柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【PDFを圧縮したい!】PDFのファイルサイズをコンパクトにして扱いやすくする方法

画像や動画を多用したPDF文書をもっと共有しやすくしよう

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
今回はPDFのファイルサイズをコンパクトにして扱いやすくする方法をご紹介する

 画像を多用した文書をPDF化すると、ファイルサイズが大きくなることがある。数十MBにもなってくるとメールに添付するのが難しくなってくる。

 オンラインストレージなどで共有することもできるが、相手が使っているPCの性能が低いと、大容量のPDFを表示する際に時間がかかってしまうこともある。特に、出先のPCでプレゼンする際に表示するPDFのサイズはコンパクトにしておいた方がよい。

 かといって、WordやPowerPointなどの元ファイルに使っている画像すべてのサイズを小さくするような手間はかけられない。そんなときは、PDFを圧縮できるソフトを利用すればよい。使われている画像のサイズや画質を落としたり、不要なフォントなどのデータを削除したりしてファイルサイズを小さくできるのだ。

PDF-XChange Editorでファイルサイズをコンパクトにする方法

 「PDF-XChange Editor」でPDFファイルのサイズをコンパクトにするなら、「PDFの最適化」機能を利用する。

 まずは、PDFファイルを開いたら[ファイル]タブをクリック。そして[最適化して保存]をクリックすると、「PDFの最適化」ウィンドウが開く。このまま[OK]をクリックすれば、基本設定でPDFファイルを圧縮できる。

 例えば画像の場合、225dpi画像は150dpiにして、画質も中品質に落とすといった具合だ。そのほかにも、重複しているフォントや無効なリンク、代替画像などを削除したりすれば、トータルでコンパクトにしてくれる。

PDFファイルを開いたら[ファイル]タブをクリックする
[最適化して保存]をクリック
設定画面で最適化方法をチェックし、[OK]をクリックする

 [使用スペースのチェック]をクリックすると、PDF内でどんなデータが容量を占めているのかを確認できる。基本的には画像やマルチメディアがほとんどを占めるだろう。

 圧縮したPDFはファイル名を付けて保存する。フォルダを指定して[保存]をクリックすればよい。この際、ファイル名に「_Optimized」という文字が追加されるのは、元のファイルを上書きする心配がないのでありがたい。

「使用スペースのチェック」でデータごとのファイル容量を確認できる
圧縮したPDFファイルを保存する

 今回、27ページ・11枚の画像を使ったPowerPoint資料から作成したPDFファイルでテストを行った。WordやPowerPointからPDFを作成する際には、画像を圧縮する機能もあるのだが、今回はあえて使わず、PDFファイルを作成している。

左が元ファイル、右が圧縮後のファイルサイズ

 元ファイルは88.8MBで、標準設定で圧縮したところ、3.22MBまでコンパクトになった。

 PDFファイルは一見変わっていないように見えるが、少し大きく表示すると明らかに画質が落ちているのがわかる。とはいえ、PC画面で閲覧したり、プレゼンでスクリーンに表示するような用途であれば、150dpiもあれば十分だろう。印刷用途であれば、もちろん元ファイルを利用しよう。

上が元ファイル、下が圧縮後の画質

 共有相手に再利用されたくない画像だったり、1枚だけ超巨大な画像が使われていたりして、特定のページで使っている画像だけコンパクトにしたいということもあるだろう。そんなときは[変換]タブの[イメージを再圧縮]をクリックしよう。

 画像の再圧縮ウィンドウが開くので、[ページ]の[現在]をクリックし、[トゥルーカラー]をダブルクリックする。すると、設定画面が開くので、どこまで圧縮するのか設定して[OK]をクリックすればよい。

特定ページの画像のみを圧縮するなら、[変換]タブの[イメージを再圧縮]をクリックする
[ページ]の[現在]をクリックし、設定画面を開いて画質を設定する

Acrobatでファイルサイズをコンパクトにする方法

 AcrobatでPDFファイルをコンパクトにするなら、「PDFを圧縮」機能を利用する。

 ツールメニューから[PDFを圧縮]を開いて[単一ファイル]をクリック。圧縮したファイルを保存する。その際、ファイル名は元のままなので、元ファイルを維持するなら、別名で保存すること。

「すべてのツール」から[PDFを圧縮]をクリックする
[単一ファイル]をクリックし、ファイルを保存する

 元ファイルは88.8MBで、標準設定で圧縮したところ、4.41MBまで圧縮できた。「PDF-XChange Editor」と比べて少しファイルサイズが大きいが、その分、画質の劣化は抑えられている感じだ。

Acrobatの場合、4.41MBに圧縮できた

 画像の圧縮設定をカスタマイズするなら、[PDFを圧縮]-[高度な最適化]をクリックする。「PDFの最適化」ウィンドウが開くので、画像を圧縮する際の設定をカスタマイズできる。

 標準では、225ppi以上の画像を150ppiまで圧縮するようになっている。

「PDFの最適化」ウィンドウで圧縮後の画質を調整できる
[容量の調査]でデータごとのファイル容量を確認できる

CubePDFでファイルサイズをコンパクトにする方法

 無料ソフトの「CubePDF」でもPDFファイルをコンパクトにできる。

 「CubePDF」は仮想プリンターとして動作するので、PDFビューワーから印刷して[CubePDF]を選択。印刷操作を行うと、「CubePDF」の設定画面が開く。

印刷ダイアログの「プリンター」で[CubePDF]を選択する

 そして[一般]タブの「PDFファイル中の画像をJPEG形式で圧縮する」と「PDFファイルをWeb表示用に最適化する」にチェックして[変換]をクリックすれば、圧縮できる。今回のテストでは、88.8MBの元ファイルを、6.11MBまで圧縮できた。

オプションにチェックを付けて[変換]をクリックする
6.11MBに圧縮できた

動画のファイルサイズをコンパクトにする方法

 画像以上にファイルサイズに影響を与えるのが動画だ。

 しかし、これまで紹介した最適化機能では動画を圧縮することはできない。PDFに埋め込む動画ファイルのサイズそのものも圧縮する必要があるのだ。

 動画編集ソフトを持っているなら、そのツールで圧縮すればよいが、「動画編集をしたことがない」という人も多いだろう。そんなときにおすすめなのが「VLC media player」だ。

 多彩なメディアを再生できるフリーソフトで、動画や音声のファイル形式を変換する機能を備えているのが特徴。簡単な操作で、動画のファイルサイズをコンパクトにできるのだ。

 まずは[メディア]メニューから[変換/保存]をクリックし、動画ファイルをドラッグ&ドロップする。続けて[変換/保存]ボタンをクリックし、プロファイルで動画のファイル形式を選択して[設定(スパナ)]ボタンをクリック。[ビデオコーデック]タブや[オーディオコーデック]タブで、解像度やサンプリングレートを低くして[保存]をクリックする。

元の動画ファイルを追加して[変換/保存]をクリックする
設定(スパナ)アイコンをクリックする
動画の設定をカスタマイズする

 元の画面に戻ったら、保存先を指定して[開始]をクリックすればよい。今回のテストでは、元ファイルが49MBで、[解像度]タブの[スケール]を「0.5」にしたところ、12.5MBまでコンパクトにできた。あとは、PDFに埋め込んでいる動画を差し替えればよい。

 以上が、PDFのファイルサイズをコンパクトにして扱いやすくする方法となる。高性能PCならPDFファイルのサイズが100MBでも200MBでも軽々扱えるが、人と共有したり、ほかのPCで利用する場合には、適切なファイルサイズにしておくことをおすすめする。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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