Blender ウォッチング
「Blender 3.2」は「スカルプトモード」でもペイントできる! スミアツールも利用可能
「頂点カラー」は「カラー属性」になり高性能化、「ジオメトリノード」との連携も強化
2022年6月24日 06:55
本連載では、無料の高機能3Dモデリングツール「Blender」の使い方や関連情報を幅広くお伝えします。
6月8日(GMT)、「Blender 3.2」が公式リリースされました。今回は、一新された「カラー属性」機能についてご紹介したいと思います。
カラー属性とは
「カラー属性」とは、従来や他のアプリケーションソフトウェアで「頂点カラー」と呼ばれている物で、頂点毎に色情報を保存し、各頂点間を補間してレンダリングされます。
「Blender」では[頂点ペイント]モードで色付けし、「カラー属性」(旧頂点カラー)ノードを追加するだけという簡単さ。
「テクスチャ画像」の作成や「UV展開」を行う手間が不要で、処理も軽いため、手っ取り早く色付けするのに便利な機能です。
では実際に何が変わったのか見ていきましょう。
データ形式の拡大
従来は単なる「RGB(A)」32バイトの「バイトカラー」だったのが、高精度な「浮動小数点数精度カラー」(設定名はカラー)を使用できるようになりました。
また、格納場所(ドメイン)として「頂点」と「面コーナー」(従来の方法)が選択できます。この二つの違いは、下図のように面できっちり塗り分けできるかどうかです。
これらのデータ形式は、[オブジェクトデータプロパティ]-[カラー属性]のリスト内で追加する時に指定できます。
面数の少ない「ローポリモデル」で上記画像の右側のような色分けが必要になりそうな場合は「面コーナー」、後述の「スカルプトモデル」などのハイポリモデルでは、データ量を削減できるよう「頂点」が適しているものと思われます。デフォルトの設定は[ドメイン]は「頂点」、[データタイプ]は「カラー」です。
また、カラー属性を作成せず、[頂点ペイント]モードに入ってペイントすると、「色」という名前(日本語 UI 使用時)でカラー属性データが自動的に追加されます。この場合は[ドメイン]は「面コーナー」、[データタイプ]は「バイトカラー」になります。
リスト内では「バイトカラー」は「Byte Color」、「浮動小数点数精度カラー」は単に「Color」、「頂点」は「Vertex」、「面コーナー」は「Face Corner」と表示されます。
なお、残念ながら相互に変換する機能は現時点では実装されていないようです。
ジオメトリノードからのアクセスが簡単に
ジオメトリノードから[名前付き属性]ノードと[名前付き属性格納]ノードで、簡単にアクセス・操作ができるようになりました。下図のように、設定されているカラー属性を読み出し、処理をして書き込むことが可能です。
スカルプトモードからペイントが可能に
このカラー属性には、頂点毎に色付けされている都合上、細かい模様を付けるには必要な分だけ細分化しないといけないという欠点があります。
しかし逆を言えば、細かく細分化された(頂点数の多い)「スカルプトモデル」と相性がいいとも言えます。「v3.2」では[スカルプトモード]中で頂点ペイントが可能になりました。
通常のブラシを使って行う[ペイント]ツールと、指でこすったような効果が得られる[スミア]ツール、様々なエフェクトをかけることができる[カラーフィルター]、マスクが作成可能な[色でマスク]ツールがあります。
他にも[ボックスマスク]などのマスク機能や、[面セット]などの既存のスカルプトツールにも対応しています。
ただし現時点では[Dyntopo](ダイナミックトポロジー)や「マルチレゾリューション」といった、解像度が変わるツールと一緒に利用はできません。
他にも新しいペイントツール用のブラシ設定があり、前掲の公式デモファイルにはそれぞれを試すことのできるブラシもありますので、ぜひダウンロードしてみてください。
特にデモファイル内の「Spatter」ブラシは非常に便利で、タイトルの画像でも脚や翼などの汚しに重宝しました。[ファイルメニュー]-[アペンド]-[ブラシ]-[Spatter]で自分のファイルへコピーできます。
下図はその作業画面のスクリーンショットです。ちなみに汚し用のカラー属性は、着色用とは別に作成してあり、シェーダーノードで二つを合成して使用しています。ちなみに翼の先端の謎の光は表裏がくっついている所為と思われますが、面白いのでそのままレンダリングしてしまいました。
終わりに
今回は「Blender 3.2」でリニューアルされたカラー属性(旧頂点カラー)についてご紹介しました。スカルプトしつつ、そのまま色付けできるのは嬉しいですね。
ではまた。