柳谷智宣の「実は色々できるPDFの活用法」

【資料の使い回しをバレたくない!】PDFの仕上げルーチンを「アクションウィザード」でまとめて行う方法

メタデータはアクションで自動削除! Acrobatの旧UIにある便利機能

 本連載「柳谷智宣の『実は色々できるPDFの活用法』」では、無料・有料のPDFツールを活用し、ビジネスシーンで活躍しそうなPDFのテクニックを解説していく。今までは、もらったPDFを閲覧することしかしたことがない、という人にぜひ読んでいただきたい。
今回はPDFの仕上げルーチンをアクションウィザードでまとめて行う方法をご紹介する

 資料のPDFファイルを外部に送信する際は、事前にPDFをチェックしておこう。

 例えば、PDFファイルにはタイトルや作成者、サブタイトル、キーワードといったメタデータが埋め込まれている。ここに、もし送信者以外の名前が入っていれば、他の人が作った資料なのか?と思われてしまう。A社宛ての資料に「B社様用」などと別の会社の名前が入っていれば、資料を使い回していることがばれてしまう。ほかにも、社内でレビューしたコメントが残っている場合、社外の人に見られたくないこともあるだろう。

 社内ルールとして、共有ファイルにはページ数を振る、「コピー禁止」の文字を入れる、開封の際にパスワードを求める、などと決められていることもあるだろう。もちろん、チェックリストを作って毎回忘れずに作業すればよいのだが、面倒だし、忘れてしまうリスクもある。

PDFのメタデータにはさまざまな情報を記録できる。外部と共有する際は削除しておきたい

 そこでおすすめなのが「アクションウィザード」。複数の処理を登録しておき、各種設定を済ませておくことで、それらをまとめて自動実行する機能だ。現在のところ、新しいAcrobatのUIではまだ使えないので、メニューから[新しいAcrobatを無効にする]をクリックし、従来のUIに変更しよう。

現在のところ、アクションウィザードは新しいAcrobatのUIでは利用できない
[再起動]をクリックして元のUIに戻す

 従来UIのAcrobatが起動したら、[ツール]タブを開き、[カスタマイズ]-[アクションウィザード]をクリックする。初期設定されているアクションリストが表示されるが、ここではイチからアクションを作成するため、第2ツールバーの[新規アクション]をクリックする。

[ツール]-[アクションウィザード]をクリックする
第2ツールバーの[新規アクション]をクリックする

 処理するファイルは「現在開いているファイル」が追加されているのでそのままでOK。続けて、実行したい機能を選択し、右側のステップに追加する。

実行したいツールを選択して[右側のパネルに追加]をクリックする

 まずは、[ページ]-[ヘッダーとフッタを追加]をクリックする。すると、オプションが現れるので[設定を指定]をクリック。ヘッダーとフッターの追加画面が表示されるので、必要に応じて設定する。その設定で自動処理するなら[ユーザーに確認]のチェックボックスをOFFにしておこう。(ヘッダーとフッターについては以下の記事を参照されたい)

[設定を指定]をクリックして追加したいヘッダーを設定する

 同様に、メタ情報を削除するなら、[非表示情報をすべて削除]を追加する。パスワードで保護したいなら[暗号化]を追加。同じく、[設定を指定]をクリックしてパスワードを設定する。こちらも、自動処理するなら[ユーザーに確認]のチェックボックスをOFFにしておく。(パスワードについては以下の記事を参照)

[非表示情報をすべて削除]を追加する
[暗号化]を追加して[設定を指定]をクリックする
パスワードを設定する

 設定が完了したら[保存]をクリックし、アクション名と説明を入力し、再度[保存]をクリックする。

アクション名を付けてアクションを保存する

 これで、アクションの準備が完了。自動処理したいPDFファイルを開き、[アクションウィザード]の「アクションリスト」から作成したアクションをクリック。[開始]をクリックすれば、処理がスタートする。

PDFファイルを開き、アクションリストから追加したアクションをクリックする

 数秒で処理が終わり、ヘッダーが追加された。問題なく実行できた機能の横にはチェックマークが付く。試しに、PDFファイルのプロパティを開いてみると、作成者やキーワードといったメタデータがすべて削除されていることがわかる。

[開始]をクリックして処理を行う。数秒で処理が終わり、ヘッダーが表示された
プロパティを確認したところ、メタデータが削除されていた

 アクションに追加できるツールはほかにも多数用意されている。すべての注釈を削除したり、背景や透かしを追加したり、アクセシビリティをチェックしたりできる。自動化しきれない部分は、処理が一時停止してユーザーの処理を待つことになる。例えば、墨消しであれば、黒塗りする部分を選択する。[完了したら、ここをクリックして続行]をクリックすると、アクションの続きが実行される。

 アクションを実行したファイルを元のファイルに上書きしたくないなら、[保存と書き出し]から[保存]を追加し、元のファイル名に接頭辞もしくは接尾辞を追加するように設定しておけばよい。

自動化できない処理はユーザーの操作を挟むことになる
アクション実行後のファイルは別名で保存する

 「取引先共有用」や「外部公開用」といったアクションを設定しておき、社内で共有すれば、抜け漏れなく統一したPDFファイルを作成できる。手間が省けるというメリットに加え、何かを覚えたり、共有時に頭を使う必要がない、のが嬉しいところ。

 社内でアクションを共有する場合は、設定ファイルを書き出し、それぞれのAcrobatで読み込めばよい。まずは[アクションウィザード]の第2ツールバーから[アクションを管理]をクリックし、共有したいアクションを選択。[書き出し]をクリックし、拡張子「.sequ」の設定ファイルを保存する。

 インポートする際は、同じく[アクションを管理]画面の[取り込み]をクリックし、共有した設定ファイルを読み込めばよい。

[アクションを管理]画面で[書き出し]をクリックする
拡張子「.sequ」の設定ファイルを保存する
読み込む場合は[アクションを管理]画面の[取り込み]をクリックする
アクションを追加できた

 以上、PDFの仕上げルーチンをアクションウィザードでまとめて行う方法となる。日々繰り返している操作があるなら、アクションにまとめておく方が効率的だし、ミスも回避できる。旧UIでしか利用できないのは不便だが、近いうちに新UIでも使えるようになるはず。いまのうちに、試行錯誤しながら便利なアクションを作りこんでおいてはいかがだろうか。

著者プロフィール:柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。キャリアは25年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛けている。日々、大量の原稿を執筆しており、PDFファイルも日常的に利用している。メインのPDFツールは「Acrobat Pro」を活用。

・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/

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