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「OBS Studio 30.2」がリリース、Enhanced BroadcastingとHybrid MP4を新たにサポート

フリーのクロスプラットフォーム対応ビデオ録画・生放送ツール

「OBS Studio」v30.2

 ライブ配信ソフト「OBS Studio」の最新版v30.2が、7月13日(日本時間)に公開された。マルチトラックビデオストリーミングやハイブリッドMP4形式による出力がサポートされている。

マルチトラックビデオストリーミング

 マルチトラックビデオストリーミング(Multitrack Video streaming)は「Twitch」で「高度な配信」(Enhanced Broadcasting)とも呼ばれている機能で、品質の異なる複数のビデオストリームを一度に配信できる。視聴者側が自身の環境に応じたビデオ画質が選べるようになるのがメリットだ。

 「Twitch」はこれまでもサーバー側でのトランスコード(フォーマット変換)で視聴者側がビデオ品質を選べるようにする機能を提供していたが、これは一部のパートナー配信者にしか提供されていなかった。しかし、「OBS Studio」のマルチトラックビデオストリーミングを利用すれば、どの「Twitch」配信者でも同様の体験を提供できるようになる。

「Enhanced Broadcasting」を有効化。出力設定の一部は制限される

 ただし、この機能が利用できるのはWindows版のみだ。加えてNVIDIAのGeForce GTX 900/GTX 10/RTX 20シリーズ以降のGPU、またはAMDのRadeon RX 6000シリーズ以降のGPUが必要となる。

 また、本機能を有効化すると、ストリームを開始する際にシステム環境に関する情報の一部がストリーミングサーバーへ送信される点にも留意したい。

ハイブリッドMP4

 従来のMP4形式ビデオファイルは、システムのクラッシュや停電といったアクシデントが発生するとファイルが正しくファイナライズ(終了処理)されず、壊れて再生不能になるという信頼性の問題がある。一方で「OBS Studio」は「Fragment MP4」と呼ばれる出力形式をサポートしており、ストリーミングメディアを効果的に配信するためビデオ・オーディオデータを小さな断片(フラグメント)に分割して配信可能だ。これは前述のアクシデントにも強いが、ビデオ編集ソフトで読み込めないことがあるなど、互換性に難があるのが欠点だった。

 そこで、信頼性と互換性の両立を目指し、新たに開発されたコンテナー形式が「ハイブリッドMP4形式」(Hybrid MP4 Format)だ。

 「Hybrid MP4」はデータを逐次「Fragment MP4」として出力し、最後にそれを隠蔽する「ソフトリマックス」(soft-remux)というプロセスで通常のMP4ファイルのように見せかける。そのため、データの書き出しが中断されても復元できる信頼性を保ちつつも、従来からあるMP4対応アプリとの互換性を維持できる(ただし、古いアプリの一部を除く)。

 また、「Hybrid MP4」では編集中にハイライトや特定のセクションの開始を見つけやすくするためのマーカー機能もサポートされる。これは「DaVinci Resolve」などの編集ソフトやほとんどのビデオプレイヤーが対応済みだ。

 なお、コーデックはビデオ部分がH.264/HEVC/AV1、オーディオ部分がAAC/Opus/FLAC/ALAC/PCMが利用可能。ProResも「Hybrid MOV」として将来バージョンでサポートされる予定。

「Hybrid MP4」形式。ベータ版として提供される

 そのほかにも、Linux版でネイティブNVENCエンコーダーがサポートされた。テーマシステムも刷新され、ビジュアルの一貫性が向上したほか、今後の拡張が容易になっているという。

 「OBS Studio」は、オープンソースで開発されているクロスプラットフォーム対応のビデオ録画・生放送ツール(「OBS」は「Open Broadcaster Software Studio」の略)。リアルタイムで映像・音声をキャプチャーし、ミキシングやフィルター、シーンの切り替えといった操作を行いながら、さまざまな動画・音声サービスへ配信することができる。また、強力なAPIを備えており、プラグインで機能をニーズに応えたカスタマイズが行える点も人気だ。

 対応OSはWindows/Mac/Linuxで、Windows版は64bit版のWindows 10/11で利用可能。現在、公式サイト「obsproject.com」から無償でダウンロードできる。ライセンスは「GPL-2.0」。Windows版は窓の杜ライブラリからもダウンロードできる。

 なお、NVIDIA製GPUユーザーはグラフィックスドライバーの更新が必要になる場合があるとのこと。トラブルが生じた場合、Windowsユーザーはv531.61およびそれ以降、Linuxユーザーはv530.41.03およびそれ以降になっていることを確認するとよい。

ソフトウェア情報

「OBS Studio」
【著作権者】
OBS Project
【対応OS】
Windows/Mac/Linux
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
30.2(24/07/13)