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ハンドヘルド、ARM64への対応で大きな進歩 ~2025年の「Windows 11」ゲーム機能

新技術「Advanced Shader Delivery」(ASD)で初回起動を80%~95%以上も高速化

公式ブログ「Windows Experience Blog」

 米Microsoftは12月9日(米国時間)、2025年に実施した「Windows 11」のゲーム機能の改善を振り返る記事を、公式ブログ「Windows Experience Blog」で公開した。ハンドヘルド対応の拡充、新技術「Advanced Shader Delivery」の導入、ARM64対応の強化などが挙げられている。

ハンドヘルド対応の拡充

 ハンドヘルド型ゲーミングデバイス(ここではゲームパッドを一体化した小型の携帯モデルを指す)への取り組みで注目すべきは、なんといってもASUS/AMDと協力して開発された「ROG Xbox Ally X」「ROG Xbox Ally」の市場投入だろう。「Xbox」の名前を冠した初のポータブルゲーム機でもあり、世界中で注目を集めた。

 同機に導入されたゲーム特化の全画面モード「フルスクリーンエクスペリエンス」(Full Screen Experience:FSE)は、2025年11月プレビューパッチ「KB5070311」よりMSIの「Claw」モデルなどのASUS製以外のハンドヘルドPCにも展開中だ。「FSE」は通常のWindowsデスクトップを覆い隠し、「Nintendo Switch」シリーズのようなゲームパッドで操作しやすいホーム画面を提供するだけでなく、システムリソースをゲームに集中して、パフォーマンスを向上させる効果もある。

 「FSE」は通将来的にはノートPCやデスクトップPC、タブレットPCでも利用可能になる予定。Windowsでのゲームプレイがより快適になることに期待したい。

Advanced Shader Delivery(ASD)

 また、「ROG Xbox Ally」シリーズには「Advanced Shader Delivery」(ASD)が導入されている。これはゲームをインストールする際にコンパイル済みのシェーダーを配信することで、ゲームを初めて起動する際の待ち時間やカクつきの大部分を減少させるという技術。「Avowed」というゲームタイトルでは初回ロード時間が80%以上、「Call of Duty: Black Ops 7」にいたっては95%以上もの短縮が実現されており、効果は絶大だ。

 Xbox PCアプリにはASD対応のゲームがすでに数十作品あり、これは今後もAMDとの協力で拡充される予定。開発者は「Agility SDK」(Windowsの更新とは切り離し、「DirectX」の先進機能を先行体験できるようにするソフトウェア開発キット)で、自分のゲームにASDを組み込むことができる。

システムレベルの最適化

 そのほかにも、「ROG Xbox Ally」シリーズではさまざまなシステムレベルの最適化が行われている。

  • 電源管理やCPU周波数プロファイルを専用に調整
  • 「Ryzen」APUのUMAメモリ効率を見直し。フレーム時間の分散やメモリ競合を改善
  • コントローラー入力、RGBライティングサービス、グラフィックスドライバー、バックグラウンドプロセスにおけるCPUオーバーヘッドの削減

 これらの多くもAMD、ASUSとの協力の成果だ。これらの成果の一部は、「ROG Xbox Ally」シリーズ以外のPCも享受できる。

Windows on Arm

 2025年は「Windows 11」のARM64対応が大きく進歩した年でもある。「Windows on Arm」には「Prism」と呼ばれる互換レイヤーがあり、エミュレーションにより多くのx86/x64アプリがそのまま動作するが、クリエイティブアプリやゲームのなかには最新のCPU命令セットへの対応を必要とするものがあり、サポートが十分ではない現実があった。

 しかし、2025年11月プレビューパッチ「KB5070311」で「Prism」がようやくAVX/AVX2命令などに対応。一気にこの問題が解決された。

 ARM64デバイスの「Xbox」アプリでローカルゲームがサポートされたことや、チート防止ソリューションとして多くのゲームで採用されている「Easy Anti-Cheat」がARM64に対応し、「フォートナイト」などの人気タイトルを遊べるようになったことも特筆すべき改善といえるだろう。

「DirectX」とオーディオの改善

 WindowsのゲーミングAPI「DirectX」では、以下の重要な機能が導入された。

  • DirectX Raytracing 1.2(DXR 1.2):光の反射表現が豊かに。状況によっては最大2.3倍の性能向上
  • Neural Rendering(プレビュー):レンダリングパイプラインに機械学習(ML)モデルを統合
  • Bluetooth LE Audio:低遅延・高品質のゲーム音声、補聴器対応も拡充

 今後は「自動スーパー解像度」(Automatic Super Resolution、Auto SR)をOSレベルで提供し、AIを用いたアップスケーリングとフレームレートの改善を目指すとしている