最強CSVエディター「EmEditor」はピボットテーブルまで使える!

「EmEditor」があれば「Excel」はいらない?

ピボットテーブルが使える「EmEditor」


高度な分析機能「ピボットテーブル」まで使えるようになった「EmEditor」

 「テキストエディター」と聞いて、愛用のツールを思い浮かべるのは開発や編集に携わる人だろう。一方、エディター? と思った人、普段はExcelやWordなどのOfficeアプリを中心に作業されていると思う。何ならWindows標準の「メモ帳」の存在にも疑問を持っているかも知れない。今回紹介するテキストエディター「EmEditor」は、そんな人にこそ試して欲しいのだ。

 日本発の多機能テキストエディター「EmEditor」は、かゆいところに手が届くだけでなく、高性能なCSVエディターとしても名高い。しかも、最近のアップデートにより、Excelなどで使われるデータ分析機能「ピボットテーブル」まで使えるようになっている。

 そこで今回は、CSVファイルの処理にテキストエディターを使う理由、そして新たに搭載されたピボットテーブルの機能を紹介していきたい。これまでにもいくつかの記事で言及してきたが、CSVファイルの処理において、Excelよりも「EmEditor」が優れていると感じるだろう。


「EmEditor」があれば「Excel」はいらない?

 さて、ではまず、なぜ「CSVファイルの編集にEmEditorが有利なのか?」から説明したい。

「EmEditor」はテキストの扱いに強い

 最初のポイントは、「Shift JIS」「UTF-8」「EUC-JP」など異なるエンコードのファイルを扱えることだ。例えば、Windowsで作成したメモをスマートフォンで開いたら文字化けした。といった時、エディターで「UTF-8」エンコードに保存し直せば解決できる。

 また、文字入力時に半角と全角スペース、タブなどを「メモ帳」や標準設定の「Word」で見分けるのは困難だが、エディターなら可視化できる。そのほか、正規表現を用いた置換、ファイルの種類に応じた色分け表示、マクロによる自動処理など、エディターのメリットはさまざまあるのだ。

 「EmEditor」はこれらの機能を搭載しているほか、データの並べ替えやフィルタリング、入力補完などにも対応。「Excel」は不要なのではないかとも思ってしまう。以下に郵便局のWebサイトからダウンロードした同じCSVファイルを「Excel」と「EmEditor」で開いた。

CSVファイルを「EmEditor」で開いた
CSVファイルを「Excel」で開いた

 「EmEditor」では、半角スペースや「"」などのゴミが見えるが、検索・置換や後述の[CSVコンバーター]の機能で一気に成形できるし、一時的に非表示にしたいなら、[並べ替え] ツール バーの [一時的に引用符を非表示] ボタンをクリックして非表示にできる。また、CSVの読み込みは「カンマ区切り」が標準だが、「タブ区切り」「セミコロン区切り」「固定列幅」への切り替えにも対応する。CSVエディターとして至れり尽くせりである。

「Excel」は自動処理が仇に

 むしろ「Excel」でCSVファイルを開いた場合のデメリットを知っておきたい。自動処理により以下のようなデータの改変が行なわれてしまうことがある。


    【ExcelでCSVファイルを開いた際に困りがちなこと】
  • 先頭の「0」が消えてしまう
  • 桁数の多い数値が「E+」で表示されてしまう
  • 意図しない文字列が「日付」として判断されてしまう


25年、使われ続けてきた超強力エディタ「EmEditor」数TBもの大容量ファイルも高速処理、CSV編集やバイナリ編集も……

 本題に入る前に、「EmEditor」とはどんなエディタなのか、簡単に紹介しておこう。

 初代の「EmEditor Free v.1.00」がリリースされた1997年から25年、本稿執筆時点で最新バージョンは「21.7」だ。25年たった今でも、バージョンを重ねるごとに機能強化され続けており、箱形編集やバイナリエディタとしての編集機能、複数個所の同時編集、そして今回のテーマであるCSV編集など、紹介しきれないほどの進化を遂げている。そして、バージョン「21.4」ではExcelなどが備える分析機能「ピボットテーブル」にも対応、CSVデータの扱いに磨きがかかっている。

 また、そもそもの「EmEditor」は巨大ファイルでも高速に処理できるのが大きな特徴。内蔵する「巨大ファイル コントローラー」により、メモリが許す限り16TB、または1.09兆行のファイルを扱える(64ビット版 EmEditorの場合)という。もはや想像が及ばないのだが、顧客情報や在庫データ、ログファイルなどの一般的なデータは一瞬のうちに処理できるだろう。EmEditor公式サイトに巨大ファイルを扱う動画が掲載されているので参照して欲しい。

フリーソフトとしても利用可能だが、最強CSVエディターとして使うなら有料版を

 なお、「EmEditor」はフリーソフトとして紹介されることもあるが、それは「EmEditor Free」のこと。無料版でもエディターとしての基本機能は十分に備えているが、本来の性能をフル活用するなら有料版の「EmEditor Professional」がおすすめだ。CSVエディターとして利用する場合は有料版が必要になる。

 EmEditor公式サイトから購入可能。年間サブスクリプション(初年度のみ 税込み5,280円、2年目以降は半額)、買い切りの永久ライセンス(税込み33,264円)から選べる。また、「EmEditor Free」をダウンロード後、試用期間の30日は「EmEditor Professional」の機能をすべて試すことができる。

 また、Windows 10/11であれば“Microsoft Store”から入手できるストアアプリ版も利用できる(年額2,350円)。機能は若干制限されるが、インストールやアップデートの手間が省ける(なお、これらの価格は記事掲載時点のもの。為替レートの変動や価格改定などで変わる可能性もある)


ついに搭載された「ピボットテーブル」!
EmEditorで分析・データ加工まで自在に可能!

 では、いよいよ本題となる「ピボットテーブル」を使ってみよう。

 バージョン「21.4」から搭載された機能だが、なんとExcelでも人気の分析機能「ピボットテーブル」を扱えるのだ。エディターなのに、である。

 CSVファイルを扱うには「EmEditor」のウィンドウにドラッグするだけ。自動的にCSVファイルとして認識されて「セル選択モード」となる。


チケット販売実績データから販売店ごとの販売数を集計

 ここでは、チケットの販売実績の一覧表を元にピボットテーブルへ切り替える。見出し行が含まれる場合は「ヘディング」することを忘れずに。ヘッダーとして認識させる行数分メニューから選択する。

 続けて[ピボットテーブル]ダイアログボックスから、ピボットテーブルの「行」「列」「値」を指定する。ダイアログボックス内に格子線が入っているので、左端の見出しとなる「行」、上端の見出しとなる「列」、中心に集計する「値」と考えると結果をイメージしやすいだろう。

【ピボットテーブルを作成】
[並べ替え]ツールバーを表示しておく(後述)。[ヘディング]ボタンをクリックして見出しの行数分「ヘディング」する。ここでは[ヘディング1]を選択した
ヘディングが指定された行は黄色で表示される。[ピボットテーブル]をクリックする
[ピボットテーブル]ダイアログボックスが表示された。ピボットテーブルの「行」「列」「値」を指定する。ここでは「行」に[販売店]、並べ替えは昇順、「列」に[席]、並べ替えは昇順、「値」は[販売数]とした。[列の合計][行の合計]は集計値を合計するかどうかのチェックボックスだ
ピボットテーブルに変換された

 ピボットテーブルから一覧表に戻すには[ピボット解除]ボタンをクリックする。ピボットテーブル変換前の状態に戻るわけではない。ピボットテーブルの集計結果を一覧表に切り替える意味合いだ。元の状態に戻したいなら[Ctrl]+[Z]キーで元に戻そう。

【ピボットテーブルを解除】
ピボットテーブルに変換した状態で[ピボット解除]をクリックする
[ピボット解除]ダイアログボックスが表示された。[属性の名前]はピボットテーブルで上端の見出し(列)のことだ。ここでは「席」とした[値]は集計値なので「計」とした。[販売店]は残すのでチェックをはずした。[フッター]は一覧表に切り替える際に“含めない”範囲を示す。8行目の「総計」行と9行目の空行は不要なので[2]とした
ピボットテーブルが一覧表に切り替わった


チケット販売実績データから日付ごとの販売数を集計

 ピボットテーブルは、大量のデータをさまざまな視点で分析する機能なので唯一の正解があるわけではない。元の表は同じでも「行」「列」「値」を切り替えれば表示結果は異なる。以下では「行」に[販売店]、「列」に[販売日]、「値」に[販売数]としてみた。

【ピボットテーブルを作成(1)】
元の状態から[ピボットテーブル]ダイアログボックスを表示しておく。ここでは「行」に[販売店]、並べ替えは昇順、「列」に[販売日]、並べ替えは昇順、「値」は[販売数]とした
ピボットテーブルに変換された。元のデータは同じでも先ほどと表示結果は異なる

 なお、視点を変えるには単純な「行列入れ替え」も有効だ。[並べ替え]ツールバーの[行/列の入れ替え]ボタンをクリックする。

【ピボットテーブルを操作(2)】
[ヘディング]ボタンをクリックしておく[並べ替え]ツールバーの[並べ替え]ツールバーの[行/列の入れ替え]ボタンをクリックすれば、表の行列が入れ替わる


「EmEditor」でCSVデータを加工しよう!

 ピボットテーブルでデータを整理した後、データを加工することも多いだろう。

 「データ加工」というと大仰だが、要するに「データの検索や置換」なので、ここはそもそも「EmEditor」が得意とするシーンだ。

 キーワードや正規表現による複雑な置換も高速に行えるし、2つのファイルの比較、重複行や空白行の削除、フォルダーに含まれるファイルを対象に検索する「ファイルから検索」など、業務上の処理は網羅している。

 なお、データ加工を始める前にツールバーをカスタマイズしておくと便利。初期状態では標準のツールバーのみ表示されている。メニューバー、もしくはツールバーの何もないところを右クリックして必要なツールバーにチェックを付ける。「EmEditor Professional」の機能にすばやくアクセスしたいなら[CSV][検索][フィルター][並べ替え]は表示しておくと便利だ。

メニューバー、もしくはツールバーの何もないところを右クリック。[CSV][検索][フィルター][並べ替え]はチェックしておくと便利
【「yyyy/mm/dd」形式の区切り文字を「-」に置換する】
「yyyy/mm/dd」形式の日付の区切り文字を「-」に置換する。入力したキーワードに一致する箇所はハイライトで強調される
【メニューからも選択OK】
検索する正規表現は直接入力のほか、[>>]をクリックして表示されるメニューから選択することも可能
【「セル選択モード」でファイルを比較】
ファイル比較は一般的なエディターにも搭載される機能だが、CSVファイルを「セル選択モード」で比較できるメリットは大きい
【フォルダー内をまとめて検索・置換】
特定のフォルダー内にあるファイルに対して検索・置換できる

 CSVファイルの処理能力は試用期間でぜひ試してほしい。これは驚かされること必至と思う。


フィルタリングも自由自在

 データの並べ替えやフィルターが使えるため、テキストの編集作業に続けてデータの整理もできてしまうのだ。複数列での並べ替えのほか、「○○でない」といった指定したキーワードを否定するフィルタリングも可能だ。

【並べ替えの操作例】
ヘッダーとして固定したい行数分「ヘディング」しておく
[並べ替え]ツールバーの[大きい順から小さい順へ並べ替]えボタンをクリックして売上金額を並べ替えた
[高度な並べ替え]ダイアログボックスを呼び出し、複数列での並べ替えも可能
「上野」をキーワードにフィルタリングした。[フィルター]ツールバーの右端にある数値のプルダウンでは合致するデータを基準に、上下に余分に表示する行数を指定できる。完全一致でフィルタリングする時は[0][0]と指定する

引用符の削除や列の結合・分割も簡単

 CSVファイルを開いた後に気づく処理も多い。引用符の「"」(ダブルクォーテーション)が邪魔なのは代表例。不要な列の削除のほか、列の結合が必要なケースもある。固定の文字幅で分割したいこともあるだろう。すべて「EmEditor」で処理できる。

【不要な「"」をまとめて削除】
[並べ替え]ツールバーの[CSVコンバーター]ボタンをクリックする。不要な「"」(ダブルクォーテーション)は[不要な引用符を削除]で一発解決だ
不要な列を選択して削除できる
列の結合も同様。コピー&ペーストを繰り返す必要はない
固定文字幅での「区切り直し」も簡単に指定できる


CSVファイルのネストもお手のもの

 [CSVの結合]の機能も高性能だ。例えば、一意のキーを持つ商品テーブルとネストする形のテーブルがあった場合、表形式の異なる2つのテーブルを「結合」できる機能だ。リレーショナルデータベースにおけるテーブル結合の概念を踏襲している。リレーションシップのあるテーブル情報をCSV形式のファイルで処理する必要があるなら作業ツールのひとつとして「EmEditor」を検討してもいいだろう。

【「CSVの結合」も高機能】
形式の異なるCSVファイル(テーブル)でも意図通りの結合が可能

まとめ

 主に「EmEditor Professional」の機能紹介となったが、無料版の「EmEditor Free」が機能不十分なわけではない。CSVファイルの操作に関わる機能などが省かれているだけで、基本的なエディターとして十分な性能なのだ。というより、そもそもの「EmEditor」が「スムーズな操作感」を第一につくられているため、ほかのエディターよりもレスポンスがいい。

「EmEditor Free」のインターフェイス。「EmEditor Professional」と「EmEditor Free」の違いはEmEditor公式サイトに掲載されている

 文章を入力する機会の多い人にとって、すばやい起動とレスポンスの良さは必須。ストレスなく作業できることがアウトプットにも影響するだろう。テキスト検索・置換、ファイルの種類ごとの色分け、折り返し文字数の指定、禁則処理など、一般的な編集作業であれば無料版でほぼ問題ない。

エディターを使ったことがない人や、今使っているエディターに納得できていない人は「EmEditor」を試してみてはいかがだろう。ここで紹介した機能を使うためのアップグレードはUI上からいつでも可能だ。

[制作協力:Emurasoft, Inc.]

ソフトウェア情報

「EmEditor Professional」
【著作権者】
Emurasoft, Inc.
【対応OS】
64bit版を含むWindows 7/8.1/10およびWindows Server 2008 R2以降
【ソフト種別】
シェアウェア 年額税込み5,280円(2年目以降は半額、永久ライセンスは税込み33,264円、30日間の試用期間後は個人利用に限り機能制限のある無償版「EmEditor Free」として使用可能)
【バージョン】
21.7.1(22/5/20)