柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【その黒塗り意味ないですよ!】PDFの情報を完ぺきに隠すなら「墨消し機能」を使おう

テキストボックスやコメントパネルで黒塗りするのはNG!

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
その黒塗り意味ないですよ! 今回はPDFの隠したい情報を黒塗りする方法をご紹介する

 PDFを誰かに渡す際に、一部の情報を隠したいことがある。社内の他の部署や取引先から「契約書の内容を確認したいのでPDFを共有してくれ」と言われた場合など、個人情報保護や情報漏えい防止といった観点で、隠したい情報を黒く塗りつぶさなければならない。しかし、そこで注意したいのが「人間の目には黒くなっているように見えていても、本当にデジタルデータも隠されているのか」という点だ。

 下記の画像の通り、まずは、Wordで蛍光ペンの色を黒くして「レベリング」という文字を塗りつぶしてみよう。次に、テキストボックスを黒塗りにして「トゥールビヨン」という文字の上に置いてみる。たしかに、元の文字は見えなくなるので、PDFを作成する。

元文書のWordで蛍光ペンの色を黒にする
「レベリング」の文字を黒塗りにする
テキストボックスで「トゥールビヨン」という文字を黒塗りにする

 PDF側でも情報を隠してみよう。コメントパネルを隠したい箇所に置いて[プロパティ]から塗りつぶしの色を選択する。もちろん不透明度は100%にする。これで、見た目は3カ所に黒塗りがされているようになった。

PDFに変換した文書をAcrobatで読み込み、コメントパネルを乗せる
コメントパネルの色を黒くする

 この状態で、黒塗り下部分をコピーし、メモ帳などに貼り付けてみよう。ものの見事にすべての文字列が表示され、まったく隠されていないことがわかるだろう。テキストボックスやコメントパネルで黒塗りするのはNGなので、肝に銘じておこう。

見た目は黒塗りで隠せたので、その範囲をコピーしてみる
黒塗り下部分のテキストがまるっとコピーできていた

Acrobatの「墨消し機能」で情報を完ぺきに消去する

 情報を完ぺきに隠したいなら「墨消し機能」を利用しよう。

 例えば、Acrobatなら[ツール]から[墨消し]を選択する。第2ツールバーが表示されるので[テキスト画像を墨消し]を選択。今回は、売買代金を選択して[適用]をクリックする。

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「600万円」というキーワードで検索したところ。この金額を黒塗りしてみよう
「墨消し」ツールで「600万」という文字を選択して[適用]をクリックする

 確認ダイアログが出るので、非表示情報も削除するなら、そのまま[続行]をクリックする。情報が残っては意味がないので、通常はONにしたまま[続行]をクリックする。

見た目も非表示情報も削除される、という確認ダイアログが開く

 次に、墨塗りしたファイルを保存する。自動で元のファイル名に「墨消し済み」という文字列が追加された、保存ダイアログが開くので[保存]をクリックしよう。ここで、元のファイル名で上書きすると、墨消しした部分の情報は永久に失われ、復活できないので注意すること。

異なるファイル名でPDFを保存しておこう

 さて、黒塗りされたところで、該当部分をコピー&ペーストしてみよう。

 墨消しした「600万」という部分だけきれいに消えている。もちろん、画像も同じように完全に「墨消し」で消去できる。これで安心して他のユーザーと共有できるようになった。

金額部分を黒塗りにできたのでコピーしてみる
メモ帳に貼り付けてみると、金額部分だけきれいに消えている
全文検索をしてもヒットしなくなった

ページ全体や複数箇所のキーワードをまとめて墨消しする

 複数箇所の情報を隠す際、1カ所1カ所作業していると手間もかかるし、抜けも出てしまいかねない。必要に応じてまとめて墨消ししよう。

 Acrobatであれば、まずは、ページごと隠したい場合、「墨消し」の第2ツールバーにある[▼]をクリックして[ページを墨消し]を選択。ダイアログが開くのでページ数を指定して[適用]をクリックすればよい。

プルダウンメニューから[ページを墨消し]を選択してページ数を指定する

 指定したページが真っ黒になり、情報が綺麗に消える。これならページを削除しているようなものだが、そこにページがある、ということが重要なこともあるのかもしれない。筆者としては、ページ丸ごと黒塗りだと不快に感じてしまうので、多用はしないほうがよいだろう。

指定した2ページ目を墨消しできた

 また、複数箇所のキーワードをまとめて隠す場合は、メニューから[テキストの検索と墨消し]を選択する。

 Acrobatが全画面表示になり、検索ウィンドウも開く。「検索する語句」フォームにキーワードを入力して[テキストを検索して削除]をクリック。検索結果をクリックしてキーワードが記載されている箇所を確認し、墨消しするならチェックをつける。

「検索する語句」フォームにキーワードを入力し、[テキストを検索して削除]をクリックする
キーワードがヒットするので、何文字目を墨消しするのかを指定する

 例えば、検索キーワードは「株式会社レベリング」だが、前株は消す必要がない、というのであれば、検索結果の5文字目から10文字目までを墨消しするようにすればよい。選択が完了したら、左下の[チェックした結果を墨消し用に設定]をクリック。指定した箇所が赤く囲まれるので、[適用]をクリックすれば墨消しできる。

準備が完了したら、[チェックした結果を墨消し用に設定]をクリックする
[適用]をクリックすれば、赤く囲まれている部分が墨消しされる

PDFelementでもキーワードを指定して一括墨消しできる

 オールインワンPDF編集ソフト「PDFelement ver.9」(Wondershare)も墨消し機能を搭載している。

https://pdf.wondershare.jp/index-b.html

 PDFを読み込んだら、[保護]タブを開いて[墨消しとしてマーク]をクリックする。墨消し方法のダイアログが開くので、[OK]をクリックして閉じたら、隠したい情報を選択しよう。手動で複数箇所を選択することも可能だ。

 完了したら、[墨消しを適用]をクリックすると、墨消しが入る。画像も同様の操作で墨消しできる。

隠したい情報を選択して[墨消しを適用]をクリックする

 ページ全体を墨消しする際は、画面を縮小して全体を表示し、ページ全体を手動で選択したうえで[墨消しを適用]をクリックする。ここはAcrobatの方が操作しやすいところだった。

墨消しした情報は検索できなくなる

 複数のキーワードをまとめて墨消しする場合は、[検索&墨消し]をクリックし、パネルのフォームにキーワードを入力。検索結果から、墨消しする項目にチェックを入れて[すべてのマークを適用]をクリックすればよい。

[検索&墨消し]でキーワードを一括選択できる
まとめて墨消しできた

 情報を黒塗りする際は「墨消し」を利用する。活躍するシーンは少ないかもしれないが、そんなときだからこそ、情報だだ漏れのままPDFを共有してトラブルになるのは避けたいところ。ぜひ一度試してみて、操作方法を覚えておくことをお勧めする。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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