Blender ウォッチング
「Blender 3.1」へのバージョンアップで何が変わった? パワーアップした機能を紹介!
サブディビジョンサーフェスがGPUに対応、CyclesはMetal対応に! 頂点クリースも追加
2022年3月25日 06:55
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
3月9日、「Blender 3.1」が公式リリースされました。このリリースでは基本的にv3.0に間に合わなかった機能の追加や、安定化が主であるため、v3.0のような大きな機能追加はありません。その代わり、待望の機能の復活や細かな部分の調整、パフォーマンスの改善などで使い勝手が向上しています。
今回は「サブディビジョンサーフェスのGPU対応」と「頂点クリース」、「CyclesのMetal対応」についてご紹介します。
サブディビジョンサーフェスの改善
サブディビジョンサーフェスとは、面を一定の法則で細分化し、曲面を表現する機能です。必要な頂点数が少なくて済み、モデルの軽量化や、モデリングやアニメーション時の編集・管理が楽になる利点があります。
主に[モディファイアー]プロパティの[サブディビジョンサーフェス]モディファイアーから利用します。
GPU対応による高速化
以前、Blender 2.8にてサブディビジョンサーフェス処理がPIXARのOpenSubdivに変更された際に、v2.73以前で利用可能だった、GPUによる高速処理の実装が遅れていたため、その後のサブディビジョンサーフェス使用モデルのアニメーション再生の速度が大幅に低下していました。
それが今回のBlender 3.1リリースでようやく復活しました。もちろんアニメーション再生時以外でも有効なため、サブディビジョンサーフェスを使用したモデリングやビュー操作も軽くなります。
下の画像は、Blender Foundationのデモファイルページにある、Blender Studio制作のEllieサンプルによるアニメーションのスクリーンショットです。
v3.0ではアニメーション表示が「毎秒1フレーム未満」だったのに比べ、v3.1では「毎秒3フレーム以上」にもなっています。これは極端な例ですが、いずれにせよ従来のようにストレスとなる状況はほぼなくなったと思われます。
デフォルトでは無効化されているため、[編集]-[プリファレンス...]メニューから[プリファレンス]ダイアログを開き、[ビューポート]タブ(①)の[> 細分化]パネル(②)にある[GPUサブディビジョン](③)をチェックして有効化する必要があります。
「頂点クリース」機能の追加
クリースとは、このサブディビジョンサーフェスによる曲面化を回避し、その部分のみ鋭い形状にしたい時に使用する属性です。値が大きくなるにつれ、元の形状に近づきます(「1.0」で完全にオリジナル)。
従来はクリースは「辺」にのみ使用可能でしたが、v3.1になってから「頂点」にも使用できるようになり、変わった形状が作成できるようになりました。比較的ローポリモデルで恩恵が大きいと思われます。
現時点では[編集]モードで[頂点]メニューの[頂点クリース]を実行した後にマウス移動、または[サイドバー]([N]キー)→[頂点クリース]から設定できます。
CyclesがMetal APIに対応
CyclesレンダーがApple社の協力により、MacOSで利用されている「Metal API」に対応、GPUレンダリングによる高速化が可能になりました。
下図は公式Wikiページ(日本語訳)から引用した、M1プロセッサ搭載の「MacBook Air」による、CPUとGPUのレンダリング時間の図です。
現時点で対応しているのは、Apple M1コンピューター(macOS 12.2 以降)とAMDグラフィックカードのAppleコンピューター(macOS 12.3以降)で、Intel GPU対応は現在作業中とのこと。
まだ初期段階であるため最適化も行われておらず、バグなども当然あると思われます。進捗状況は下記のリンク先をチェックしておくといいかもしれません(英文)。
テスト用のビルドも下の「Blender Builds」から利用可能です。念のため大切なファイルに上書きするのは避け、自己責任で利用してください。
終わりに
今回は特に一部ユーザーに待望の機能を中心に紹介してみました。次回はジオメトリノード関連です。お楽しみに。