柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【ハンコ出社をなくそう!】PDFに自分のハンコを画像にして押す方法

Excel&Acrobatでできる! 社外の電子契約書にも使える!

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
今回はPDFにハンコの画像を押す方法をご紹介。こんな感じでPDFに自分の印鑑を押してみよう!

 社内の申請を承認する際、まだ紙とハンコを使っている会社はないだろうか。書類を印刷し、紙を回し、押印し、回収する。ハンコの押し方が悪ければ、また印刷し直しとなる。日数がかかって催促するにしても、どこに紙があるのかわからない。それどころか、回っている最中に行方不明になることもある。

 コロナ禍で緊急事態宣言が出たときに、経理部門のハンコ出社がニュースになったが、テレワークが広まる中、ハンコを押すために出社しなければならないのは効率が悪いにもほどがある。

 中小企業であれば、高価な電子承認システムを入れなくても、無料ソフトを組み合わせてハンコを押すことができる。電子申請の仕組みを導入できれば、ハンコ出社もなくせるはず。今回は、申請書のPDFに電子印鑑を押す方法を紹介しよう。

本物のハンコの印影を取り込んで透過GIF形式にする

 ハンコを押すPDFツールは無料の「Acrobat Reader」が使える。

 標準で電子印鑑の機能を備えているのだが、ユーザーの名前と日付を入れるだけのシンプルなもの。ちょっとハンコのイメージとは異なるので、抵抗があるという人もいるだろう。そこで、これまで使っていた本物のハンコの印影を押せるようにしてみよう。

「Acrobat Reader」の電子印鑑機能。シンプルだが、ちょっとハンコのイメージとは異なる

 印影を画像にするだけなら、カメラアプリで撮ればよいのだが、いろいろと作業する必要がある。まずは、綺麗に取り込み、PNG画像に変換して透過設定をしなければならないのだ。手間はかかるが、一度印影のデータを作れば、それ以降は押すだけなので、時間のある時にチャレンジしてほしい。

 まずは、印影を画像にする。通常のカメラアプリだと部屋の照明によっては暗く映ってしまうので、ドキュメントスキャンアプリを使ってくっきりと取り込む必要がある。おススメは無料の「Adobe Scan」アプリだ。

Android版「Adobe Scan」のダウンロードはこちら

iOS版「Adobe Scan」のダウンロードはこちら

 白い紙にハンコを押し、印影をアップで撮影する。ピンボケしてなければトリミングし、保存する。標準ではPDFで保存されるのだが、保存後はJPEG形式でダウンロードできる。

白い紙にハンコを押す
「Adobe Scan」で撮影してトリミングする
スキャンしたような画像に補正されて保存されるので、JPEG画像をダウンロードする

 次は、JPEG画像をWindows標準アプリの「ペイント」に読み込み、そのまま[ファイル]メニューから[名前を付けて保存]-[PNG 画像]を選択する。JPEG画像のままだと透過設定ができないためだ。

 画像に印影以外の汚れなどが写っている場合は、「ブラシ」機能で白色を選択して塗りつぶせばよい。とはいえ、リアルな陰影を求めているなら、そこまで気にする必要はないだろう。

 もし、印影のスキャン画像が大きすぎる場合は、押印したときのサイズ調整が面倒なので、ツールバーの[イメージ]-[サイズ変更と傾斜]-[サイズ変更]で小さくしておこう。

「ペイント」アプリで、PNG形式の画像にする

 続いて、Excelの[挿入]メニューから印影を読み込み、[図の形式]タブの[色]をクリック。色のパターンメニューが開くので、下の[透明色を指定]を選択する。マウスポインターがスポイトのアイコンになるので、白い部分をクリック。すると、それまで白かった部分が透明になり、セルの罫線が見えるようになる。もちろん、赤い部分はそのまま残る。これで透過設定は完了だ。

[透明色を指定]をクリックする
スポイトで透過させたい色を選択する

 保存の際もひと手間かかる。[ホーム]の[名前を付けて保存]をクリックしたら、ファイル形式は[Webページ(*.htm,*.html)]を選択して[保存]をクリックする。ブックの一部機能が失われると警告が出るが、[はい]をクリックする。

「Webページ(*.htm,*.html)」形式で保存する

 保存場所にフォルダーが作成されているので、その中にある「image001.png」が印影データとなる。二度手間にならないように、きちんとファイル名を付けて管理しておこう。自分宛てにメールしたり、クラウドサービスにアップロードして、ほかの端末からも簡単にアクセスできるようにしておくと便利だ。

印影データの「image001.png」が完成した

「Acrobat」で稟議書に承認の電子印鑑を押す

 PDFツールの「Acrobat」(Acrobat Readerも同様)を開き、[ツール]から[スタンプ]を選択。第二ツールバーが現れたら[カスタムスタンプ]-[作成]をクリックし、[参照]から作成した印影を読み込ませる。

「スタンプ」ツールを開き、「カスタムスタンプ」メニューから「作成」をクリックする
[参照]をクリックして印影データを読み込ませ、[OK]をクリック

 続けて、カスタムスタンプの名前と分類を設定する。分類は[電子印鑑」を選択しておけばよいだろう。初回登録時は、ユーザー情報の設定を行うダイアログが出るので、名前や会社名、役職などを入力する。

登録した電子印鑑の名前と分類を設定して[OK]をクリックする
氏名や会社名などを登録する

 これでいよいよ準備完了。早速、稟議書に承認印を押してみよう。[スタンプ]ツールの[スタンプパレット]を開き、プルダウンメニューから[電子印鑑]を選ぶと、登録した印影が現れるのでクリックする。

[スタンプパレット]から[電子印鑑]をクリック
登録した印影が現れるのでクリックする

 その時点で、印影がPDFに表示され、マウスで動かせるようになっており、任意の場所でクリックすると押印される。とはいえ、クリックした後に、印影の位置やサイズを調整できるので、適当に押してもよい。

押したい場所をクリックして印影のサイズを調整する

 印影を選択した状態だと、青い枠が表示されてサイズを変更できる。押印する枠に合わせて、拡大・縮小すればよい。

 筆者は無駄な慣習だと思うが、おじぎ印鑑にも対応する。承認者が複数いる場合、その中で一番偉い人に向けて、印鑑を斜めに押すことがあるそうだ。部長がトップなら課長は少し斜めにして、部下はもっと傾けるといった具合だ。青枠の上に飛び出ている「〇」マークをドラッグすることで、印影を回転できるので任意の傾き具合にすればよい。

選択枠の丸印をクリックすると、回転させることもできる

 次回以降、もっと簡単に押印したいなら、[スタンプ]メニューから[現在のスタンプをお気に入りに追加]をクリックしよう。お気に入りに登録されると、[スタンプ]メニューの上部に表示されるようになるので、スタンプパレットを開く手間が省けるのだ。

[現在のスタンプをお気に入りに追加]をクリックする
[スタンプ]メニューを開くと、上部に表示されるので簡単に押印できる

 以上が、PDFに自分のハンコの印影を電子印鑑にして押印する方法となる。一度作成した印影データは、社内申請だけでなく、社外の人から電子契約書に押印を求められたときにも利用できる。予算がなくても、無料ソフト&Excelで電子印鑑を作れるので、ぜひチャレンジしてほしい。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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