知られざるNASの世界

第1回

Windowsを、そしてMacをバックアップしよう

NAS専用ソフトやOS標準ソフトを使って手間なくバックアップする方法を解説

ASUSTOR社のNAS。今回はこのNASにWestern DigitalのNAS向けHDD「WD Red」を組み合わせて検証した。

 最新の外付けハードディスクといえば、いまやLAN接続が当たり前。一般的に“NAS”と呼ばれるLAN接続のハードディスクであれば、昔ながらのUSB専用モデルと違って複数のPCからアクセスできるほか、スマホやタブレットのデータを保存するにもぴったりです。

 写真や音楽、動画などをたくさん保存できるNASですが、せっかくテラバイト単位の容量を使えるようになるわけですから、これを機会にPC内の大切なデータを定期的にNASへバックアップし、万が一のアクシデントに遭遇してもすぐに復旧できる体制を整えてみてはいかがでしょう。

 今回は、NASの専業メーカーとして日本でもシェアを伸ばしつつあるASUSTOR社のNASを例に、PCのデータをNASにバックアップするための具体的な方法を紹介しましょう。

 ちなみに最近の高性能NASは専用アプリをNASにインストールすることで、nasneやクラウドストレージとの連携など、より高度な使い方ができるのがポイント。窓の杜では“知られざるNASアプリの世界”と題して、NAS専用アプリを使ったNASの活用法を紹介しています。よろしければこちらもご一読いただければ幸いです。

スケジュール設定で、PCのデータを自動的にNASにバックアップ!

WindowsのデータをNASへバックアップ

 PCのデータをNASにバックアップする場合、バックアップソフトに対象のフォルダーや保存先フォルダー、スケジュールなどを設定して運用します。

 Windows 10の場合、標準機能のツール「ファイル履歴」を使うこともできますが(後述)、バックアップ先がASUSTORのNASであれば、無料で使える専用バックアップソフト「ASUSTOR Backup Plan」を使うのがスムーズです。毎日や毎週といったスケジュール指定によるバックアップだけでなく、指定したフォルダーをPCとNASの間でリアルタイムに同期することもできます。

まずASUSTORのサイトからバックアップソフト「ASUSTOR Backup Plan」をダウンロードしてインストールを行います。完了したら起動し、[作成]ボタンから“Asustor NAS”を選択します

 では早速、その設定方法を見ていきましょう。大まかな流れとしては、バックアップソフト「ASUSTOR Backup Plan」をインストールしたのち、起動してバックアップの作成を選択。ネットワーク上のASUSTOR NASが自動的に検出されますので、ユーザー名およびパスワードを入力したのち、スケジュールなどの設定を行います。毎日決まった時間、あるいは指定した曜日の決まった時間といった具合に、バックアップを実行する日時をここで指定します。

バックアップに名前を付けます。ここではデフォルトの“Plan 1”のまま進めます
ネットワーク上のASUSTOR NASが自動的に検出されますので、選択して[次へ]ボタンをクリックします
ASUSTOR NASに接続するためのユーザー名およびパスワードを入力します
バックアップの種類および頻度を設定します。ここでは毎日21:30にバックアップが実行されるように設定します。[ミッションモード]ボタンからは再接続の間隔や回数を指定することもできます
どのフォルダーをバックアップするかを選択します

 続いて、バックアップしたいファイルもしくはフォルダーを指定します。フィルターを使って特定のファイルタイプおよび拡張子を除外もしくは含めることもできますので、たとえば“Picture”フォルダーに含まれるファイルのうち、拡張子がPNGのファイルは除外し、JPEGファイルだけをバックアップするといった設定も可能です。最後にNAS上のどのフォルダーにバックアップデータを保存するかを指定すれば、設定は完了です。

フィルターを使って特定のファイルタイプおよび拡張子を除外もしくは含めることもできます
NAS上のどのフォルダーに保存するか設定します。保存先のフォルダーは、さきほど入力したユーザー名およびパスワードで読み書きができるように設定しておく必要があります。以上で設定は完了です
指定した時間になるとバックアップが実行されます。このほか手動でバックアップを実行することも可能です

 あとはスケジュール設定した時刻になれば、バックアップが自動的に行われます。バックアップの完了後、NASのフォルダーをエクスプローラーで開けば、データがきちんと保存されていることがわかるはずです。もっとも、バックアップのたびにエクスプローラーを開いてファイルをひとつずつ目視で確かめるのは骨が折れる作業ですので、「ASUSTOR Backup Plan」の[ログ]をクリックして、成功していることを確認するようにすればよいでしょう。

NASにバックアップしたデータをWindowsのエクスプローラーから参照すると、正しく保存されていることがわかります
バックアップおよび復旧が正しく行われたかどうかはログを見ることで確認できます

 ちなみにこの「ASUSTOR Backup Plan」では、バックアップ先として指定したNASのフォルダー内にPCの名前でフォルダーが作成され、その下にデータが保存されます。そのため、複数のPCからバックアップを行う場合でも、保存先として指定するフォルダーはすべて同じにしておいて構いません。具体的には、“backup”といった共有フォルダーを作っておき、そこにバックアップデータをまとめていけば、ほかのファイルやフォルダーと間違えることもありません。

 いっぽう、家族など複数のユーザーがそれぞれNASに対してバックアップを行う場合は、ひとつの共有フォルダーに皆がバックアップすると、ほかのユーザーからファイルの中身を見られる状態になってしまいます。こうした場合は、アクセス権限がかかった個人ごとのフォルダーを用意し、そこにバックアップを行うほうがよいでしょう。なお共有フォルダーのアクセス権の設定は、ブラウザでNASの設定画面を開き、[アクセスコントロール]-[共有フォルダー]-[アクセス権]で行います。

データをNASから復旧するには

復旧を行うには、「ASUSTOR Backup Plan」の画面で任意のバックアッププランを選択した状態で、上段の[復旧]ボタンをクリックします

 では実際にバックアップデータからの復旧が必要になった場合、どのような手順で作業を行えばよいでしょうか。Windowsのエクスプローラーで共有フォルダーを開き、ファイルを手動で取り出してコピーすることも可能ですが、複数のファイルを漏れなく復元するのであれば、バックアップソフトの復旧機能を使ったほうがよいでしょう。「ASUSTOR Backup Plan」の場合、メイン画面にある[復旧]ボタンをクリックすればウィザードが起動しますので、それに従って復旧を実行します。

 データの復旧にあたって怖いのは、必要なファイルやフォルダーを、うっかり過去のデータで上書きしてしまうことでしょう。その点「ASUSTOR Backup Plan」であれば、元と異なるフォルダーを指定してファイルを復旧することもできますので、手元にあるファイルと復旧したファイルとを見比べてから、どちらを残すのかを判断するといったことも簡単にできてしまいます。

すべてを復旧するか、特定のファイルまたはフォルダーだけを復旧するかを選択できます。今回は後者を選んで[次へ]ボタンをクリックします
復旧を行うファイルもしくはフォルダーを選択して[次へ]ボタンを押すと、バックアップデータの書き戻しが行われます。以上で作業は完了です

 ちなみに今回の例ではスケジュールによるバックアップを選んでいますが、バックアップ方法の選択画面で“同期”を選べば、リアルタイムでのバックアップも可能です。たとえば1日1回のスケジュールバックアップの場合、直近の24時間以内に行った変更はバックアップに反映されず、復旧することが不可能です。その点“同期”であれば、ファイルの追加や削除、変更がリアルタイムに反映されますので、突然PCがクラッシュした場合でも、直前のデータを取り戻すことができます。

 ただし“同期”はその性質上、ファイルをうっかり削除したり、誤って上書きしてしまった場合もすぐさまその内容がバックアップデータに反映されてしまいます。「ASUSTOR Backup Plan」は最大16個のバックアップ設定を行えますので、重要なファイルやフォルダーについては、スケジュールによるバックアップと同期のそれぞれを設定しておくことで、よりニーズに応じた、きめ細かなデータの復旧が可能になります。

ASUSTORのNASなら、Macからのバックアップにも対応!

Windows 10標準のツール「ファイルの履歴」でもバックアップが行なえます

 さて、ここまでは「ASUSTOR Backup Plan」を使ったバックアップを見てきましたが、ほかにもバックアップの方法はいくつかあります。ここでは代表的なバックアップの方法を紹介しましょう。

 ひとつはWindows 10標準のツールである「ファイル履歴」です。この機能を使えば、指定したフォルダーについて、最短1時間間隔でバックアップを行なえます。バックアップデータの保持期間も設定できるほか、バージョン管理に対応しているので、日時を指定してデータを復元することも可能です。ただしバックアップできるのはあくまでフォルダー単位で、「ASUSTOR Backup Plan」では可能なファイルタイプごとの除外設定は行えないなど、機能は一長一短です。

バックアップ対象のフォルダーは任意に指定できます。バックアップの保持期間を設定しておけば、それより古くなったデータは自動的に削除されるので便利です
過去のデータはバックアップを行った日時ごとに保存されていますので、任意の日時を選んでファイルを元の状態に書き戻すことも可能です
MacのデータをNASへバックアップ

 もうひとつ、Macのバックアップ方法も紹介しておきましょう。Macからバックアップを行う場合は、OS Xに内蔵されているバックアップ機能「Time Machine」を利用するのが一般的です。ASUSTORのNASの設定画面で“Macファイルサービス(AFP)”を有効にしたのち、[タイムマシンのサポートを有効にする]にチェックを入れれば、Mac側で「Time Machine」を起動した際に、指定のフォルダーがバックアップデータの保存先として自動的に指定されます。

Macからバックアップを行う場合は、OS Xに内蔵されているバックアップ機能「Time Machine」を利用します。過去24時間の1時間おきのデータ、過去1カ月の1日おきのデータ、さらに1週間おきのデータが、ディスクが一杯になるまでバックアップされます
MacからASUSTORのNASにバックアップを行うには、設定画面で「サービス」→「Mac OS X」を開き、“Macファイルサービス(AFP)”を有効にしたのち、[タイムマシンのサポートを有効にする]にチェックを入れる必要があります
上記の設定を行うことで、保存場所としてNAS上の共有フォルダーが指定できるようになります
任意の日時を選んでデータを書き戻すことができます

[制作協力:ASUSTOR / ユニスター]