはWeb閲覧やゲーム、そして“テキストの編集”なのではないだろうか。ブログ記事を執筆したり、メモをとったり、プログラミングをしたり……PCで行う作業の多くが、テキストの編集に関わっている。もちろん、窓の杜でも毎日の記事執筆、コンテンツの作成にテキスト編集の工程は欠かせない。――であれば、それに用いるツールにもこだわりたいものだ。

 窓の杜では、長年にわたり「EmEditor」や「秀丸エディタ」といった定番のテキストエディターが用いられている。なかでも筆者がおすすめしたいのは、「EmEditor Professional」だ。なぜOS標準の「メモ帳」や「Microsoft Office」についてくる「Word」ではなく、「EmEditor」なのだろうか? そこにはちゃんと理由がある。本稿では、窓の杜で15年以上にわたり使われ続けている「EmEditor」の魅力と、その実力を紹介したい。

トップクラスのパフォーマンスは快適の一言

 テキストエディターを選定する際、まず“編集者”として重視したいのが機能性とパフォーマンスだ。すばやく起動し、快適にテキストを入力し、自在に加工できることが最も重要となる。

 まずパフォーマンスの面でいえば、「EmEditor」はトップクラスと言えるだろう。多くの機能を備えるにもかかわらず、起動は一瞬。常にタスクトレイで待機しており、呼べばすぐにテキスト入力を始めることができる(ポータブル版を除く)。日に何度も利用するのだから、起動速度にはやはりこだわりたい。「Word」や「一太郎」といったワープロソフトではなく、機能を絞ったテキストエディターを用いるのもそれゆえだ。

 非力なPCで快適に動作する点や、PCのポテンシャルをシッカリ引き出してくれる点も重要だ。「EmEditor」ならば64bit版と32bit版、OSに最適なバージョンを用いることができる。また、64bit版「EmEditor」であればCPUのSSE2命令セット、AVX-2命令セット、AVX-512命令セットそれぞれに対応したビルドが含まれている。メインの実行ファイル“EmEditor.exe”を起動するとCPUに応じて最適なバイナリが選択され、実行されるわけだ。

 こうした最適化による恩恵は普段から意識できるほど大きくはないかもしれないが、それでも「EmEditor」がどれだけ性能にこだわっているかを伺い知ることができる。非力なPC、巨大なテキストデータならば、コツコツと積み上げてきた最適化の効果を実感できることもあるだろう。

64bit版「EmEditor」であればCPUのSSE2命令セット、AVX-2命令セット、AVX-512命令セットそれぞれに対応したビルドが含まれている

 また、バージョンアップのたびに細かなパフォーマンスの改善が行われている点も評価したい。テキストエディターと一口に言っても、内部のデータ管理の手法はさまざまで、バッファーの管理方法によってメリットとデメリットがある。「EmEditor」ではマルチスレッドや前述のCPU命令などを活用することで、置換や並び替え、フィルタリング、重複行の削除といったコマンドの実行にかかる時間を少しずつ短縮し、メリットはそのまま、弱点の克服に努めている。

【窓の杜RECOMMENDポイント❶】常時起動でも気にならない軽快さ

 窓の杜編集部で働き始めた編集者が、まず最初にインストールするのが「EmEditor」です。校正作業からデータの分析まで、テキストを扱うほぼすべての業務で「EmEditor」を使っています。これは、まだ編集者が直HTMLを記述していた15年以上前から変わっていません。

 その一番の理由は、高機能に対する軽快さ。必要な機能を十分以上備えていながら、仕事開始から業務終了まで常に起動して、10個以上のファイルを開きっぱなしで利用しても、メモリ使用量が30MBを超えることはめったにありません。また、起動も高速で瞬時にファイルを開けるところも魅力です。

 軽さだけなら「メモ帳」などもっと軽量のテキストエディターもありますが、編集部の業務に十分な機能を備えていて、これだけ軽快に扱えるテキストエディターは「EmEditor」だけなのではないでしょうか。

やっぱり、ちゃんと日本語の文章が書けなくちゃ! ~テキストの執筆を支える充実の基本機能

 また、「EmEditor」は機能性に関しても妥協はない。動作の軽さだけを求めるなら「メモ帳」でよいが、それでは仕事にならないだろう。

 「EmEditor」には、テキストの編集に必要な機能であれば、およそないものはない。ルーラー、制御文字(タブやスペース、改行など)の表示、指定文字数またはウィンドウ右端での折り返し表示、文字コードを指定した保存などなど、一般にテキストエディターに求められる機能は網羅している。

 なかでも“編集者”として重視したいのが、日本語の表示と印刷だ。いわゆる“約物(句読点や括弧といった記号類)”など、行頭や行末にきてほしくないものを禁止する禁則処理がちゃんとサポートされているので、印刷してもテキストの見栄えが悪くならない。“ぶら下がりこみで80文字以内”といった、日本語ならではの文字数指定にも対応できる。

禁則処理なし。テキストを折り返すと、句読点や括弧が行頭にきてしまうことがある
禁則処理あり。テキストの見栄えがよくなる
禁則処理の設定

 また、印刷では余白やヘッダーが設定可能。表示フォントと印刷フォントを分けることもできる。ディスプレイで見やすいフォントと、紙に印刷して見やすいフォントが同じとは限らないので、こうした機能はありがたい。プリントアウトして校正するのも捗るというものだ。

[印刷プレビュー]ダイアログ

 最近は「Visual Studio Code」をはじめとするモダンなコードエディターが多く登場しており、幅広いユーザーに愛されている。こうしたエディターでも、折り返しを有効にすることで日本語テキストを編集することは可能だが、海外生まれであるせいか、禁則処理や印刷のサポートはまだまだ不十分のように思える。このあたりが充実しているのは、日本生まれのテキストエディターならではの“おもてなし”と言えるだろう。

 そのほかにも、「EmEditor」にはテキストを編集するうえでの“おもてなし”が充実している。便利な機能をいくつか以下に紹介してみよう。

何かとお世話になる“高度な操作”

 [編集]-[高度な操作]メニューには、テキストを加工するうえで便利なコマンドが揃っている。連番や特殊文字、日時の挿入、重複行の削除といったコマンドには、お世話になる機会も多いだろう。

[高度な操作]メニュー

HTMLコンテンツを扱う場合に役立つエンコード・デコード機能

 [編集]-[選択範囲のエンコード/デコード]メニューを利用すれば、HTML/XMLの文字実体参照をUnicodeや数値文字参照へ相互変換したり、パーセントエンコーディング(URLエンコード)を行ったりすることができる。

[選択範囲のエンコード/デコード]メニュー

 また、パーセントエンコーディングされた部分へマウスカーソルを移動させると、デコードされたテキストをツールチップで確認することも可能。HTMLコンテンツを扱う場合にも役立つ機能だ。

デコードされたテキストをツールチップで確認

長い文章を書く際に欠かせない“アウトライン”

 文章構造をツリー表示し、ナビゲーションやドラッグ&ドロップによる位置の入れ替えを行う“アウトライン”機能は、長い文章を書く際に欠かせない機能だ。「EmEditor」のアウトライン機能は、括弧やインデントで文章の見出しレベルを判別可能。正規表現に対応したカスタムアウトライン機能も備えており、Markdown記法をはじめとするさまざまなフォーマットのテキストの構造を解析できる。

長い文章を書く際に欠かせない“アウトライン”

 また、見出しレベルでテキストブロックを開閉できる“アウトラインガイド”も便利。不要な部分を閉じ、編集中の箇所だけを開いておけば、全体の構造を把握しつつ、フォーカスされた部分の編集に集中できる。

“アウトラインガイド”でテキストブロックを開閉。ツールチップで畳んだ部分の内容を確認することも

定型句の挿入で作業効率をアップ ~“スニペット”プラグイン

 “スニペット(snippet)”とは、もともと英語で“切れ端”“断片”を意味する言葉。転じて頻繁に利用するテキストの断片、つまり“定型句・定型文”のことを指すようになった。高機能なテキストエディターでは、このようなスニペットを登録して簡単に利用できる機能を備えているのが一般的で、もちろん「EmEditor」にも搭載されている。

 なかでも個人的にお勧めしたいのは、スニペットのトリガー入力。キーワード+[Tab]キーでガンガン定型句を入力できる。

 たとえば、[ツール]-[プラグイン]-[スニペット]コマンドを実行し、“スニペット”サイドバーを開いた状態で、“today”と入力し、[Tab]キーを押してみよう。すると、今日の日付が入力されるはずだ。

キーワード+[Tab]キーでガンガン定型句を入力できる“スニペット

 この“today”スニペットは、“スニペット”サイドバーの[General]以下のツリーに収められている。挿入されるテキストやトリガーキーワードをカスタマイズした場合は、そこで“today”スニペットを探し、右クリックメニューからプロパティ画面にアクセスするとよい。トリガーコマンドのカスタマイズが可能だ。JavaScriptの知識が少し必要となるが、使いこなせれば強力な武器となる。

右クリックメニューからプロパティ画面にアクセス

校正に大活躍する“比較”機能

 「EmEditor」は複数の文書をタブで切り替えられるが、メインメニューの[比較]コマンドを利用すればそれらの差分(Diff)を確認できる。2つのドキュメントが自動でデスクトップの左右に並べて配置され、挿入・削除・変更された箇所がハイライトされる。

 窓の杜編集部では原稿をオンラインストレージで共有しているが、校正前のテキストと校正後のテキストを比較するのに活躍している。

2つのドキュメントを比較
違いを単一ファイルにレポート表示することも

そのほかの機能

 そのほかにも、「EmEditor」にはさまざまな機能が備わっている。マクロ機能(後述)なども活用すれば、テキスト編集の効率はもっと向上するだろう。

  • 単語補完プラグイン:文字の入力の際に、単語を補完
  • 単語数プラグイン:単語数だけでなく、指定する文字または単語の出現数を表示
  • ステータス バー:文字数、単語数、行数などを表示
  • メッセージ送信プラグイン:同僚に文書の一部を簡単に送信
  • スペル チェック機能
  • マーカー機能:指定する文字列を強調
  • 複数選択編集:[Ctrl]キーを押しながらドキュメントの複数部分を選択し、選択個所をまとめて編集

 また、最近追加されたクリップボード履歴機能もおすすめ。[Ctrl]+[V]キーや右クリックメニューから貼り付けを行うと、貼り付けられたテキストの右下に小さなボタンが現れる。このボタンをクリックして、クリップボードの履歴から好みのテキストを選択すると、先ほど張り付けられたテキストが選択したテキストに置き換えられる。テキストを切ったり貼ったりするときにこれがあるのとないとでは、作業効率に大きな差が出る。

最近追加されたクリップボード履歴機能もおすすめ

【窓の杜RECOMMENDポイント❷】工夫次第で色々使える柔軟な検索

 柔軟な検索機能も「EmEditor」の魅力のひとつ。正規表現やエスケープシーケンスに対応し、複数行の検索も行えるのはもちろん、一致する文字列の数をステータスバーへ表示する機能なども備えています。この一致する文字列の数を表示する機能は、Web上で発表された脆弱性のリストをコピペして数を数えたい時に大活躍。なん十件もある脆弱性の数を一瞬で数えることができます。

 また、一致した文字列のある行を“ブックマーク”する機能も便利。CSV形式のログデータで不要な行に共通するキーワードで検索を行い一括で“ブックマーク”し、[編集]-[ブックマーク]メニューにある[ブックマークされた行を削除]コマンドで一括削除するといった使い方をしています。

トップクラスの多機能性で幅広い用途をカバー。日本語の編集も、コーディングもこれ一つ

 さて、窓の杜の“編集者”が行うのは日本語テキストの執筆・加工だけではない。Web媒体である以上、Webコンテンツの編集、つまりHTMLやCSS、ときにはJavaScriptとのお付き合いも欠かせない。先輩から受け継がれたPerlスクリプトや、自分が長年愛用しているPowerShellスクリプトを編集する必要に迫られることもある。

 「EmEditor」は、そうしたニーズにもちゃんと答えてくれる。このテキストエディターにはさまざまな編集モード(アプリ内では“設定”と呼ばれている)を備えており、メインメニューやステータスバーで簡単に切り替えが可能。初期設定は汎用的な“Text”にセットされているが、C/C++やPerl/PHP/Rubyといったプログラミング言語、CSV/XML/JSONなどのデータ形式を幅広くサポートしている。登録済みの拡張子が付与されたファイルであれば、「EmEditor」へドラッグ&ドロップするだけで適切な編集モードに切り替わるため、多くの場合は編集モードを意識しなくても済む。

 つまり、「EmEditor」は編集者やライターでなくても役に立つわけだ。

シンタックスハイライトは“プログラマー”の味方!

 たとえばあなたが“プログラマー”であっても、「EmEditor」は有用だろう。前述したとおり、「EmEditor」は幅広いプログラミング言語とデータ形式をサポートしており、構文を解釈して色分け表示(シンタックスハイライト)してくれる。

 また、“プロジェクト”プラグインを利用すれば、開いているドキュメントやプロジェクト全体のシンボル(関数と変数の定義)一覧を表示できる。“Text”モードのアウトライン機能に相当するナビゲーションが可能だ。

 そのほかにも、カーソル上の関数や変数の名前と同じ文字列を強調できる自動マーカー機能、コンパイラーなどの各種開発ツールと「EmEditor」を連携させる外部ツール機能などが有用。連番の挿入や箱型編集といった機能も、変数の並列定義を書き換えるときに役立つだろう。

 正直なところ、コーディングに関しては「Visual Studio Code」などのコードエディターに一日の長がある。しかし、日本語ドキュメントを執筆しながらコードを参照、ときには微修正する場合には、「EmEditor」が有用なケースも多い。

“Webデザイナー”に便利なスニペット

 前述したように、「EmEditor」はWebコンテンツの編集にも向いている。つまり、“Webデザイナー”向けでもある。

 とくに、先ほど紹介した“スニペット”プラグインは優秀。HTMLでよく使用されるタグ、定型文などをトリガーキーワードですばやく入力できる。“HTML”プラグインや組み込みの構文チェックツール「CSS HTML Validator」も、Webコンテンツの制作や編集をアシストしてくれる。

 そのほかにも、以下の機能が役に立つだろう。

  • “Zen Coding(Emmet):HTMLタグの入力を簡略化する
  • HTML/XML文字参照のツールチップ表示
  • 対応するタグの強調:HTMLタグのネストが正しく行われているかをチェック
  • 外部ツール:「HTML Tidy」などの外部プログラムを「EmEditor」と連携

GB単位のログも軽々と処理。高機能なCSV編集も魅力 ~“サーバー管理者”

 ここまで、「EmEditor」が編集者・ライター、プログラマー、Webデザイナーにとって有用であることを紹介してきた。しかし、ある意味それ以上にお勧めしたい職種は、“サーバー管理者”かもしれない。

 「EmEditor」には、GB単位のファイルを軽々と扱う“巨大ファイルコントローラー”と呼ばれる機能を搭載するうえ、CSVデータの編集にも長けている。溜まりに溜まったログファイルも、「EmEditor」ならば軽々と扱えるのだ。

 詳しい方法については以前解説したことがあるので、そちらを参照してほしい。「Excel」の代わりに「EmEditor」ばかりを使うことになること、請け合いだ。

【窓の杜RECOMMENDポイント❸】強調表示で簡易自動校正

 窓の杜編集部には、たとえば“ブラウザ”ではなく“ブラウザー”と表記するといった独自の表記ルールがあります。でも、これを覚えておくのは難しいうえ、間違いを見つけるのはもっと難しいのです。

 そこで活躍するのが、“強調文字列”機能。登録したキーワードの文字色や背景色を自動で変えることが可能です。この“強調文字列”機能に間違えやすい語句を登録しておけば、独自のルールを覚えていなくても簡単に間違いを探せます。さらに、便利なのがこのルールをエクスポート・インポートできること。エクスポートしたルールを共有すれば、他の人と統一のルールを使うことができて大変便利です。

おわりに

 「EmEditor」は、日本語テキストの編集はもちろん、プログラミング言語のコーディングからWebコンテンツの編集、サーバーログの管理・分析までをカバーした高機能なテキストエディターだ。それでいて動作は軽快で、「Word」などのワープロソフトにありがちな引っ掛かりなどは皆無。長年改善が加えられてきただけあって、機能も申し分がない。

 難点をあげるとすれば、1年ごとの保守費用が上乗せされる通常ライセンスが4,800円、永久ライセンスが18,000円というテキストエディターにしては高めの価格設定だが、それに見合う価値は十分にあるといってもよいだろう。

 そして、最後にもう一点お勧めできる点として挙げておきたいのが、常に改善され続けているという点だ。老舗のテキストエディターのなかにはデザインが古臭かったり、昔ながらのインストーラーで配布されているものも少なくないが、その点「EmEditor」は比較的モダンで使いやすい。また、インストーラー版のほかにも、USBメモリなどに入れて持ち運べるポータブル版、“Microsoft Store”経由で手軽にセットアップ・アップデートできるストア版が用意されており、配布方法も多彩だ。とくにストア版は、多少の制限があるとはいえメンテナンスの手間がなく、インストール・アンインストールを繰り返しても環境が汚されることがないので筆者も愛用している。