柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【PDFにコメントを入力したい!】PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法

レビューの依頼から取りまとめをまるっと自動化する“神機能”も紹介

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
今回はPDFファイルをレビューして注釈を追加する方法をご紹介する

 デザインや原稿などの成果物をレビューする際もPDFが活躍する。紙にペン書きするように、PDFに注釈を入れられるのだ。PDFツールによって利用できる機能が異なるが、基本的な注釈機能は使いこなせるようにしておこう。例えば、フリーハンド描画ができるが、何でもかんでも全部手書きしていては、作業効率も落ちるし、受け取るほうも読みにくい。文字が汚いならなおさらだ。

 今回は「ノート注釈」「フリーハンド」「テキストボックス」「ハイライト、下線、取り消し線」「図形の追加」などの入れ方を紹介する。

 また「Acrobat」を使って、レビューの依頼から取りまとめまでを行う方法も解説する。メールでレビューを依頼し、全員から返信を受け取り、催促、取りまとめるといった作業がまるっと自動化される神機能なので、ぜひチェックしてほしい。

PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法:「PDF-XChange Editor」編

 まずは「PDF-XChange Editor」で、パンフレットの制作物をレビューしてみよう。

 [コメント]タブを開くと、多数のツールが並んでいる。PDF内に指示を書くなら、[テキストボックス]をクリックし、任意の場所にテキストを入力する。場所やサイズは後で調整できるので、まずは適当でOK。

[テキストボックス]をクリックして任意の部分にテキストを追加する

 テキストボックスの枠や地の色を変更するなら、[テキストボックス]アイコンを右クリックする。さらに色や枠の太さ、透過率などを細かく設定するなら、[コメントスタイルパレット]を開けばよい。

ツールバーのアイコンを右クリックするとパターンを変更できる
「コメントスタイルパレット」ではさらに細かい設定が可能

 文章を入れ替えたり、長文のコメントを残す際は[付箋]をクリック。PDF上にはコメントマークだけがつき、別ウィンドウで文章の入力、閲覧を行う。

[付箋]をクリックして長文を注釈として入力する

 PDFの内容によっては「テキストボックス」を入れても、具体的にどこへの指示なのかわからないことがある。そんなときは[吹き出し]を利用し、矢印を指定箇所に向けることで、はっきりと注釈を入れられるようになる。

 ほかにも、「テキストマークアップ」には文字をハイライトする[強調]や[下線]、[取り消し線]などのアイコンが用意されているので、目的に合わせて使い分けよう。

[強調]をクリックして文字をハイライトしたり、[吹き出し]をクリックして矢印付きのテキストボックスを追加する

 「図形」の[鉛筆ツール]をクリックすれば、フリーハンドで書き込める。もちろん、文字も入力できるが、基本的には図を描いたり、指示する箇所を囲んだりする用途に使うといいだろう。

[鉛筆ツール]を使えば、フリーハンドで書き込める

 また[スタンプ]では「DRAFT」や「FINAL」といったスタンプを押せる。PDFがどんな文書なのかがはっきりとわかるし、何よりカッコいいので使ってみよう。

[スタンプ]から「DRAFT」を追加してみた

 なお、PDFツールによっては、文書の内容を直接編集できることがあるが、レビューを依頼されているのであれば、勝手に編集してしまうと修正箇所が伝わらなくなるので、注釈を入れるようにしよう。

PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法:「Acrobat Reader」編

 次に、無料で使える「Acrobat Reader」でレビューしてみよう。

 [すべてのツール]から[コメントを追加]をクリックすると、ツールバーが現れる。続けて[コメント]アイコンをクリックすると、メニューが現れるので[テキストコメントを追加]をクリック。任意の場所をクリックすれば、コメントを入力できる。

 文字入力中にツールバーの一番下にあるアイコンをクリックすれば、文字サイズや位置、色などを選択できる。テキストボックスそのものを選択した状態で、一番下のアイコンをクリックすれば、背景の色や境界、不透明度などを選択できる。

「テキストボックス」を入力してみた

 また[コメントを追加]で長文コメントを入力できる。ほかの人が作成したコメントに返信を追加することも可能だ。

[コメントを追加]をクリックすれば、長文コメントを入力できる

 文字装飾はメニューから選んでもいいし、テキストを選んだときに表示されるメニューからアイコンをクリックしてもよい。ハイライト、下線、取り消し線が利用できる。[墨消し]や[編集]アイコンも表示されているが、無料アカウントでは利用できない。

文字を選択して[テキストをハイライト表示]をクリック

 「引き出し線付きテキストボックス」は、図形描画メニューの中にある。ほかの操作と同じく、文字や枠を選択した状態で、ツールバーの一番下に現れるアイコンをクリックすると細かい設定ができる。

図形メニューから「引き出し線付きテキストボックス」を追加したところ

 「Acrobat Reader」でもスタンプが用意されている。ツールメニューから[スタンプを追加]をクリックし、「スタンプパレット」を表示する。標準/署名/ダイナミックなどのカテゴリーにさまざまなスタンプが用意されている。

 標準には「承認済み」「却下」「草稿」「最終」「完了」「極秘」などのスタンプが用意されている。ダイナミックには「レビュー済」「承認済み」などの文言に加え、スタンプを押した日時も自動的に入れられるのが便利だ。

[スタンプを追加]の「スタンプパレット」からスタンプを選ぶ

「Acrobat」ならレビュー依頼から取りまとめまで行える!

 「Acrobat」のサブスクプランを契約していれば、「コメントを依頼」機能を使ってレビューの依頼が行える。しかも、単に依頼できるだけでなく、依頼された側はWeb上でレビューが行えるのだ。さらには、追加したコメントはリアルタイムに共有される。

 通常であれば、メンバー全員にPDFを送ってレビューを依頼し、返信がない人に催促し、最終的に全員分のPDFを開いて修正指示などを取りまとめる必要がある。しかし、「コメントを依頼」機能を使えば、これらの作業がまるっとなくなるのだ。

 まずは、ツール一覧から[共有とレビュー]-[コメントを依頼]をクリックし、レビューを依頼する相手のメールアドレスを追加する。レビューの依頼文を書き、もちろん[注釈を許可]をONにしたまま、[送信]をクリックすればよい。[期限を指定]をクリックすれば、タイムリミットをカレンダーから選択できる。

ツール一覧から[共有とレビュー]-[コメントを依頼]をクリックする
メールアドレスと依頼文を入力して[送信]をクリック
カレンダーで期限を設定することもできる
依頼メールが届いたら[開く]をクリックする

 すると、WebブラウザーでPDFが開くので、「Adobe ID」を持っている人はログインすると名前が表示される。「Adobe ID」を持っていない人は、名前だけ入力してゲストアカウントとしてレビューすることもできる。便利ではあるが、履歴を残したり、メンションを利用するなら、全員が「Adobe ID」を取得することをおすすめする。

「Adobe ID」でログインしてレビューできる。「@」でメンションを付けることも可能だ
「Adobe ID」を持っていなくても、名前を入力してレビューできる

 Webブラウザー上だと、テキストボックスが使えなかったり、描画ツールの数が少なかったりと少し制限はあるが、コメントは付けられるので問題はないだろう。「Adobe ID」でログインしている人には「@」マークでメンションを付けることもできる。メンションが付くとメールで通知が届くので、コメントを見逃さずに返信できる。

 コメントはリアルタイムに元のPDFに反映されるので、依頼者は手間をかけずに全員分のレビューを収集し、1つのPDFに集約できるのがありがたい。この手軽さは癖になるので、ぜひ試してほしい。「Acrobat」のサブスク契約をする大きな理由の1つになるはずだ。

ツールバーのアイコンをクリックしてレビューする
労せずして、複数人のレビューをまとめたPDFが完成した

 以上が、PDFファイルをレビューして注釈を追加する方法となる。レビューを行ったり、依頼する際、我流で適当に行うと業務効率が悪くなる。PDFのコメント機能を活用して、スマートにレビューしてほしい。

 次回は、PDFのテキストや画像などを編集する方法について紹介する予定だ。プレゼン直前で資料にミスを見つけたときなどでも、慌てずにさくっと修正できるので、ぜひチェックしてほしい。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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