柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【PDFの差分チェックを楽にしたい!】2つのPDFファイルを比較して変更されている箇所を見つける方法

元文書を直接修正されたPDFにはもう困らない! 比較ツールを賢く活用しよう

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
今回は2つのPDFファイルを比較して変更されている箇所を見つける方法をご紹介する

 ドキュメントのレビューをする場合、どこをどのように修正すべきか、注釈を入れるのが普通だ。しかし、普段レビューをしていないと、作法がわからず、自由に修正を入れる人もいる。例えば、レビューをお願いした相手が取引先の社長で、返送されてきたファイルが、元文書を直接修正したPDFだとしたら目の前が真っ暗になる。修正した箇所がわからなければ、確認のしようがないからだ。

 ほかにも、AdobeのCMで、カズレーザーさんが出演契約書の違いを見つけるように言われて制限時間を過ぎてしまったところ、出演費が50円にされていたシーンがあったが、実際、契約書を更新する際も間違い探しのような作業が発生して困ってしまう。

「電子契約で契約更改」篇 | Adobe Acrobat ー アドビ公式

 そんなときは、PDFの内容を比較して変更点を教えてくれる機能を利用しよう。

左側の文書を送ったら、右側の文書が返ってきた。さてどうする?

「Acrobat Pro」でシンプルに比較してみる

 まずは「Acrobat Pro」の操作方法を紹介する。

「Acrobat Pro」のダウンロードはこちらから(価格:1,980円/月額)

 ツール一覧から[ファイルを比較]をクリック。比較する2つのファイルを指定して[比較]を選択する。

 歯車アイコンをクリックすると、文書のタイプやレポートで表示する内容を設定できる。普通にPDFの内容を比較したいだけなら、そのままでOK。

[ファイルを比較]をクリックする
比較したい2つのPDFファイルを指定する
比較する項目などを細かく設定できる

 文書の比較が完了すると、結果の概要ページが表示される。下にスクロールすると、両者のPDFが左右に並んだ比較結果が現れる。変更がある部分がわかりやすく色分けされており、該当箇所をクリックすると、どんな変更が行われたのかがわかる。

 この機能はテキストだけでなく、画像の変更も判別してくれる。現在は挿入や削除が行われても、そのブロックのテキストが置換されたように検出されるようだ。とはいえ、変更点は見逃さずにチェックしてくれるので、問題はないだろう。

今回は9カ所の変更が行われたようだ
色分けされて修正箇所がわかりやすい
画像の変更も検出してくれる

「PDFelement ver.9」でPDFを比較してみる

 オールインワンPDF編集ソフト「PDFelement ver.9」(Wondershare)もPDFの比較機能を搭載している。このソフトは日本語に対応しており、テキストの閲覧だけでなく、編集も行える。「PDFelement 標準版」の永続ライセンスは8,980円で、サブスクは1年間で4,980円。永続ライセンスはキャンペーンで安くなることもあるので、興味のある人は要チェック。

「PDFelement ver.9」のダウンロードはこちらから(価格:標準版8,980円/1年間プラン4,980円)

 「PDFelement ver.9」では、[ツール]メニューから[ファイル比較]をクリックし、比較したいPDFファイルを選択。[比較する]をクリックすると、比較結果が表示される。

[ツール]メニューから「ファイル比較」をクリックする

 変更履歴が一覧表示され、クリックすると該当箇所に飛べるのが便利。ただし、その分横幅が狭くなるので一覧性は厳しくなる。できるだけ大画面ディスプレイで作業したいところだ。

 テキストはもちろん、画像の変更も検出できる。さらに、テキストも変更があった部分のみを色分けしてくれるので、どう修正されたのかが一目瞭然だ。また[表示]メニューから挿入された部分や、削除された部分だけを表示することもできる。

テキストや画像に変更があった部分が一覧表示される
表示する修正箇所を絞り込むことができる
変更箇所がわかりやすく色分けされている

画像のどこが変わったのかを確認するなら「XOR」

 広告用のビジュアルなどをレビューする際は、“画像が変わった”だけでなく、“画像のどこがどう変わったのか”、が知りたいところ。そんなときは、PDF比較ツール「XOR」を利用しよう。

 Windows版は「Microsoft Store」アプリで配布されている。価格は月額2,000円のサブスクだが、最初の1カ月は無料で使用できるので、まずは使い勝手を試してみよう。

「XOR for Windows」のダウンロードはこちらから(価格:2,000円/月額)

ストアアプリをインストールする

 アプリを起動すると全画面表示になるので、比較したいファイルを指定する。ドラッグ&ドロップでも登録できる。[OK]をクリックすると、2つのPDFが読み込まれる。

PDFファイルを指定する。強制全画面表示なのは少し困る

 [表示]メニューをクリックすると、サブメニューが表示され、一番上に「透かし表示」と表示されている。この部分には、次の比較メニューが表示される。[ふたご表示]→[透かし表示]→[サーモ表示]→[アオリ表示]→[ふたご表示]と繰り返される。このメニューはやや使いにくいので、普通のメニューにしてほしいところだ。

[表示]メニューから比較モードを切り替える

 「透かし表示」にすると、両方のPDFを重ねて合成表示してくれる。青や赤になっている部分が差分箇所となり、グレーになっているところは変更されていないところとなる。

「透かし表示」で変更部分をチェック

 次が「サーモ表示」で、画像がグレースケールになり、変更がある部分だけを赤く表示してくれる。

「サーモ表示」は変更部分だけが赤く表示される

 その次の「アオリ表示」は、自動的に2つのPDFをエンドレスで切り替えて見せてくれるモードだ。変更がある部分がちかちかするのでわかりやすい。

「アオリ表示」では前後の画像が繰り返し切り替え表示される
最後には「ふたご表示」に戻る

 また、変更部分を選択し、PDF操作メニューから[囲みを作成]をクリックすると、該当箇所を囲んで目立たせることができる。ちなみに、テキストの差分検出は自動でチェックしてくれるが、「XOR」は自分で囲まなければならないので、手間がかかる。

変更箇所を目立たせる場合は選択してから[囲みを作成]をクリックする

 2つのPDFを比較したPDFファイルも作成できる。2枚横に並べているパターンと、重ねているパターンのどちらかを選べる。

 この比較をすることで、変更点もわかるが、それ以外の部分が変更されていない、ということもわかる。一度確認が終わった部分を、先方が気を利かして手を入れてしまうと、いろいろと面倒なことになるが、それも簡単にチェックできるのがありがたい。

 また、XORはテキストも画像として認識し、変化があれば教えてくれる。ポスターなどで文字の場所やサイズなどを変更したときにもチェックしやすい。

検出結果を並べて表示したPDFの画面
検出結果を重ねて表示したPDFの画面

 以上が、「2つのPDFファイルを比較して変更されている箇所を見つける方法」となる。PDFファイルを2つ表示してにらめっこし、間違い探しをするのは時間の無駄だし、見逃しも発生してしまう。PDFファイルの見比べは、比較ツールを使って賢く行おう。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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