Blender ウォッチング

無料の「Blender」でVTuberモデルにお嬢様風の白い帽子をかぶせてみた

帽子のモデルを新たに作って追加する方法

 本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。

 前回は体の一部からアクセサリを作成しましたが、今回はお嬢様が被っていそうな白いツバ広の帽子を一から作成します。

こんな帽子が目標です

 作業には前回の講座が終了した時点の、インポートやモデルの編集などが終わったファイルを用意してありますので、そちらを使用してください。

サンプルBLENDファイルのダウンロード

帽子をモデリングするための下準備

 今回もまずは作業の準備を行います。

[3Dビューポート]を作業しやすい環境にする

 画面上部のタブで[Layout]ワークスペースに移動します。

画面上部のタブで[Layout]ワークスペースに移動

 [3Dビューポート]右上の[ナビゲーションギズモ]の[(X)]をクリックし、右から見た視点(ライトビュー)に変更しておきます。

[ナビゲーションギズモ]の[(X)]をクリック

円柱オブジェクトを追加

 次に、帽子の元となる「円柱オブジェクト」を追加します。

オブジェクトの追加方法

 [3Dビューポート]左上あたりにある、[追加]メニューから、[メッシュ]→[円柱]で「円柱」オブジェクトを追加します。

[追加]メニュ→[メッシュ]→[円柱]で、円柱オブジェクトを追加

 足元にある「3Dカーソル」の位置に非常に大きな円柱が追加されますので、まずは扱いやすくするため、選択オブジェクトの拡大・縮小を行う[S]キーを押して適当な大きさに縮小しちゃいましょう。

[S]キーで作業しやすい大きさに縮小

追加したオブジェクトを頭に合わせて調整

 次に[移動]ツールに変更し、このまま真ん中の円をドラッグし、頭部の上あたりにくるよう移動します。

真ん中の「円」をドラッグで頭部に移動

 円柱(帽子)がモデルの頭部に合うように、以下のツールで調整していきます。

  1. [ナビゲーションギズモ]右側の「虫眼鏡アイコン」・「手アイコン」やマウスホイールで、ビューをモデルの頭付近にズーム・移動します。
  2. 円柱を[S]キーでちょうどいい大きさに調整しつつ、円柱の下側が前髪と後ろ髪の一番膨らむ場所(図)にくるよう、[移動]ツールで調整します。
[移動]ツール+[S]キーでこんな感じになればOK

帽子オブジェクトの編集

 「コックさんの帽子」でもよければこれで完成(?)ですが、お嬢様っぽいツバ広の帽子にするため、編集を始めましょう。

編集モードに切り替えてモデルを半透明にする

 [3Dビューポート]左上の[オブジェクト]モードと表示されたメニューをクリック、または[Tab]キーを押して[編集]モードに切り替えます。

[編集モード]に切り替え

 下のモデルが邪魔なので非表示にしたいところですが、モデルを参考にしつつ作業をしたいので、モデルを透過表示させることにします。

 [3Dビューポート]右上の下図のアイコンをクリックします。

[3Dビューポート]右上にある四角で囲んだボタンを押し、透過表示に切り替え(図はONの状態)

下側の面を削除する

 まずは円柱の下側をふさいでいる面を削除し、帽子らしくします。

 [ナビゲーションギズモ]またはホイールドラッグで画面を回転し、円柱の底が見えるようにします。

[ナビゲーションギズモ]などで円柱の底が見えるよう回転

 さらに[3Dビューポート]左上にある、下図で囲まれているボタンをクリックして[面選択]モードに変更し、底をクリックして選択します。

[3Dビューポート]左上のツール群から、囲み内のボタンで[面選択]モードに変更後、底をクリック

 右クリックメニューから[面を削除]を実行します。

右クリックメニューから[面を削除]を実行

ツバの作成

 次に一番下の「辺の輪」(辺ループ)から、「ツバ」を作成します。以下のように操作してください。

下側の辺を削除

  1. 今度は[3Dビューポート]左上のツール群から、先ほど[面選択]モードに切り替えたボタンの左隣にあるボタンをクリックして[辺選択]モードに変更
  2. 底の水平の「辺」のどこかにマウスカーソルを置き、[Alt]キー+左クリック
[辺選択]モードで底の「横向きの辺」の上にマウスカーソルをおいて[Alt]キー+左クリック

押し出しでツバの部分を作る

 そしてツバを押し出して作成します。以前行ったように3Dビューポート左端のツールバーから[押し出し]ツールボタンを左マウスボタンで長押しし、[押し出し(法線方向)]を選択します。

「ツールバー」でマウスの左ボタンを長押しし、[押し出し(法線方向)]コマンドまで移動

 そして丸い「ハンドル」を上にマウスの左ボタンでドラッグすると、斜め下方向に面が押し出されますので、適当な高さで左マウスボタンを離します。

丸いハンドルを左ドラッグ。次で編集するので適当でOK

ツバの形を整える

 あとは、前述のように[ナビゲーションギズモ]の[(X)]で「ライトビュー」に変更し、[S]キーと[移動]ツールで形を整えます。

[S]キーと[移動]ツールで調整

帽子上部の編集

 帽子らしくなってきましたが、まだお嬢様には不釣り合いです。上側を丸みを帯びた感じにしていきましょう。

帽子の高さを低くする

 面を選択するには[面選択]モードに切り替えるのが基本ですが、面倒なので現状の[辺選択]モードのまま選択してしまいましょう。

 一番上の横方向の辺の上にマウスカーソルを置き、[Alt]キー+左クリックすると、下図のように辺のループが選択できます。

[Alt]キー+左クリックで一番上の辺ループを選択

 ツールバーで[移動]ツールに切り替え、頭頂部の少し上あたりまで移動します。

[移動]ツールで下に移動

[ベベル]ツールを使って上部を面取り

 ツールバーから[押し出し]ツールボタンの少し下にある、家のようなアイコンのボタンをクリックし、角を丸める[ベベル]ツールに切り替えます。

 押し出しツールのように、丸いハンドルをドラッグすると、図のように選択した辺の角を面取りした形状になります。

[ベベル]ツールによる変形

[最後の操作を調整]パネルで丸みを作る

 ドラッグした後、ツールバーの下あたりに、「▼ベベル」と表示された小さなバーがあります。これをクリックします。

右下の小さなバーをクリック

 すると、下図のようなパネルが現れます。これは[最後の操作を調整]パネルといい、最後に行った操作のパラメーターを数値やスライダーで調整し直せる機能です。

 ここではこのパネル内の、いくつの面に分割するかを決める[セグメント]を「4」に、面取り部分の形状を指定する[シェイプ]をデフォルトの「0.5」のままで設定しましたが、スライダーをドラッグして色々な形を試してみてください。

[最後の操作を調整]パネル

 なお、別のところをクリックしてしまい、消えてしまった場合は、一番上の[編集]メニュー→[最後の操作を調整...]を実行すると再表示されます。
 それでも表示できなかった場合は、[Ctrl]+[Z]キーで元に戻し、上の手順からやり直してみてください。

仕上げの作業

 できた帽子の具合を確かめてみましょう。

オブジェクトモードでの確認

 仕上がりを確認するには[オブジェクト]モードにします。以下のように操作してみてください。

  1. 画面上側の[Shading]タブのクリックで「Shadingワークスペース」に移動(下図①)
  2. [3Dビューポート]左上、または[Tab]キーで[オブジェクト]モードに切り替え(下図②)
①→②の順に設定

 今のままではオブジェクトがゴツゴツしていますね。また、モデルに厚みがないため、VRMでエクスポートすると裏側から見た面が消える問題が発生してしまいます。

 これらを解決するため「モディファイアー」を導入します。

モディファイアーの追加で「物」感を増す

 「モディファイアー」とは、オブジェクトの形を指定の値に従い変形する機能です。

 ここでは厚み付け用の[ソリッド化]モディファイアーと、モデルを細かくする「サブディビジョンサーフェス」モディファイアーを追加します。以下のように操作してください。

  1. 画面右下の[プロパティエディター]の左側のスパナ型アイコンのタブをクリック(上の画像)
  2. [モディファイアーを追加]ボタンをクリックし、左から二番目の列の真ん中より少し下にある[ソリッド化]モディファイアーを選択(下の画像①)
  3. 続けて同様に[モディファイアーを追加]ボタンをクリックし、こんどは[ソリッド化]の下にある[サブディビジョンサーフェス]を選択(下の画像②)
[プロパティエディター]左側の「スパナ」アイコンをクリック
[モディファイアーを追加]クリック→①、[モディファイアーを追加]クリック→②で二つを追加

 下図のようになればOKです。もし順番が違う場合は、各パネル右上の[::::]ボタンをドラッグして入れ替えてみてください。

この順に並んでいればOK

面を滑らかにして質感を加える

 最後に、面がスムーズに見えるよう設定し、「マテリアル」を追加してエクスポートが正しくできるようにします。

スムーズシェード設定する

 最後に、モデル自体にも「スムーズシェーディング」を設定し、面が滑らかに見えるようにします。帽子の右クリックメニュー→[スムーズシェード]を実行しましょう。削り出しのようだった帽子が滑らかになったはずです。

右クリックメニュー→[スムーズシェード]で、ゴツゴツした面(上)が滑らかに(下)

マテリアルの追加

 以前の講座で行ったように、下側の[シェーダーエディター]のヘッダーの[新規]で新しいマテリアルを追加します。今回はこれだけでOKです。

[シェーダーエディター]のヘッダーの[新規]をクリック

 ついに帽子が完成しました! あとは3Dモデルが帽子を落とさないようにするだけです。

アーマチュアへの関連付け

 アーマチュアとは、キャラクターにポーズを付けて動かすための「骨組み」で、多数の「ボーン」により構成されています。他のアプリケーションでは「スケルトン」や「リグ」などと呼ばれています。

 ここでは作成した帽子がキャラクターの頭部に追従するよう、設定していきます。

帽子オブジェクトの原点の移動

 この講座で使用している「VRM Add-on for Blender 1.11.0」では、追従させたいオブジェクトの原点が「ワールド原点」にないとずれてしまうようです。そこでまず「帽子オブジェクト」の原点を再設定します。以下のように操作してください。

  1. [Layout]タブをクリックし、[Layout]ワークスペースに切り替え
  2. 現在「3Dカーソル」が「原点」にあることを確認。ない場合は、[Shift]+[C]キーでリセットする
  3. [オブジェクト]メニュー→[原点を設定]→[原点を3Dカーソルへ移動]を実行
[Layout]ワークスペースにて[オブジェクト]メニュー→[原点を設定]→[原点を3Dカーソルへ移動]を実行

 足元に[移動]ツールの「ギズモ」が表示されていれば成功です。

マウスホイールでズームアウトして確認してみてください

ボーンへのペアレント

 次に頭部の「ボーン」へ関連付けます。これには「ペアレント」(親子関係)機能を使用します。

 まず「アーマチュア」を「追加選択」します。

 現在「帽子」オブジェクトが選択されていることを確認し、体から突き出ている槍先のような形のボーンを、[Shift]+左クリックします。

[Shift]+左クリックで追加選択。飛び出ている部分をクリックすると楽です
  1. [3Dビューポート]左上から[ポーズ]モードに切り替えます。これは「アーマチュア」用のモードで、今回はボーンの選択に使用します。
  2. [ナビゲーションギズモ]やホイールドラッグなどで前が見えるよう回転し、頭の中央にあるボーンをクリックして選択します。

    [ポーズ]モードに入り、頭の中央にあるボーンをクリックして選択

 [3Dビューポート]左上の[ポーズ]メニューから[ペアレント]→[ボーン]を実行します。

[ポーズ]メニューから[ペアレント]→[ボーン]を実行

 ちゃんとペアレントされているかは、図のボーンが選択中であることを確認し、「回転」ツールなどで回転してみてください。

[回転]ツールで確認中

 回転してみた後は、[Ctrl]+[Z]キーで「元に戻す」ことを忘れずに。

VRMファイルをエクスポートして完成!

 最後に[ファイル]-[エクスポート]-[VRM (.vrm)]メニューからVRMファイルをエクスポートして確かめてみてください

「3teneFREE」による確認

終わりに

 お疲れさまでした。今回は少し長めでしたが、いかがだったでしょうか。可愛い、またはカッコイイ帽子をかぶせてあげてください。