柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【PDFにパスワードをかけたい!】勝手にPDFを印刷したり編集できないようにする方法

情報漏えいや盗用が心配なら使い方をマスターしよう!

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
今回はPDFにパスワードをかける方法をご紹介する

 PowerPointで渾身のプレゼン資料が完成し、そのまま社外へ渡す場合、誰でも中身が見られるし、編集もできる。それでは、情報漏えいや盗用が心配、というのであればPDFファイルに変換しよう。

 PDFファイルはこれまで紹介してきたように自由に編集することもできるのだが、逆に、パスワードをかけて閲覧や編集を制限することもできるのだ。PDFの大きな便利機能の一つなので、ぜひ活用したいところ。

 Windowsの場合、無料のPDFツールだとセキュリティ機能を搭載していないことが多い。今回も、有料の「Acrobat」を使って、パスワードをかける方法を紹介する。

PDFの“閲覧”をパスワードで制限する

 PDFにパスワードをかける方法はいくつか用意されているが、王道で行くなら「Acrobat」の[ツール]から[セキュリティ設定]をクリック。第2ツールバーが開いたら[パスワードを使用して保護]をクリックする。

「Acrobat」の[ツール]から[セキュリティ設定]を開く
第2ツールバーの[パスワードを使用して保護]をクリック

 セキュリティは「閲覧」と「権限」の2種類が用意されている。PDFの内容を表示する前にパスワードを求めるのが「閲覧」だ。まずは[閲覧]にチェックし、パスワードを2回入力する。簡単な文字列だと推測されてしまうので、複雑なパスワードをつけよう。

[閲覧]にチェックしてパスワードを入力する。脆弱な文字列だと警告が表示される
パスワードを再入力したら[適用]をクリックする

 設定し終わったら、PDFを保存して一度「Acrobat」を終了。再度、PDFを開いてみよう。すると、「Acrobat」が起動する前に、ダイアログが開き、パスワードを求められる。ここで、設定したパスワードを入力すれば、PDFの内容が表示されるのだ。

PDFを開くと、パスワードを求められる。
パスワードを入力するとPDFを閲覧できる。

 例えば、取引先に資料を送る際、間違えてほかの人にPDFを送信しても、パスワードを教えない限りは開くことができないので情報漏えいの防止になる。

 ちなみに、PDFをメールで送信する場合、パスワードはビジネスチャットや電話など、別の方法で伝達するとセキュリティが高まる。連続してメールで送信する場合、誤送信相手にパスワードを伝えてしまいかねないからだ。

PDFの“編集”をパスワードで制限する

 では、今度は編集機能に制限をかけてみよう。「セキュリティ設定」のツールバーから[パスワードを使用して保護]をクリックし、今度は[編集]にチェックを入れてパスワードを入力する。[適用]をクリックしてPDFを保存、再度開き直してみよう。

「編集」にチェックを入れてパスワードを設定する

 閲覧制限がかかっていないなら、そのままPDFが表示されるが、編集しようとすると、パスワードを入力するダイアログが表示される。ここでパスワードを入力すれば、編集できるようになる。

閲覧はできるが、編集しようとするとパスワードを求められるようになる
正確なパスワードを入力できないと、編集できない

 この方法では、テキストの編集をはじめ、オブジェクトの移動、フォームフィールドの追加が禁止される。もちろん、フォームフィールドへの入力や署名、注釈は追加可能だ。

 これなら、PDFの内容を改変されたくない、というときに利用できる。ちなみに、閲覧制限と編集制限のパスワードを同じにすることはできない。必ず、別のパスワードを設定すること。

印刷や変更、コピーなど細かい挙動はプロパティで設定可能

 ツールメニューからの設定だと、ざっくりした編集機能の制御しかできない。

 例えば、前述の方法だと印刷は禁止されていない。細かくセキュリティ機能を管理するなら、第2ツールバーの[詳細オプション]から[セキュリティプロパティ]を開き、[セキュリティ方法]-[パスワードによるセキュリティ]-[設定を変更]をクリックする。

第2ツールバーの[詳細オプション]から[セキュリティプロパティ]を開く
[パスワードによるセキュリティ]-[設定を変更]をクリック

 「パスワードによるセキュリティ」の設定画面が開くので、閲覧と編集の設定を変更しよう。閲覧制限をかけるなら、「文書を開くときにパスワードが必要」にチェックし、パスワードを設定する。

 また、編集を制限するなら、「権限」の[文書の印刷および編集を制限。これらの~]にチェックする。

 例えば、「印刷を許可」のプルダウンメニューをクリックすると、[許可しない][低解像度][高解像度]の3つの選択肢が現れる。普通に印刷してもいいなら[高解像度]、禁止するなら[許可しない]、にする。確認程度の荒い印刷だけ許可するなら[低解像度]にすればよい。

細かいセキュリティ設定を行える

 「変更を許可」も以下の5パターンから挙動を選択できる。

  1. 許可しない
  2. ページの挿入、削除、回転
  3. フォームフィールドの入力と既存の署名フィールドに署名
  4. 注釈の作成、フォームフィールドの入力と既存の署名フィールドに署名
  5. ページの抽出を除くすべての操作

 「セキュリティ設定」ツールで設定できたのは、この中の3番というわけだ。

 また、設定の[テキスト、画像、およびその他の内容のコピーを有効にする]にチェックを入れれば、編集は許可しないが、テキストや画像などのコピーはできるようにしておくこともできる。

 設定が完了したら[OK]をクリックして、PDFを保存すればよい。ちなみに、「編集」パスワードを知らない状態でも、「文書のプロパティ」の[セキュリティ]タブを開けば、どの機能が制限されているのかを確認できる。

「文書のプロパティ」の[セキュリティ]タブで制限されている機能を表示できる

Macなら「プレビュー」でパスワードをかけられる

 Macユーザーなら有料のPDFツールなしに、PDFにパスワードをかけられるのが嬉しい。PDFを「プレビュー」で開き、[ファイル]メニューから[書き出す]をクリック。ダイアログが開いたら、[アクセス権]をクリックすると、設定画面が表示される。

[ファイル]メニューから[書き出す]をクリック
[アクセス権]をクリックしよう

 閲覧制限をするなら、[書類を開くときにパスワードを要求]にチェックし、パスワードを入力する。一方、編集制限をするなら、所有者のパスワード欄でパスワードを設定する。そのまま[適用]をクリックすれば、「プリント」「テキストまたはグラフィックスをコピー」「ページの挿入、削除、または回転」「注釈または署名を追加」「既存のフォームフィールドへの入力」のすべてが禁止される。

 もし、特定のアクセス権のみ、パスワードなしでも許可する場合は、チェックしておけばよい。後は[適用]をクリックして、PDFを保存すれば完了だ。

閲覧、編集の制限設定を行う

 以上が、勝手にPDFを印刷したり編集できないようにする方法となる。政府や企業が公開しているPDFには編集制限がかけられていることが多い。外部にPDFを公開する際は多用する機能なので、使い方をマスターしておこう。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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