柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【PDFを他のファイル形式に変換したい!】PDFをWordやExcel、PowerPointに戻したり画像で出力する方法

PDFはファイルの最終形態にあらず!

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
今回は「PDFをWordやExcel、PowerPointに戻したり画像で出力する方法」をご紹介する

 PDFファイルはどんなプラットフォームでも同じように表示できるフォーマットなので、紙に印刷するような感じで、最終的なファイル形式だと思われていることがある。もちろん、編集を禁止することで、そのような扱いもできるのだが、通常はPDFファイルを編集したり、ファイル形式を変換したりできる。

 例えば、提出されたPDF資料の内容がおかしいので、部下に修正を指示したら、元のWordファイルを破棄してしまった、と言ってきても慌てずに済む。取引先が共有してきたPDFの表組データを再利用したいが、先方にExcelを送ってくれ、とは言いづらい状況もあるだろう。

 無料で手軽に変換するなら「Word」で読み込む手がある。Wordで作成してPDFに変換した場合は、ほぼ問題なくWordファイルに戻すことができる。もちろん、表示できるだけでなく、編集してWordファイルとして保存することも可能だ。

このPDFファイルをWordで読み込む
Wordでファイルを開こうとすると、確認ダイアログが開くので[OK]をクリックする
WordでPDFファイルが読み込めた

 ちなみに「Excel」や「PowerPoint」のファイルもWordで読み込めるのだが、内容によってはきちんと変換できないこともある。Excelの場合、シンプルな表であれば、PDF内のデータを正確に読み込めるのだが、内容によっては変な感じに分割されてしまい、使い物にならなくなってしまうのだ。

今度はこのExcelファイルを読み込んでみる
表が正確に表示されなくなってしまった

 Excelのデータを取り込むなら、「パワークエリ(Power Query)」という機能を使って、PDFを取り込むこともできる。Excelの[データ]タブの[データの取得]から[ファイルから]-[PDFから]と辿り、PDFファイルを選択。「ナビゲーター」で取り込むテーブルを選択し、「パワークエリ エディター」で内容を指定すれば、Excelに読み込める。

 とはいえ、この方法は手間がかかるし、Excelの内容によってはうまく取り込めないこともある。

Excelの「パワークエリ」機能を使ってみる
「ナビゲーター」で取り込むテーブルを選択
「パワークエリ エディター」で内容を指定する
この方法でもPDFのデータを取り込むことができる

 PDFを他の形式に変換するなら、やはり有料版の「Acrobat」を利用するのが確実だ。PDFを開き、ツールメニューから[PDFを書き出し]をクリック。変換したいファイル形式を選択して[書き出し]をクリックするだけでよいのだ。

 例えば、Wordではうまく読み込めなかったExcelファイルを読み込んでみよう。「PDFを任意の形式に書き出し」画面で[スプレッドシート]を選択し、[Microsoft Excelブック]にチェックして[書き出し]をクリック。[名前を付けて保存]ダイアログが出るので、保存場所を指定する。

 作成したファイルを開くと、データも見た目もきちんと再現されていた。細かく見ると、店名や年月のところのセルを勝手に結合していたり、本来A列は空いていたのだが、詰められたりしていた。しかし、内容を再利用するには全く問題ないレベルで変換できている。

[PDFを書き出し]をクリックする
[Microsoft Excelブック]にチェックし、[書き出し]をクリックする
ファイルの保存場所を指定する
PDFをExcelに変換できた

 PDFの各ページを画像に変換したいこともある。例えば、筆者の場合、発表会で配布されたPDF資料から、記事掲載のために画像が必要になる。PDFを全画面表示して画面キャプチャーしてもよいのだが、直接変換できるなら、簡単だし、画質も劣化しない。

 講演会場のPCにPowerPointや「Acrobat Reader」がインストールされていない、という場合でも、画像ならビューワーで表示できるのでなんとかなる。筆者としては、WordやExcelに変換するよりも、利用頻度が高い機能だ。

 この場合も「PDFを任意の形式に書き出し」画面から操作する。[画像]を選択し、画像形式にチェックすればよい。画像形式は、JPEG/JPEG2000/TIFF/PNGから選べる。

[画像]を選択し、画像形式を選択する
全てのページを画像形式で作成できる

 同様にPowerPointに変換することもできる。以前作ったプレゼン用の資料を流用して、新たな資料を作りたいときに、元のPowerPointファイルが見当たらなくても問題なし。先輩から受け継いだPDF資料をブラッシュアップすることだってできる。

 こちらは「PDFを任意の形式に書き出し」画面で[Microsoft PowerPoint]を選択すればよい。変換時に歯車アイコンをクリックすれば、PDFの注釈を含めるかどうかなどを設定できる。

PowerPointに変換できる。設定で注釈の有無を設定できる
PDFをPowerPointに変換し、再編集できるようになった

 定番PDFツールの1つ「PDF-XChange Editor」も、PDFから他のファイル形式へ変換する機能を搭載している。もちろん、PDFの閲覧・編集機能を一通り網羅しており、Adobeが規定しているPDFフォーマットに準拠している。ダウンロード版の直販価格は8,000円で、無料体験版は窓の杜ライブラリからもダウンロード可能だ。

 PDF-XChange Editorの場合、PDFファイルを読み込み、[変換]タブを開くと、「エクスポート」に変換先のアイコンが並んでいるのでクリックする。ここでは[MS-Excelで出力]をクリック。出力する際の設定画面が開くので、確認して[OK]をクリックすると、Excelファイルが作成される。

 シンプルな表であれば、きちんと再現されるが、今回テストで使っている変則的な表だとちょっと見た目が変わってしまった。セルが結合されているだけでなく、2つのテーブルの間の空白列がなくなっている。なぜか、H列のみセルの黒枠も消えている。

 とはいえ、データとして変な処理をせずにシンプルな表組にしているので、表を再利用する、という点ではほぼ問題ないだろう。

「PDF-XChange Editor」の[変換]タブからExcelに変換する
設定を確認して[OK]をクリックする
PDFをExcelファイルに変換できた

 さらに、PDF-XChange EditorでPDFをPowerPointに変換してみたが、こちらは完璧に変換できた。PDFのコメントを含ませることも可能。設定を変える場合、確認画面で[編集]をクリックすると「オプション」画面が開く。

 なお、変換できるのは、画像/Word/Excel/PowerPointの4種類で、AcrobatのようにWebページやテキストファイルに変換することはできない。

PDFを読み込み、[Microsoft PowerPointで出力]をクリック
コメントやリンクを含むかどうかを設定する
PDFをPowerPointに変換できた

 以上が、PDFをWordやExcel、PowerPointに戻したり画像で出力する方法となる。PDFの内容を変更したい時に元ファイルがなくても対応できる、ということは意外と知らない人が多いので、ぜひ覚えておきたい。有料ツールが必要になるものの、ビジネスシーンで助かることも多いからだ。

 次回は、PDFのページを入れ替えたり削除して整理する方法について紹介する。PDFツールなら、内部資料を外部に渡すために、見せたくないページを削除したり、スキャンした紙資料の順番をソートしたりすることが簡単にできるのだ。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」 記事一覧