Blender ウォッチング
「Blender」最新版の目玉機能「ヘアーカーブ」で髪型のセットが簡単に!
[密度]ブラシで面に植毛して球状の[くし]ブラシで立体的にスタイリング
2022年9月9日 06:55
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
9月7日(GMT)、「Blender 3.3LTS」が公式リリースされました。今回はLTS(長期間サポート)リリースということで安定性を優先しているためか、新機能は少なく、修正や改善が主となっています。
今回は「Blender」に新しく追加された「ヘアーカーブ」についてご紹介したいと思います。
注意:画像はすべてリリース候補版で作成されています。ご了承ください。
従来のヘアー機能の弱点
従来の「Blender」で髪の毛や動物の毛を表現するには、「パーティクルシステム」を使用していました。これは「面」からパーティクル(粒子)として毛を発生させる物で、ヘアースタイルも自由に設定可能でした。しかし、以下の問題点があります。
- 発生場所の指定が面倒で完全ではない
- スタイリングがしづらい
- パフォーマンスが悪い(重い)
- ジオメトリノードから制御できない
これらを改善し、パーティクルによるヘアーの後継として開発されたのが、今回の「ヘアーカーブ」です。
ヘアーカーブの使用方法
とりあえずデフォルトの立方体に毛を生やしてみましょう。
メッシュオブジェクトの選択
ヘアーカーブには、毛を植え付ける「メッシュオブジェクト」が必要です。そのため、追加前にメッシュオブジェクトを選択します。なお、メッシュオブジェクトには「UVマップ」が設定されている必要があります。
「Blender」のデフォルト画面から始めた場合は、立方体がすでに選択済みなのでそのまま先に進みましょう。
カーブオブジェクトの追加
次はカーブオブジェクトを追加します。
[追加]-[カーブ]メニューを展開すると、[空のカーブ]の項目がありますので、これを選択します。
すると、立方体の選択が消えます。特に何もないですが、アウトライナーの「Cube」オブジェクトのツリーを開くと、子として「カーブ」という名前のオブジェクトができているのがわかります。
このままでは単なる立方体ですので、毛を植え付けてみましょう。
画面左上をクリックし、[スカルプトモード]に変更します。
ツールバーを見ると、上から3番目のブラシがデフォルトで選択されています。これは[密度]ブラシといい、密度によって自動的に毛を追加・削除します。
立方体の面上で左クリックしてみましょう。まとまった「毛の束」が追加されます。ブラシの調整は、上の[ツールの設定バー]で行います。[最小距離]で毛の間隔を調整できます。
[伸長/収縮]ブラシによる毛の長さの調整
今のままでは短い毛だけで面白くないので、少し長くしてみましょう。
図の[伸長/収縮]ブラシをクリックして選択し、既存の毛の上を左ドラッグしてみましょう。だんだん長くなるはずです。反対に短くしたい場合は、[Ctrl]キーを押しながらドラッグしてください。
[くし]ブラシによるスタイリング
一番上の[くし]ブラシは、毛をとかすことができます。これは従来でも同じでしたが、上記で書かれている「スタイリングがしづらい」問題を解決すべく、新たにブラシの影響範囲が「球」になっています。
従来の使いづらさの原因の一つが、「投影」による影響範囲でした。これはビューから見た2Dの範囲にのみしか影響しないため、立体的に髪の毛をとかすには違和感がありました。これが「球」になり、使用した結果がイメージに近くなりました。
他にも[伸長]ブラシと[くし]ブラシを合わせたような[スネークフック]ブラシ、毛を持ち上げてくれる[パフ]ブラシや、毛を集めてひねる[ピンチ]ブラシなどがあります。
現時点での問題点
現時点では以下のような問題があります。
表面メッシュとの衝突判定がない
[くし]ブラシで毛を梳かしている時に気づいた人もいると思いますが、「v3.3」の時点では、表面のメッシュとの衝突判定がありません。
髭のような比較的短い物であればそんなに問題にはなりませんが、長い頭髪では不可欠な機能なだけにやはり気になります。
上記の[パフ]ブラシや、選択機能をうまく使えばどうにかなるかもしれません。
物理アニメーションしない
一応[オブジェクト]-[変換]メニューの[パーティクルシステム]を使用し、パーティクルヘアーに変換すれば利用できなくもありません。
終わりに
今回は「Blender 3.3」で追加された新しいヘアー機能の基本的な操作をご紹介しました。次回はもう少し突っ込んだ内容でお送りする予定です。
ではまた。