柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」
【PDFにコメントを入力したい!】PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法
レビューの依頼から取りまとめをまるっと自動化する“神機能”も紹介
2023年5月16日 06:55
デザインや原稿などの成果物をレビューする際もPDFが活躍する。紙にペン書きするように、PDFに注釈を入れられるのだ。PDFツールによって利用できる機能が異なるが、基本的な注釈機能は使いこなせるようにしておこう。例えば、フリーハンド描画ができるが、何でもかんでも全部手書きしていては、作業効率も落ちるし、受け取るほうも読みにくい。文字が汚いならなおさらだ。
今回は「ノート注釈」「フリーハンド」「テキストボックス」「ハイライト、下線、取り消し線」「図形の追加」などの入れ方を紹介する。
また「Acrobat」を使って、レビューの依頼から取りまとめまでを行う方法も解説する。メールでレビューを依頼し、全員から返信を受け取り、催促、取りまとめるといった作業がまるっと自動化される神機能なので、ぜひチェックしてほしい。
PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法:「PDF-XChange Editor」編
まずは「PDF-XChange Editor」で、パンフレットの制作物をレビューしてみよう。
[コメント]タブを開くと、多数のツールが並んでいる。PDF内に指示を書くなら、[テキストボックス]をクリックし、任意の場所にテキストを入力する。場所やサイズは後で調整できるので、まずは適当でOK。
テキストボックスの枠や地の色を変更するなら、[テキストボックス]アイコンを右クリックする。さらに色や枠の太さ、透過率などを細かく設定するなら、[コメントスタイルパレット]を開けばよい。
文章を入れ替えたり、長文のコメントを残す際は[付箋]をクリック。PDF上にはコメントマークだけがつき、別ウィンドウで文章の入力、閲覧を行う。
PDFの内容によっては「テキストボックス」を入れても、具体的にどこへの指示なのかわからないことがある。そんなときは[吹き出し]を利用し、矢印を指定箇所に向けることで、はっきりと注釈を入れられるようになる。
ほかにも、「テキストマークアップ」には文字をハイライトする[強調]や[下線]、[取り消し線]などのアイコンが用意されているので、目的に合わせて使い分けよう。
「図形」の[鉛筆ツール]をクリックすれば、フリーハンドで書き込める。もちろん、文字も入力できるが、基本的には図を描いたり、指示する箇所を囲んだりする用途に使うといいだろう。
また[スタンプ]では「DRAFT」や「FINAL」といったスタンプを押せる。PDFがどんな文書なのかがはっきりとわかるし、何よりカッコいいので使ってみよう。
なお、PDFツールによっては、文書の内容を直接編集できることがあるが、レビューを依頼されているのであれば、勝手に編集してしまうと修正箇所が伝わらなくなるので、注釈を入れるようにしよう。
PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法:「Acrobat Reader」編
次に、無料で使える「Acrobat Reader」でレビューしてみよう。
[すべてのツール]から[コメントを追加]をクリックすると、ツールバーが現れる。続けて[コメント]アイコンをクリックすると、メニューが現れるので[テキストコメントを追加]をクリック。任意の場所をクリックすれば、コメントを入力できる。
文字入力中にツールバーの一番下にあるアイコンをクリックすれば、文字サイズや位置、色などを選択できる。テキストボックスそのものを選択した状態で、一番下のアイコンをクリックすれば、背景の色や境界、不透明度などを選択できる。
また[コメントを追加]で長文コメントを入力できる。ほかの人が作成したコメントに返信を追加することも可能だ。
文字装飾はメニューから選んでもいいし、テキストを選んだときに表示されるメニューからアイコンをクリックしてもよい。ハイライト、下線、取り消し線が利用できる。[墨消し]や[編集]アイコンも表示されているが、無料アカウントでは利用できない。
「引き出し線付きテキストボックス」は、図形描画メニューの中にある。ほかの操作と同じく、文字や枠を選択した状態で、ツールバーの一番下に現れるアイコンをクリックすると細かい設定ができる。
「Acrobat Reader」でもスタンプが用意されている。ツールメニューから[スタンプを追加]をクリックし、「スタンプパレット」を表示する。標準/署名/ダイナミックなどのカテゴリーにさまざまなスタンプが用意されている。
標準には「承認済み」「却下」「草稿」「最終」「完了」「極秘」などのスタンプが用意されている。ダイナミックには「レビュー済」「承認済み」などの文言に加え、スタンプを押した日時も自動的に入れられるのが便利だ。
「Acrobat」ならレビュー依頼から取りまとめまで行える!
「Acrobat」のサブスクプランを契約していれば、「コメントを依頼」機能を使ってレビューの依頼が行える。しかも、単に依頼できるだけでなく、依頼された側はWeb上でレビューが行えるのだ。さらには、追加したコメントはリアルタイムに共有される。
通常であれば、メンバー全員にPDFを送ってレビューを依頼し、返信がない人に催促し、最終的に全員分のPDFを開いて修正指示などを取りまとめる必要がある。しかし、「コメントを依頼」機能を使えば、これらの作業がまるっとなくなるのだ。
まずは、ツール一覧から[共有とレビュー]-[コメントを依頼]をクリックし、レビューを依頼する相手のメールアドレスを追加する。レビューの依頼文を書き、もちろん[注釈を許可]をONにしたまま、[送信]をクリックすればよい。[期限を指定]をクリックすれば、タイムリミットをカレンダーから選択できる。
すると、WebブラウザーでPDFが開くので、「Adobe ID」を持っている人はログインすると名前が表示される。「Adobe ID」を持っていない人は、名前だけ入力してゲストアカウントとしてレビューすることもできる。便利ではあるが、履歴を残したり、メンションを利用するなら、全員が「Adobe ID」を取得することをおすすめする。
Webブラウザー上だと、テキストボックスが使えなかったり、描画ツールの数が少なかったりと少し制限はあるが、コメントは付けられるので問題はないだろう。「Adobe ID」でログインしている人には「@」マークでメンションを付けることもできる。メンションが付くとメールで通知が届くので、コメントを見逃さずに返信できる。
コメントはリアルタイムに元のPDFに反映されるので、依頼者は手間をかけずに全員分のレビューを収集し、1つのPDFに集約できるのがありがたい。この手軽さは癖になるので、ぜひ試してほしい。「Acrobat」のサブスク契約をする大きな理由の1つになるはずだ。
以上が、PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法となる。レビューを行ったり、依頼する際、我流で適当に行うと業務効率が悪くなる。PDFのコメント機能を活用して、スマートにレビューしてほしい。
次回は、PDFのテキストや画像などを編集する方法について紹介する予定だ。プレゼン直前で資料にミスを見つけたときなどでも、慌てずにさくっと修正できるので、ぜひチェックしてほしい。
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/