レビュー
現状、理想にもっとも近いアイデアノート? Markdownでメモを管理できる「Obsidian」
無限キャンバス、リンクグラフ……プラグインで自由に機能を拡張することも
2023年12月28日 06:45
最近「Evernote」の無料プランの制限が厳しくなり、移行を考えているという方も少なくないのではないだろうか。この出来事から教訓を得るとすれば、個人的なメモを残すときはデータの汎用性が重要となる、と言えるだろう。いくらアプリが高機能でも、いざというときにデータを他のアプリに移せないのでは人質にとられているようなものだ。たとえば一般に広く利用されているMarkdown記法で大量のメモを管理でき、シンプルでありながら、状況に応じて機能を拡張できるようなアプリがあれば理想的だ。
今回紹介する「Obsidian」は、現時点でその理想にもっとも近いアイデアノートと言えるだろう。「Electron」製のデスクトップ版(Windows/Mac/Linux)とモバイル版(iOS/Android)があるが、今回は主にデスクトップ版へフォーカスする。
「Obsidian」は、Markdownでメモを作成し、ツリービューで階層管理できるエディター。それぞれのメモをリンクさせることも可能で、Wikiのような運用が可能。「今日のデイリーノート」コマンドでその日の日付を名前にしたノートも作成できるので、日記やブログのように運用することもできる。
データは保管庫(Vault)フォルダーで管理する仕組みで、「OneDrive」などに保存しておけばクロスデバイスでの同期も可能。有料(月額10米ドルなど)ではあるが「Obsidian Sync」というサービスが用意されており、モバイル版とも簡単に同期できるので、出先でノートや日記の草稿を書き、デスクトップで仕上げたいといったニーズにも対応する。
デスクトップアプリのユーザーインターフェイスは、メモを階層管理するナビゲーションペイン(左側)とメインのエディター部分(中央)からなる。さらに、タイトルバー右側のボタンを押すと、メンションなどを表示するパネルが画面右側に現れる。
ナビゲーションペインでは、新規ノートを作成したり、フォルダーでノートを管理することができる。ドラッグ&ドロップでノートの場所を自由に変更することも可能。ノートへのリンクは「Obsidian」側で管理されるようで、移動してもリンクが切れてしまうことはない。
エディター部分は閲覧(リーディング)モードと編集モードを切り替えて利用する仕組み。編集モードの場合はMarkdown記法でテキストの執筆が可能。記法として特殊なのはノート間のリンク([[]])ぐらいなので、日頃から「GitHub」などでMarkdownに親しんでいるならばすぐに慣れるだろう。ノート間リンク記法を入力すると、ノートがサジェストされるのも使いやすい。
メンションペインでは、バックリンク(参照されているノート)・ゴーイングアウトリンク(参照しているノート)の関係を簡単に把握可能。ノートにタグをつけて管理することもできる。
このように、「Obsidian」はノートをフォルダー(階層)、リンク、タグで管理できるため、個人的なメモから日記、ナレッジベース、プロジェクト管理まで、さまざまな用途で活用できる。そうなると、ローカルノートブックとしてだけではなく、Webサイトの管理ツールとしても利用したくなってくるが、その場合は有料(月額10米ドルなど)の「Obsidian Publish」というホスティングサービスを併用することになる。
無料で何とかしたい場合は、有志の開発した「Obsidian Enhancing Export Plugin」などのコミュニティプラグイン(後述)を追加することで、ノートをHTMLとしてエクスポート可能。「Obsidian」に慣れたら、エクスポートしたノートのWeb発行にチャレンジしてみるとよいだろう。
そのほかにも、「Obsidian」には魅力的な機能が「コアプラグイン」として実装されている。
- ブックマーク
- 他のアプリのMarkdownを「Obsidian」にインポート
- アウトライン
- キャンバス(無限キャンバスの上でノートを配置したり接続したりできる)
- グラフビュー(ノートのリンク関係を可視化)
- コマンドパレット(「Visual Studio Code」のようなコマンドランチャー)
- スライドの作成
- ランダムノート(過去のノートを振り返るときに便利なランダム表示機能)
- キーワード検索
加えて、前述の「Obsidian Enhancing Export Plugin」のように、コミュニティ(有志の集まり)が開発する「コミュニティプラグイン」で機能を拡張することも可能(デフォルト無効)。コンテンツを埋め込んだり、文法チェックを行ったりといったことが行える。
なお、「Obsidian」の利用にあたってはいくつかの注意がある。
まず、「Obsidian」で使われているMarkdown文法はオープンで、ノートデータもユーザーが管理できる。しかし、「Obsidian」自体はオープンソースではないため、実際のロジックを検証することは難しい。
次に、「Obsidian」が無償で利用できるのは個人用途のみだ。商用のために試用することはできるが、本格利用の際は1ユーザー当たり年額50米ドルで商用ライセンスを購入しなければならない。
ソフトウェア情報
- 「Obsidian」デスクトップ版
- 【著作権者】
- DYNALIST INC.
- 【対応OS】
- Windows/Mac/Linux(編集部にてWindows 11で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト(個人利用に限る)
- 【バージョン】
- 1.5.3(23/12/26)